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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第三章

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第14話 ドタバタ転移

 

 心の準備をさせてくれないトアに、残ったテリウス校長とフロイスがジトッとした目を向けるが、内心では心臓がバクバクしていた。特に、初めて転移の瞬間を見たテリウスは、とても興奮していた。


(本当に、人が消えただと??!)


 何も言わない二人にトアが声を掛ける。


「多分、成功したよね??」

「……そのようじゃな……フロイス君、宿に行って確認じゃ」

「……はい」


 フロイスが、今度は何故か校長にジトジトした気配を送りながら出て行った。それを確認すると、テリウスは目をキラキラさせてトアに尋ねる。


「さて、トア、今のはどうやったんじゃ?」

「えへへ、えーっと、なんかね自分の時は身体の中の魔力をブワッとさせると飛べるんだけど、他の人の身体の場合はそれができないから、収納袋と同じ空間にハシルさんを入れて、その空間を宿とつなげてからハシルさんを押し出したの。もっと良い方法があればいいんだけれど……」


 ゴニョゴニョ言うトアはもう自分の世界に行っている。


(なんともたまげた。言ってることの半分も分からんわい)


 校長の髭は今や、まるで茹でたエビのようにクルクル巻きになっていた。



 フロイスが宿へ行くと、興奮状態のハシルがおり、身体の不調などもなくちゃんと転移していたことが確認できた。その後、トアと一緒に転移をしたり、物を持っての転移など、色々試したが、いずれも成功した。

 この方法でなら物資を送ることが出来るということで、数日内に計画を実行に移すこととする。



 そして、いよいよバール帝国のウェスリッド家へ転移を実行する日がやってきた。なるべく見つからないように、夜中に決行することにしている。

 今回は、初回ということもあり万が一に備えて、トアも同行することにしていた。フロイスは見つかるといけないので、今回は泣く泣く断念することとなった。


「いよいよだね、うーっ! なんか緊張してきた!」

「トア、こんな重大なことを頼んで、すまない」

「それは大丈夫だよ、私がやりたいんだから!」


 ところが、いざ転移しようとした時、宿の部屋の戸をコンコンと叩く音がした。

 宿の女将さんの声で、男性が尋ねて来ていると言っている。

 皆「こんな時に!」と思ったが、なるべく懸念を残さない為にも、先に対処することにした。但し、万が一にもバール帝国の追手であるといけないので、ここは念のために特に関係のないトアが出ることにする。ハシルはトアに、ここではハールという偽名を使っているとヒソヒソ声で伝えた。


「ハールさんは、今出かけています。私はハールさんに頼まれて荷物を置きに来たんです。」

「ああ、そうだったのかい。じゃあ、訪問客にもそう伝えておくよ」

「お名前は聞いていますか?」

「帝国の知り合いのトムと言っていたね」


 女将は「さっきハールさんを見かけたような?」と思ったものの「忙しくしているので気のせいだったかね」と思い去って行った。


 部屋の中ではハシルが難しい顔をしていた。


「フロイス様、私の知り合いにトムという者はおりません。偽名は使っていますが、宿帳には出身国を書いていましたから、それを見たのだと思います」

「そうか、怪しいな」

「フロイス様もここにいるのは危険かもしれません」

「だったら、フロイスさんも一緒に飛ぶ?」


 トアがそう提案し、急遽予定を変更してフロイスも一緒に行くこととなった。


「転移先は、台所だね。じゃあ、皆行くよ!」


 トアの掛け声と共に、三人は転移した。


 フロイスもハシルも目を瞑っていたが、懐かしい家の匂いを感じると目を開けた。

 そこは暗い場所だったが、少し目が慣れてくると、調理台や鍋などの調理器具が見えてきた。


「良かった、成功だよね?」


 ヒソヒソ声でそう言うトアに、二人が頷く。

 早速、あらかじめ用意していた手紙をハシルがフローリアの侍女トマリにこっそり渡しに行った。



「トマリ、トマリ……私です、ハシルです」


 ハシルはトマリの部屋を小さくノックしながら、名前を呼ぶ。

 少しして、中からゴソゴソと音がして戸が開かれた。


「ハシル様!」


 夜中に突然現れたハシルに驚いたトマリだが、すぐに真剣な表情になる。


「ハシル様、よくご無事で!」

「ああ、フロイス様にもお会いできました。色々ありましたが、手助けもあって物資を調達できました。私はすぐに出て行きますが、また戻ってくるので安心してください。物資は台所に置いてあります。それから、これを明日奥様に渡してください」


 そう言うと、ハシルは手紙をトマリに渡す。


「承知しました。明朝、奥様にお渡しします。ハシル様、どうかお気をつけて」

「ありがとう」


 台所へハシルが戻ってくると、三人はすぐに転移で帰ることにした。フロイスは義姉の様子を見たい気持ちを抑えて、今回はすぐに戻ることにする。帰りは、例の謎の訪問者がまだ宿にいるといけないということで、念のため魔法学校のフロイスの部屋に転移することにした。


 三人の判断は正しかった。ハシルが泊っている宿の外には、黒いコートを着た男が立っていた。トムというのももちろん偽名で、彼はバール帝国の筆頭魔導士ラーラル・ダハンが各地へ飛ばした調査人のうちの一人であった。宿帳を見て、帝国の者が宿にいるということで念のため確認に来たのだった。



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