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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第7話 秘密の練習

 

 待っている時は一日が過ぎるのがとても遅い。じりじりしながら毎日を過ごしていたトアだったが、ついに騎士団に行く日がやってきた。昼過ぎにやってきたアンドールが玄関を一歩入った所で飛びついたトアは、そのままアンドールに後ろを向かせ騎士団へ向かった。


「うっわ~、騎士団の中って広いんだね!」

「そうだな、色んな施設があるからな。お前は中に入ってことなかったよな」

「うん、外に出るのは孤児院の近くのお店くらいだもん。外から見たのも何回かしかないよ」

「まあ、外は色々危ないこともあるからな……」


 アンドールはトアの銀髪の髪とオッドアイの目を見て複雑そうな顔をしたが、当のトアは騎士団に夢中でそんなことには気づかない。


「ここは何?」

「ああ、そこは医務室だ」

「医務室?」

「ああ、医者がいるところだ」

「へ~。そんなに皆病気になるの?」

「いや、病気より怪我が多いな。魔物と戦ったりもするからな」

「そうなんだ……」


 魔物と聞いて、この前襲ってきた犬より怖いのかなと考えたトアはブルッと震える。


「着いたぞ、ここが魔法訓練室だ」


 石造りの建物に空いているアーチ状の通路をいくつか通った先にその建物はあった。これまでのグレーの石ではなく、眩しいほどに白い石で覆われたその建物は、上はドーム状になっていた。そのドームは、遠くから見た時は透明の虹色に光る素材でできていた。アンドールから、それは何かの虫の目玉の素材だと聞かされて、綺麗だと思っていたのが一瞬で「うえっ」となる。


 白い建物の内部のカウンターには人がいて、アンドールが見学だと伝えると愛想なく頷くのが見えた。カウンターの脇にある階段を何回か上がると開けた場所に出た。透明の壁が中央を囲んでおり、そこから訓練室全体が見下ろせる。


「うわぁ、けっこう沢山人がいる!」

「そうだな。大規模な魔物討伐も近いしな。おっと、トア、その透明の壁にひっつくのはいいが、それもあの虫の目でできてるんだぞ」

「うわっ、もう! もっと早く言ってよ!」

「ははははは!」

「あっ、あの人何してるんだろう? 動かないよ?」

「ああ、多分呪文の詠唱中だろう」

「呪文?」

「あ、ああ。まぁ、俺も魔法は使えないから詳しくはないが、大抵は魔法を使う時はああやって呪文を唱えるものらしい」

「え、でも、私……」

「ああ、そうだな。トアは詠唱しなかったな。まぁ、詠唱しない人もいたらしいからな」

「あ、そうなの? よかった~」

「ま、まあな……」


 アンドールは久々に来た魔法訓練室の様子を見て「はあ」とため息をつく。やはり詠唱なしで魔法を発動している騎士はいない。ここは王国騎士団の魔法訓練室で、特に魔力の多い貴族が騎士団の魔法部隊に所属しているから、ここで見る魔法は王国でも強力で高度なもののはずだった。


「ねえ、兄ちゃん、皆一つの魔法しか練習しないんだね」

「そうだな……なぁ、トア、キゾクサマの魔法はな、普通一つしか使えないんだ」

「そうなの? それじゃ面白くないのにねー、色々組み合わせる方が面白くなりそうなのに……」


 このトアのつぶやきをしっかり聞いていなかったことで、後日驚愕する羽目になるとは、アンドールは気付けなかった。


 騎士達が魔法の練習をするのを見たトアは、自分ももっと練習しなくては、という意欲に駆られていた。


(キゾクサマだってあんなに練習してるんだから、リアに会うためには私ももっと練習して強くならないと……そしたらきっと会える方法も見つかるはずだから」


 夜、ベッドの上で目が冴えて眠れないトアは、皆が寝息を立てているのを確認すると、こっそり庭へ抜け出した。町と反対の方向を見ると、そう遠くない辺りに森が見える。


(あそこなら、自由に練習できるかも)


 思い立ったトアは、風魔法で身体を浮かせると森の方へ進んで行った。


(走ると音がするし、これは便利~♪)


 しばらく飛行すると草原に入り草の匂いが強くなる。


(森は魔物が出るから行っちゃダメって言われてるけど、奥じゃなければなんとかなりそう。虫の魔物とかは勘弁だしね!)


 草原を抜けて、鬱蒼とした夜の森に数歩だけ入った辺りで地面にフワリと着地する。


「なんか、ドキドキする~! 兄ちゃんから内緒にするようにって言われてるし、でもリアに会うことは絶対だし、ちょっと勝手に出てきたのは悪いことだけれど、魔法の練習するためには、まぁ、しょうがないよね?!」


 誰もいないけれど、敢えてそう言うことで罪悪感を減らすと、早速練習に取り掛かった。


「まずは、使える魔法のおさらい……水……緑……土……火……風っと!」

 次々に魔法の発動に成功すると、「これじゃ面白くないよね」と一人つぶやく。


「う~ん、水と風とか同時にできるかな? こっちの手でまず水を作って……こっちの手で風を……うわっ、水が消えちゃった! もう一度!」


 それからしばらくウンウンやっていたトアは、しばらくすると両手にそれぞれ水と風を出現させることに成功する。その後は、風魔法で浮きながら、右手に水、左手に炎をつくってみたりと複数属性の発動の幅を広げていった。

 そのまま止めるものがなければ、楽しくて朝まで練習をしてしまっていたかもしれないが、それを食い止めたのは魔力切れだった。


「あ、やばいクラクラしてきた~」


 これまでの魔法練習で気分が悪くなることは度々あり、感覚的にそれがくると魔法を使ってはいけないのだと理解していた為、しぶしぶトアは孤児院に戻ることにした。


 その日から毎晩、トアは皆が寝静まるのを待って、こっそり孤児院を抜け出しては森で魔法の練習をするのが日課となった。次にアンドールに会った時にその成果を見せることを考えると、楽しみで仕方がなかった。



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