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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第三章

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第7話 叱責の行方

 

「陛下、わざわざ謁見の間にお呼び立ていただかなくとも、私の方からお部屋へ参りましたのに」


 側妃カーラがそう切り出すと、国王ダンデリアムは「ふぅ」と小さく息を吐いた。


「今回は、公式の場でお前達に言わねばならぬことがある。ダストンよ、そなた側妃となる予定のリア・レスト子爵令嬢を学院で虐げているそうだな。直ちに行動を改めよ」

「そ、それは……アレは生意気なのです!」

「そうですわ、だからダストンは躾をしているのですわ」

「だまれ! そなたらは他国に恥をさらしているのだ」

「他国? どういうことですの?」

「ルルド国王から文が届いたのだ。リア・レストの妹が魔法学校におるらしい。ルルド国王も一目おくほどに優秀なようだ。その妹が姉の現状を憂いておると書かれておる」

「そんな、たかが孤児の平民のことなど……」

「『たかが』ではない! ルルド国王が一目置いているということは、もちろん魔法学校でも優秀ということだ。魔法学校の心象が悪くなることは避けねばならぬ。あそこはどの国からも不可侵であるが、それが成り立っているのは、それだけの権力があの学校にはあるからだ。もう一度言う。リア・レストへの態度を改めよ」

「「はい……」」


 内心では納得がいかないものの、とりあえずその場を後にした二人だった。


 そして、レスト子爵家にもススリード王家から文書が届いていた。

 早速、その文言に目を通した当主ダーミー・レスト子爵は、その紙をグシャッと握りしめた。


「全く何なんだ! 何故アレのせいで私が怒られなければいけないのだ!」


 夕食の時間になってもダーミーは不機嫌なままだった。


「ミシェル、チェリー、アレを呼び戻すことになったぞ」

「アレ……リアのことでして?」

「そうだ。王家から文が届いた。側妃となるのだからきちんと生活させろと書いてある。全く、どこから情報が行ったんだ。忌々しい!」

「お父様、側妃になるのなら、もっと厳しく躾ける必要があるのではないかしら? 今のままの生意気なあの子では、きちんと側妃のお役目を果たせないと思いますの」

「……それもそうだな。ミシェル、良いことを言った。確かに、これまでが優しすぎたのだ。だから正妃から格下げになってしまったのだ。厳しくしなければな……」


 父ダーミーと姉ミシェルが意地悪な笑みを浮かべ、母メゾットは無関心な食卓の席で、チェリーだけがリアの身を案じていた。


(このまま帰って来ても、リアは酷い目に遭うわ……どうしよう……とにかく知らせないと……)


 翌日、屋敷の玄関を出て行こうとしたチェリーは、後ろから姉のミシェルに呼び止められた。運悪く、そこへ父ダーミーもやって来た。


「チェリー、貴女その恰好、もしかして……リアの所に行くんじゃないでしょうね?」

「いえ……」

「チェリー、お前平民の恰好をしているのか! ミシェルが言った通りだったな。お前がアレの所に行くかもしれないと言っていたんだ。やっぱりそうなんだな? 邪魔をするな! おい、お前達、チェリーを部屋に閉じ込めておけ!」

「お父様、早い方がいいわ。私がリアを連れ戻すよう手配するわ」

「そうだな。では、お前に任せる」


 酷薄な笑みを見せたミシェルは、屋敷の使用人に指示を出した。



**

 騎士団にいたアンドールの元に連絡が入ったのは、昼過ぎのことだった。


「アンドール、大変だ! 孤児院をガラの悪い奴らが囲んでいるって!」

「何だって?!」

「だが、どうも貴族の名前が出ているらしい」

「……分かった。デニス、ちょっと行ってくる!」

「水臭いな、俺も行くさ」

「すまない」


 そうして急いで孤児院へと向かった二人は、遠目に見ても分かる柄の悪い連中が五人、孤児院の周りをうろついているのを発見した。連中は大声で何かを叫んでいる。


「お~い、リアちゃん、出ておいで~」

「子爵様がお待ちだよ~」

「その前に俺達とも遊ぼうぜ」

「「ぎゃはははははは」」


 孤児院の中では、子供達が泣きそうな顔でシスターマリーにしがみ付いていた。


「皆、大丈夫よ。神父様と私が守るからね」

「シスターマリー、私、やっぱり行った方が……」

「ダメよ。貴女をあんな連中に渡せないわ。ここにいなさい」


 そんなやり取りをしていると、外から違う声が聞こえて来た。


「お前達、何をしている?」

「……うわっ、騎士様のご登場ってか?」

「めんどくせーなー」

「俺達、子爵様に雇われて仕事してるんですー」

「そうそう、仕事仕事~」

「おい、そろそろ力ずくで入るぞ」


 男達は、そう言うとドアをガンガン蹴り始めた。


「やめろ!」


 アンドールが男達とドアの間に身体を入れて阻止しようとしたが——。


「おい、貴族様の命令に盾突くのか? お前達、まずはこいつらを排除するぞ」


 そう言うと、五人の男達は一斉にアンドールとデニスに襲い掛かって来た。普段鍛えているアンドールやデニスは、お互い背後を取られないように動き回りながら男達が振り下ろす腕を掴んで投げ飛ばす。


「お、おい、こいつら強いぞ!」

「デニス、刃物に気をつけろ!」


 アンドール達の方が強いと悟った男達は一斉に刃物を出した。相手が貴族の雇われということもあり、アンドールは剣を抜くことを躊躇ったが、その一瞬の隙を突かれる。


「アンドール、後ろ!!」


 デニスの声が飛び、間一髪で背後からの攻撃を交わしたアンドールだったが、別の二人の間に立ってしまい、同時に切りかかられた——。


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