第6話 ルルド国王からの手紙
トアから事情を聞いた国王ミカルダスと筆頭魔導士のコアトールは、頭を抱えていた。そして、二人はちょっと相談するとトアに言い、部屋の隅で対応を協議することにした。
「よりにもよって、トアを姉と強引に引き離し、貴族の権力を振りかざして脅しや虐めを加え、気に入らないとなれば追い出すとは……ススリード王家はそんなに浅はかだったか?」 「陛下、もしかしてトアの存在をススリード国王はご存じないのでは?」
「なるほど……はぁ~どうしたものか……今回の件を正直にススリード国王に話すわけにもいくまい」
「そうですね、そういうどうしようもない貴族を見ているから、トアはあちらの貴族に自分の存在を知られたくない可能性もありますし……いっそ、トアにどうしたいか聞いてみますか?」
「そうだなぁ……」
そして、二人はトアの方へと戻った。
「トア、正直どうにかしてやりたいのだが、私はこの国の国王だから、この国のことならばできることも多いのだが、隣国ススリードの貴族のこととなると手が出せないのだ。その上で聞くが、トアはどうしてほしい?」
「……うん、この国のことじゃないからね。分かってる。だから、私がやろうと思う。自分の国のことだし、私のお姉ちゃんのことだから……」
「『やる』とは、何のことだね?」
「ああ、リアにひどいことをした人達をとりあえず収納袋に入れて、袋ごと山の中に置いてこようかなって思ってる」
「「収納袋……」」
思わずミカルダスとコアトールの声が重なってしまった。そして、二人とも「やはり『収納袋』については聞くのはやめよう」と考え直した。なんとなく疑問の連鎖が生まれる気がしたからだ。
「トア、どうもあまり、その……収納袋というのは……良い方法ではないように思う。うむ、だから、もしトアが良ければ、私からススリード国王に手紙を書こうと思うのだが、どうだろうか?」
「えっ、王様から王様へお手紙を書いてくれるの? リアを虐めないようにって??」
「ああ、そうだ」
「王様は国で一番偉い人だもんね! それなら悪い貴族も懲らしめてくれるよね? あ、そうだ! 私、良い王子様知ってるんだ。マルスミア王子!」
「おお、トアはマルスミア王太子と知り合いか?」
「うん、一緒に山に行ったりしたよ」
「そ、そうか。なら、きっと大丈夫だな、うむ、手紙を書こう」
こうして、何とかトアを説得できたことに安堵し、ミカルダスはススリード国王へ早急に親書を送ったのだった。
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ススリード王国では、国王ダンデリアム・ススリードが、ルルド国王からの親書を読んで、首を傾げていた。そこには、魔法学校に在籍しており、ルルド国王とも既知の仲であるトアの姉について、ルルド国王が個人的に要望したい件が書かれていた。
「第三王子の婚約者にしたリアの妹とはいえ、一学生についての親書とは……それにしても、リアの妹も魔法が使えたとは知らなかったな。マルスミアはこのトアという少女のことを知っていると書かれている。聞いてみるか」
そうして呼ばれた王太子マルスミア・ススリードは、開口一番、父の口から「トアという少女について……」と言われた途端、頭をフル回転させ始めた。そして、ルルド国王からの手紙の内容を聞いたマルスミアは思う。
(父上はトアの規格外な能力についてはご存知ではない。が、恐らくルルド国王は気付いている。それで我が国に警鐘を鳴らしているんだ……)
トアがリアの処遇について怒っているということを理解したマルスミアは、サアーッと頭の芯が冷たくなる。
「マルスミア、お前はこのトアについて知っているのか?」
「はい、存じております。大変狩りも得意でして、実はポヤの花を採取して騎士団員の回復に貢献してくれたりもしておりました。ただ、姉のリアを引き取ったレスト子爵家のリアに対する処遇の悪さから、貴族社会にあまり良いイメージを抱いておりません。ですので、騎士団への貢献もあり、私が魔法学校へ推薦いたしました」
「なるほど……どのような魔法が使えるのだ?」
「姉のリアと同じ風魔法は使えるようですが、すぐに魔法学校へ編入しましたので、詳細は分かりません」
父親からじっと見つめられ、肝が冷えたマルスミアだったが、ダンデリアムはとりあえず説明に納得したようだった。
父との話を終え、自室に戻ったマルスミアは椅子に座ると「はぁー」と深く息を吐き出した。国王であるダンデリアム・ススリードは、何事も国のためなら強引に進めることが多い。トアの才能を知れば、間違いなくどこかの貴族の養女にしようとしただろう。しかし、トアの貴族に対する不信感は元々強く、今回のリアの件で、更にその思いは強くなっただろう。これ以上、貴族の権力をちらつかせるのは悪手だと思うのだった。ルルド国王も警鐘を鳴らしているのだ。トアの事に関しては、国を思うが故にトアを自由にさせておくことが最善だと思えた。
(それに今、トアはどの国も不可侵の領域である魔法学校に在籍しているのだから、父上もどうこうできないことはご存知だ。はぁ、トアを魔法学校に行かせたのは我ながら英断だった。それにしても、第三王子とその母の側妃には困ったものだ……)
マルスミアがそう考えている正にその頃、今度は第三王子ダストンと、その母で側妃であるカーラが国王に呼び出されていた。




