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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第三章

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第18話 合同授業②

 

「うん、怖くはないかなぁ。森にはよく行ってたし」


 そう答えると、カミラが突然大袈裟な声を上げる。


「さっすが、トア! 孤児院の子はこういうの慣れているわよね?」


 トアは一瞬「なんで他クラスの子が私のことこんなに知ってるんだろう? それに、孤児院の他の子たちは別に森に慣れていないけどな??」と疑問に思ったが、いちいち言うのも面倒くさいので何も言わなかった。


「やっぱりこういうのは、慣れている人がやる方がいいと思うの。だから……トアが朝まで全部やってくれる?」


 これを聞いたリーベンは、自分がガルマから指示されていた事であったにも関わらず、思わず「えっ、それは……」と思ってしまった。しかし、そこでガルマの言葉を思い出し、出かけた声を押し留める。


「ねえ、リーベンもそう思わない?」

「あ……ああ……そうだな。もし、そうしてくれるなら助かるけど……」

「ん? 朝までの見張り? いいよー」


 あっさりトアが承諾したので、拍子抜けしたリーベンだが、他のメンバーも勿論異論など出るはずもなく決まったのだった。


 夜になると、トアは木の上から見張ると言って、皆が驚く前でスルスルと木を登って行った。カミラの口から「やっぱり野生児ね」という呟きが漏れる。

 実は、カミラもガルマから、リーベンが言われた事と同じ内容を指示されていたのだ。


 木の上に登ったトアは「よしっ」と気合を入れると、早速、四方に結界を張った。


「とりあえずこれぐらいの範囲に張っておけば、大丈夫かな……後は……ここに空間を創ってと!」


 そう言うと、トアはいつもの収納空間にまず片足を入れ、そのままスルッと全身入って見えなくなってしまう。収納空間には、リアに送ったのと同じふかふかの寝具も用意してあり、かなり快適な空間になっていた。結局、そのまま朝まで結界に異常もなく、早朝、何食わぬ顔で木の上から降りてきたトアは、熟睡してすっきりした顔で皆を驚かせたのだった。


(何なの? 徹夜して酷い顔をしていると思ったのに……)


 カミラは朝日に照らされ美しさを増したように感じるトアが許せない。


(すっきりして熟睡でもしたかのような顔をしているけれど、そんなはずはないわね。木の上に居たのだもの。きっと、痩せ我慢だわ。いつまでその我慢が持つかしら?)


 意地悪く唇を曲げるカミラは、今晩もまたトアに見張りをさせようと思うのだった。


 今日は初日の遅れを取り戻すべく、もっと奥に進もうということになった。ここでも、カミラはなんやかんやとトアに絡んできて、結局トアが先頭を進むことになった。カミラはといえば、一番後ろから二番目という安全な位置を歩いている。トアのすぐ後ろを歩くリーベンは、自分が班長だという負い目があるのか、しきりにトアに「大丈夫か?」と聞いてくる。


「大丈夫だよ、リーベン。ちゃんと魔獣も倒すから」

「いや、そうじゃなくて体調のことを……うわっ」


 そう話している側から、一匹のネズミが現れた。


「キャーッ!!」


 カミラにもネズミが見えたようで、途端に悲鳴が聞こえる。


「な、なんで倒さないのよ!? トア、何してるの??!」

「え、だってこれはただのネズミだよ? 魔獣じゃないし、別に殺す必要ないでしょ? それともネズミ食べたいの?」


 トアがそう言うと、カミラは何故か唇をわなわなと震わせ、何も言わなくなってしまった。その後、なんか後ろから刺すような視線を感じるようになったが、トアは無視することにした。


 そうして二日目も、魔獣に遭遇することなく一日が終わってしまい、さすがに皆、焦燥感に駆られ始める。


「でも皆、まだ明日がある。それに、結構歩いたにも関わらず魔獣に遭遇しなかったんだ。きっと、他の班も同じような状況だと思う。とにかくゆっくり休んで明日に備えよう。それで、今日の見張りなんだけど……」


 リーベンはさすがに「今日は自分が見張りをする」と言おうと思っていた。そして、同時にカミラは「今日もトアお願いね」と言おうとしていたのだが——。


「今夜も見張りやるよ!」

「え、でも……」

「大丈夫、大丈夫、任せて!」


 リーベンが驚いている間に、トアはスルスルともう木を登って行ってしまった。


(何なのよ! 全然手ごたえがないじゃない!! でも、予定通りだから、まあいいわ。明日はさすがに弱るはずよ……)


 実は、森に慣れていないカミラはよく眠れておらず、トアよりも遥かに身体に堪えているのだが、それに気づいてはいない。



 その晩、森の奥深くでは、どこからともなく現れた黒ずくめの服を着た男達が、これまたどこからどうやって持って来たのか分からない三つの大きな檻の周りに集まっていた。

 そのうち二つの檻の中からは、シュルシュルと何かを擦り合わせるような音が聞こえている。


 ほとんどの生徒達が疲れ切っているにも拘らず、眠ることのできないシンとした静寂の中、闇に紛れた悪意が密かに解き放たれようとしていた。



 一方、始まりの地点で待機しているロジャー達教師は、少しおかしいと思い始めていた。


「ロジャー先生、今年は誰も発煙筒を使いませんね」

「そうですね。魔獣の数も昨年と同じくらいという事前の調査でしたよね……」


 教師達は「今年の生徒達は勇敢なんだろうか」などと話している。


 そして、最終日、波乱が幕を開ける——。



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