第17話 合同授業①
ルーラル・アラキス魔法学校では、年に一度学年で合同授業が行われる。郊外の森へ出てチームで魔物を討伐するもので、魔物のランクや討伐数に応じて上位のチームが表彰される。生徒達は、野営をしつつ三日間ほど森に滞在することになっていた。
今回の合同授業で自ら望んで班の構成を担当したガルマ・パルザンは、自分のサロンの生徒をトアと同じグループにしていた。
合同授業の数日前にガルマに呼び出されたリーベン・キサリアは、ガルマの部屋を訪れていた。
「リーベン、今度の合同授業だが、君は例の生徒トアと同じ班になった。そこで、君には重要な役割を担ってもらいたいのだ」
「はい。どのような役割でしょうか?」
「皆が言っていたことが本当かどうか、私も興味がある。なので、君にはトアの実力がどれほどのものか見極めてもらいたい。具体的には、まず野営時の夜中の見張りは、全日トアに任せるよう他のメンバーも誘導してほしい。そして、魔獣討伐の際は前衛にするのだ」
「し、しかし先生、それではトアの負担が、あまりにも大きすぎるのでは……」
「いや、大したことはない。大体、野営の時は皆、気が張っていて見張り当番でなくとも眠れないものだ。それに、皆が聞いたという噂が本当なら、合同授業に出てくる魔獣ごとき倒すのは容易いものだろう? とにかく、君は心配せずに私の言う通りにすればいいのだ。分かったな?」
やや圧の籠ったガルマの言葉に、リーベンはそれ以上言うこともできず頷いたのだった。
(ははは、これで上手く少し怪我でも負えば、そのトアも大したことはなかったと、すぐ噂が広がるだろう。まったく、平民の孤児一人に手が焼ける……学校の自由やら平等やらの理念には反吐が出る。平民を頭に乗らせると碌なことにならない)
ガルマはそう内心独り言ちると、合同授業が楽しみだと目を細めた。
いよいよ合同授業の日になった。昨年、初等部の二年生に編入したトアは、今年三年生になり、初めて合同授業に参加するため、楽しみにしていた。楽しみ過ぎて、今朝は早くから目が覚めてしまったほどだ。
「リーニャ、お早う!」
「お早う、トア。なんかドキドキするわね。あまり眠れなかったわ」
「私も早く起きちゃった」
「トアとは別の班だけど、お互い頑張りましょうね!」
「うん!」
集合場所の森の入り口で、生徒達が互いの健闘を祈り合っていると、先生達が前に並び説明が始まった。
「いいか、初めての合同授業で、しかも慣れないメンバーと過ごす三日間だ。様々な苦労があるだろう。協力して魔獣を討伐することが目標だが、決して無理はしないように。仲間の安全を皆、第一に考えるんだ」
まず初めにロジャーがそう言い、その後、詳しい説明が別の教師から行われた。
それによると、森に出るのは小型の魔獣でそれを班のメンバーで協力して討伐するようにとのことだった。魔獣の種類や数で、点数がつけられるらしい。森には赤いテープで規制線が張られており、そこから先へは行かないようにとのことだ。万が一、手に負えない問題が発生したら、各自持たされている発煙筒を焚くようにと言われる。また、緊急時には警報音が鳴り、その際は即時この場所へ戻るよう指示があった。
なお、途中棄権をしたとしても、そこまでに討伐した魔獣は点数になるらしく、それを聞いた生徒達から安堵の声が上がる。
生徒達は各班で森の地図を見て、探索する方向などを与えられ、ワイワイと興奮した声に包まれた。
「おい、トア、ちょっと来るんだ」
ロジャーがちょいちょいと手招きしてトアを呼んだ。
「どうしたの、先生?」
「ええっとな、これまで先生が言ったこと覚えてるよな?」
「うん、目立たないようにする……」
「そうだ。今回は他のクラスも一緒だからな。特に用心するんだ」
「はい!」
「トアにとっては、それほど危険な森ではないと思うが、他の生徒……特に貴族にとっては森の中で過ごすことなどないからな。とにかく用心しつつ安全第一で行動してくれ」
「うん、分かった!」
トアと話したことで、逆に不安が増大したように感じたロジャーだったが、時間もないので他の生徒達へも声掛けをしに、去って行った。
「それでは、只今より開始する。各班始め!」
ロジャーの合図により、生徒達は班毎に森の奥へと進み始めた。
各班は五名で構成されていて、トアの班はトアを入れて二名が女子で、残り三名は男子だった。班長を決めるのだが、これはリーベンが手を挙げたので、全員賛成して決まった。
一日目は、用心して最初の地点からさほど離れていない範囲をグルグル散策していたせいか、ほとんど魔獣らしきものには遭遇しなかった。少し「カサッ」と音がしたりはしたのだが、その度にもう一人の女子生徒カミラ・ノマールが、「怖いっ!」と大袈裟に騒ぐので、その度に警戒したり、カミラを落ち着かせたりと手間取っていた事も、散策範囲が狭くなった要因である。
夕方になり、夜間の見張り当番の話し合いになったのだが、そこで少し妙な流れになる。
「私、とても怖くて、見張りなんてできるかしら……」
そうカミラが言い出したことが始まりで、男子生徒達は「カミラさんは見張りをしなくてもいいよ」と言い出した。トアは「そうか、夜の森が怖い人もいるんだな。私はよく夜の森で修行していたし、慣れているけれど……」などと考えていたのだが、そこで——。
「ねぇ、トアは怖くないの?」
急にカミラがそう聞いてきた。




