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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第8話 アンドールの驚愕

 

 次にアンドールが孤児院へ顔を出した時、トアは張り切って「見せたいものがある」と伝えたが、アンドールからはこっそり「今晩、孤児院の前に来い」と言われてしまった。


 夜になり、皆が寝静まるといつもと同じようにベッドを抜け出し、わくわくしながら外に向かう。


「アンドール兄ちゃん」

「おう、来たか」

「うん、魔法見てくれる?」

「ああ、どうせそう言うだろうと思ったんだ。でも一目につくとまずいからな。どこにしようか……」

「あ、それならあそこの森がいいよ!」

「えっ、お前森に行ってるのか? あそこは魔物が……」

「ううん、入り口の辺りだから大丈夫だよ!」


 アンドールがいる為、歩いて森まで行くと、早速練習の成果を見せる。


「ええっとね、この前より少しは上達したんだよ! 夜だから弱めの魔法にするけど、見ててね!」

「おう、そうか…………へ?」


 アンドールは心の準備も追いつかないままに、目の前の光景を見てしまい、頭の処理が追いつかない。


「複数属性……同時展開……なんだそれは。え、5属性同時展開…………な、な、なんなんだそれは!!!」


 次々と増える属性の同時展開に耐え切れず、思わず叫んだその声は、もしかしたら町まで届いてしまったかもしれない。しかし、そんなことを気にしている時ではないのだ。


「お、い……トア、正気か? お前……」

「ん? うん、少し頑張ったんだ! リアに会いたいしさ。キゾクサマに勝たないといけないからね」

「少し? 貴族様に勝つって……」


 そうつぶやいたアンドールは、以前の会話を思い出して「はぁ、俺が導き間違ってるのか? 俺なのか?」と頭を抱える。


「トア、分かったから、一旦その魔法を消してくれるか?」

「うん」

「まずだな、えー。お前の魔法はすごい!」

「え、ほんと?」

「ああ、本当だ。だが、魔法は使い方を間違えると大変なことになる。実技は十分だが、トアにはまだ知識が全然ない」

「うん」

「だから、これからは町の図書館に行って魔法の知識を学べ。ついでに文字ももっと読んで書けるようになれ」

「うん、数字や簡単な字しか読めないからガンバル……」

「ははは、そう嫌そうな顔をするな。そういう勉強は絶対必要になるからな。そういう勉強をすることも強さに繋がるんだぞ」

「ほんと? じゃあガンバルかぁ~。でも、魔法は上達してもリアにどうやったら会えるのか分からないんだよね」

「そうだなぁ。お貴族様のお屋敷は大きいし、そもそも門がでかくて頑丈で、許可された人間しか入れないんだ。ポンとリアの部屋へ行けるような魔法はないしなぁ」

「ポンとリアの所へ……そうだね、難しそう。でも、諦めないよ、色々頑張ってみる!」

「そうだな、焦らず少しずつ頑張れ」


 この時、トアとアンドールの間には少し受け取り方に違いがあったのだが、アンドールはこの時気づけるはずもなかったのである。


 魔法発現以来、トアのことを心配していたアンドールだったが、今晩魔法の異常な上達ぶりを見て、その心配は何倍にもなっていた。アンドールは生粋の平民らしく魔法は使えない。貴族の血が少し入っていたりすると、弱い魔法が使えたりする者もいるらしいが、ここススリード王国では、平民に魔法が使える者が見つかると、すぐに貴族が養子にしたりするので、平民社会で魔法や魔道具は流通していない。だから魔法を見るのはせいぜい騎士団の魔法部隊が魔法を放つ時くらいだが、それも大規模な魔獣討伐や訓練の時くらいだ。だから魔法に対してそんなに知識はないが、それでもトアの魔法が異常だということくらいは分かった。


 トアと孤児院で別れた後、静寂に包まれた町を騎士団寮まで歩きながら、アンドールは延々と答えの出ない疑問ばかりを並べていた。


(複数属性を使える人間はそもそも騎士団にもいないんじゃないか? それに一つ一つの魔法の威力……トアは威力を抑えていると言ってなかったか? しかし既にあれは魔獣討伐で放たれる魔法と同等の威力はあったんじゃないか? それに、風魔法で飛べる人間なんて見たこともないが、あんなに風を簡単にコントロールできるものか?)


「はぁ、俺も誰かに相談したい……」


 アンドールは、誰も聞くことのない嘆きを夜空に放つのだった。


 その翌日、トアが早速シスターマリーに「図書館で勉強したい」と伝えると、「トアが、トアが……真面目になっちゃって!」と、失礼にも涙ぐまれた。図書館は町の中心の方にあるため、トアの目立つ容姿を心配したマリーから、必ず帽子を被っていくよう言われた。

 トアは、いつも傍らにいたリアと自分の容姿が、他の子供と違っていることは気付いていたが、特に気にしてもいなかった。他の子も髪が茶色かったり黒かったりするし、目の色も薄茶色から黒まで少しずつ違っている。自分みたいな髪や目の色の人もどこかにはいるんだろうと思っていた。


 いつも行き慣れた近くの店を通り過ぎてから図書館までの道のりは、馴染みのない物を売る店で溢れていてとても楽しい。


(あれは髪留めかな? 似たようなのをしている人を見たことがある。うわっ、あんなに高いんだ。……わー! あのお菓子屋さんのクッキー美味しそう! あれはそこまで高くないね。まぁ、お金は全然ないけれど……う~ん、お金かぁ……)


 そんなことを考えていると、マリーに教えられた通り、アーチ状の入り口の上部に大きな本の飾りが付いている建物に到着した。


「わぁ、ここが図書館なんだ」


 トアは、外とは対照的に薄暗い建物内へ入って行った。



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