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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第9話 町の図書館

 

 図書館に入ったトアは、正面のカウンターで登録を済ませた。トアと視線を合わせた受付の女性が驚いたような顔をしたことで「そうだった、私の目の色って珍しいんだった」と思い出す。これまで狭い範囲でしか生活していなかった為、トアのオッドアイに驚く人はもうほとんど無く、新鮮な反応だった。マリーが心配するし、帽子は被ったままで本を探したトアは、数冊の魔法に関する本を手に取ると空いている席に座り読み始めた。まだ早くは読めないが、本には絵や図も多く描かれていて分かり易い。


「う~ん、なんかやっぱり一回の魔法で一属性発動する説明ばっかりだなぁ。アンドール兄ちゃんも驚いてたし、あまり複数の属性を同時に発動するのは普通じゃないから載ってないのかな。これくらいのことなら兄ちゃんが教えてくれたしなぁ」


 トアがいる図書館は平民の町にあり、平民向けの本のため魔法に関する本はそもそも少なかった。トアがどうしようかなと思案していると、意識の隅で何か違和感を覚える。なんというか綿毛で頬を撫でられているような感覚に近いものを感じる。


「何これ?」


 その感覚に意識を向けたトアは、図書館の自分がいる位置より下の方が、その発生源だとなんとなく感じた。


「なんかよく分からないけれど気になるなぁ。行ってみようっと!」


 階段を下りて地下一階にやってきたトアは、開け放した戸の奥に広がる閲覧可能な書庫のエリアを横目に見ながら廊下を進んで行く。そして廊下の突き当りに来た時だった。


「あれ、もう壁だ。でも、なんかこの奥に感じるんだよね……なんか壁の一部が光ってるような……う~ん、えいっ!」


 光って見える場所を押してみたトアの前で、扉が開くのが分かる。いや、実際にはそのまま壁があるように見えているのだが、それに重なるように透明な扉とでもいうようなものが内側に向けて開くのが見えた。


「うわぁ、なんか怪しいなぁ。でも……」


 トアが開いたように見える場所に手を出してみると、奥にそのまま手が進む。慎重に中に足を伸ばすと、通路は奥に続いているようでそのまま進めた。


「あれ、また階段がある?」


 不思議なことに内部は明かりはないのにちゃんと足元が見える。


「これも魔法なのかな?」


 階段を下って行くと、大きな部屋が前方に見え、照明に照らされて明るくなっていた。部屋の外から首を伸ばして恐る恐る内部を見てみる。


(うわぁ、あの中心にあるの何だろう?)


 部屋の中央には明るく光る立体的な菱形の物体が空中でゆっくり回っていた。その下の床には大きな模様が描かれている。本で読んだ魔法陣というものかなと思っていると、光る物体の向こう側に誰かがいるのが分かり、思わず声が出そうになった。


(あ、あぶな~~~い! え、でもあの人何やっているんだろう? 頭からフードを被っているし、あの人も髪や目の色隠したいとか??)


 バチバチバチバチ


 ウウウウウウ——!!!


「うわっ!!」


 白い物体の周りで黒い雷のような物がバチバチと鳴ったと思ったら、ウウウと図書館中に響くような警戒音が鳴り響き始め、フードの人間がこちらに走って来るのが見えた。


(やばいっ、どうしよう! あ、ここに隠れて……)


 部屋の入り口にある扉の裏に入ったと同時に、フードの人物が目の前を走り去って行った。通り過ぎる時、男の声で「ちっ! 森の転移陣に……」と言うのが聞こえた。気を取られたのも束の間、いまだに鳴りやまない警戒音によって現実に戻される。


「なんか、私まずいかも!」


「どうしよう」と思った数秒の間にも、図書館につながる入り口から複数人の声が聞こえてきていよいよ青ざめる。


「ううう、えーと、えーと、ああ、どうしよう!! 何も悪いことしてないけれど、でも見つかったらなんかまずそう! 森? 森の転移陣? あー!! 今、森にポンっと行けたらいいのに!!」


「皆急げ、こっちだ!」


 焦るトアは扉の裏側で、いよいよはっきり見える程に近づいてきた者達の方を見えると、怖くて心臓がきゅっとなった。


「ああ、もうダメ!! …………えっ!……」


 焦りが頂点に達した瞬間、身体に浮遊感を覚えゾワリとした感覚に驚く。それと同時に、先ほど一瞬見えた先頭の人物の容姿にも驚いていた。


「なんか綺麗な人だったな~あんな人いるんだ。髪はキラキラしていたなぁ……と、それはいいとして……え、ここどこ??」


 周りを見回したトアは状況が分からず困惑する。それも無理はない。先ほどまで薄暗い空間にいたのに、今トアの周りには木々の間から射す木漏れ日や鳥のさえずりが聞こえているのだ。いきなり明るい場所に来て目をシパシパさせながら遠くを見ると、見慣れた町が見えた。


「あ、れ? あれって教会? じゃあ、ここは……森?」


 自分がいつも魔法の練習をしている森にいると理解したトアは、ぽかんと空いた口を閉じることができない。


「なんでここに……あ、あのフードの男が森がなんとかって。それで森に逃げられたらなとか思ったけれど、でもそれでここに飛べるって……」


 一瞬、頭の中にチョンマークが現れたトアだったが——。


「転移じゃん!!!」


 思わず大きな声で叫んでいた——。


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