第21話 牢屋に入ります!
「大丈夫じゃ、トア! リアの牢に結界も張ったのじゃろう?」
トアの魔力が身体から漏れ始めたのを感じたベージェルが慌ててそう言うと、トアは「うん、そうだった」と言い、ふぅと息を吐く。
「じいちゃん、私、さっき言ったことをやるね」
「………………分かった。しかし、誰か付けねばならん」
「はい!はい!はい!はい!」
「マゴットはダメじゃ……ビームス、行ってくれるか?」
「はい、もちろんです」
ビームスがそう返事をすると、マゴットがじとっとした目つきになった。
「でも、ビームスさん、どうやって付いて来るの?」
「それはじゃな、魔法連合にも賢者様の魔道具があるんじゃが、トアに魔力を注いでもらえば動くと思うのじゃ」
「そうなんだ! どんな魔道具?」
「トアも使っておる透明化じゃよ。ただ、足音の消音機能もついておるらしい。使えた者がおらんので、実際に機能するか分からんのだが……ビームス、あの魔道具を持って来てくれるかの?」
「はっ」
しばらくして戻って来たビームスの手には、掌に収まるくらいの透明な球体が握られていた。光に透かすと白い塗料で内部に魔法陣が描いてあるのが見える。
「うわぁ、綺麗な玉だねー! これに魔力を込めるんだね、やってみる」
そう言って、トアが魔力を込め始めると……。
「うわっ、トア様が消えた!?」
「ほぅ……初めて見たわい!」
「成功のようですね……これはすごい」
トアも自分を見て、身体が消えているので驚いたが、ちょっと面白いのでそのまま少し移動して、パッと握っていた玉を机の上に置いて放してみた。すると——。
「「「うわっ!」」」
三人は、予想していた位置とは違う場所に出現したトアに驚く。
「本当に、すごい魔道具ですね……」
「ビームスさん、ずるい~トア様に付いて行けるし、魔道具使えるし、トア様の香りを嗅げるし……」
「……二人とも気を付けて行くんじゃぞ」
こうして、トアとビームスはとりあえず、まず魔法学校のトアの部屋の前に転移した。それからトアだけ中に入り、ケイリュウたちに付いて行くことを伝えたのだが、四人に動揺が走る。
「し、しかし、トア、帝国は何をするか分からないぞ?」
「そうだよ、危ないよ!!」
「危ない!」
「あぶっ!」
最早、すっかり普通の良い人になっているケイリュウ、ジキ、コクド、メイハクの四人は、そう言ってトアを止めようとする。
「うん、でもね、リアもいるし。それに、ケイリュウさんたちにひどいことしてる人の計画も知りたいしね。色んな国が危険かもしれないでしょ? 孤児院の皆だって、いつ攫われるか分からないし」
そう言うと、四人は何も言えなくなり、改めて悪事に加担した自分たちを愚かだと思い俯く。
「だからさ、こんなどうしようもない計画、早く潰して、ケイリュウさんたちもお家に帰ろう! 私も協力するから!」
トアがそう言うと、俯いたままの四人の頬を涙がつたった。
それからトアは、帝国までは浮遊と透明化で四人について行くことにして出発した。ビームスについては透明ではあるものの、魔力を感じることができるトアは、ビームスがどこにいるかは大体分かっている。しかし、ビームスが遅れるといけないので、帝国まではトアの収納空間に入っていてもらうことにした。
馬を走らせ始めると、姿が見えないトアにケイリュウたちが声をかける。
「うわっ、本当に何も見えないが……トア……いるのか?」
「ここにいるよ~」
「すごいな……」
「本当に、トアはオドアイ様みたいだ……」
「すごい……」
「すごっ」
ケイリュウたちは、初めて実感するトアの魔法に感嘆の声を上げていた。
そうして、バール帝国の城の近くまでやってきたトアは、ビームスを密かに収納空間から出した後、姿を現すと早速捕まったフリをすることにした。
「ダメだよ、もっと強く結ばないと、バレちゃうよ!」
「大丈夫だ、十分きつく結んでいる」
あまり拘束する気のないケイリュウたちに指導しながら、トアは城までやってきた。
城の中は、先日歩き回ったので、なんとなく分かっており、最終的に辿り着いた部屋を見て「ああ、やっぱりこの立派なドアの部屋か」などと思っていた。
部屋に入ると、例の茶色いマントを着た長髪の男と、地下牢の牢屋番ミラスを脅していた皇帝ダルーガがいた。
(この人は大っ嫌い! 意地悪だもん!)
そう思ったことが態度に出たのか、それまで上機嫌だったダルーガが憎々し気な顔でトアを見る。
「フンッ、やはり生意気な目をしている。子供だからといって、こういう奴に甘い態度を取ると後から後悔する。即刻、魔力封じの枷を付けて、牢に放り込んでおけ!」
「陛下、もう一人の片割れの方はどうしますか?」
「もう用済みだな……」
そう言うとダルーガはニヤリと笑う。
「処刑する前に見せしめに、こいつの前で痛めつけろ。そうすれば、態度を改めるだろう」
「はっ」
(まあ、色んな噂が蔓延っていたようだが、こんな小娘に大袈裟な……現に捕まっているではないか。これであちらにも報告できる。懸念がなくなれば、本格的に手を貸すと言ってくれていたからな……)
皆が部屋を出て行くと、ダルーガは心の中でそう思い、子供に躍起になっていたことを馬鹿馬鹿しく思うのだった。




