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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第二章

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第24話 流行の裏側

 

 ルルド王国のトビアーヌ子爵家の当主ケイソン・トビアーヌは、決して頭が切れる男ではない。いつも妻からも遠回しにそう言われ続けており、いい加減うんざりしていた。そんなケイソンが三か月ほど前に社交クラブで知り合った男ルカッドは、人が良くケイソンの人柄を高く評価してくれて、ケイソンはすぐにその男ルカッドを信用した。ルカッドから金の儲け方も教わり、今回の件も思いつくことができたのだ。


(貴族は皆その特権を利用して生きている。俺はそんな基本的なことも分かっていなかった。特権を使えるから貴族は偉いのだし、それで金を生むことができるんだ……ああ、もっと早くルカッドに出会えていたら……ははは、そんなことを言ってもしょうがないな)


 そんなことを考えながら、ケイソンは地方都市ミリアルドの宿から外を見る。

 ここミリアルドは王都から馬車で一日ほどの地方都市ミスタの隣にある都市で、ミスタほどではないが、十分に栄えている。ケイソンが治める領地ではないのだが、ある計画の為この都市に滞在していた。煩い妻には伝えていないし、この計画が上手く行けば、今まで自分を詰っていた態度を謝るに違いないので、今は邪魔されずに進めたかった。ルカッドにも、大切な計画は、本当に信頼できる部下数名とのみで進めるのが良いと言われたのだ。


 思えば、病原体の多くが魔獣から発生すると教えてくれたのもルカッドだった。その話の過程で、他国であった金儲けの事例をルカッドが教えてくれたのだ。それによると、まず近隣の薬草という薬草を貴族の特権を利用して買い占める。これは、多少強引にでも行う必要がある。そして、病気が流行った時にその薬草を高値で売って利益を得るのだ。その時には市場の薬草が不足していることもあり、多少の値上げは問題にならないそうだ。

 それを聞いてなんと良い方法かと思った。ルカッドから最終的に薬草で人を助けるのだし、病は遅かれ早かれ流行るものだからと言われ、それもそうだと納得した。しかし、そんなに丁度のタイミングで病が流行するのかと聞くと、ちょうど時期的にもうすぐ地方都市ミスタで流行病が発生する頃だと教えてもらった。ここでもケイソンは、ルカッドのその知識の豊富さに感心したのだ。

 そしてそれからすぐに、病が広がり始めたと腹心の部下からの連絡があり、計画通りだと思っていた。しかし——。


「おかしいな……思ったように薬草が売れていないではないか?」

「はっ、探りましたところ、どうやら王家が薬草の取扱量の調査を始めていたらしく、思ったより買い占めが出来なくなったようなのです」

「なにっ、王家が?!」

「はい。それから、王都の屋敷の奥方様から旦那様へお戻りいただきたいと再三部下が伝言を承っているようでして……」

「ふんっ、あいつのことは放っておけばいいんだ! 金の稼ぎ方にまで、いちいち口を出されかねない!」

「はっ、しかし、どうも王家に関することだとか……」

「ハッ、どうせ王家主催の茶会の時期だから、揃って出席しろとか言うんだろ! 毎回そうだ! 自分は着飾ってご婦人方と暇な話ばかりで、俺の悪口を吹聴しているんだ。あいつは自分が子爵家の中心だとでも思っていやがるんだよ、昔から!! もうそんなことはどうでもいい、今は薬草のことだ!」

「ははっ。薬草について関係あるかは分かりませんが、最初の頃に買い占めを行い、圧力をかけたはずの王都の薬草専門店が、店を再開しているようでした」

「んん? ああ、生意気にも全部の薬草は売らないと盾突いた奴か?」

「はい。しかも、遠目にもよく分かるほど繁盛しているようです」

「ふん、王家が薬草でも配っているのか? 王宮の医師団なら薬草も持っているだろうからな……もっと病が流行れば在庫も底を突くだろうが……どんな様子かその店を偵察して来い。反抗するようなら連れて来い」

「はっ!」



**

 最近、トアとリーニャは学校が終わると、毎日のようにルミオンと一緒にルミオンの父の薬草専門店に来ていた。今日も皆、それぞれの持ち場で黙々と治癒の魔道具を作っている。魔法陣の材料になっているピロウの薬草については、トアが転移で採取してきていた。箱については木材を加工して作っているが、これには倒木や廃材などを利用しており、カミドが知り合いの木材店に頼んで作成してもらっている。ピロウの薬草をすり潰したり、魔法陣を書くのはリーニャとルミオンが主として担当しており、最後に治癒魔法を魔法陣に込めて、それに隠蔽魔法を掛けるのはトアが担っていた。こればかりはトアにしかできないことで、リーニャとルミオンはトアの魔力欠乏や疲労を心配していたのだが——。


「トア、大丈夫? そろそろ休憩した方がいいんじゃない?」

「そうだよ、もう十個も連続で作ってるよ!?」

「大丈夫だよ、そんなに強い力込めていないし。この前の千個だって、三日で出来たでしょ?」

「「三日??!」」

「あれっ、言ってなかったっけ? そう、三日で出来たんだけれど、その間にカミドさんが王宮に呼ばれたりしたから、そのまま寮に置いておいたんだよ」

「はぁ~……まったく本当に規格外よね……」

「ほんとトアってどうなってるんだろう??」


 これまではトアが箱を学校の寮に持ち帰り、魔法を込める作業を行っていたから気づかなかったが、その様子を目の当たりにした二人は驚きを隠せない。

 唖然としていた二人だったが、突如、店頭で販売をしているカミドの大きな声が聞こえてきて、三人とも手を止める。


「お客様、お止めください!」

「何をする、無礼な店主だな! 俺は貴族家の遣いで来ているんだぞ!」


 三人はすぐに店内が見える位置に移動し、様子を伺う。

 そこには、会計用の机越しにカミドの胸倉を掴む男がいた。今日も店は魔道具の箱の評判を聞きつけ、買いに来ている客で賑わっていたが、皆迷惑そうな顔でジロジロとその男を見ている。


「だから、その箱の作製方法を聞いているんだ! さっさと話せ!」

「ですから、見ての通り箱の中には治癒の薬草を塗っておりますが、それ以上のことに関しましては秘匿とさせていただいております。これは王家のご許可をいただいております」

「ふんっ、多少の効果があるくらいで王家が許可など与えるか!」

「本当でございます」

「じゃあ、お前がケイソン・トビアーヌ子爵様に直々にそう説明しろ!」


 物陰から聞いていた三人は、ケイソン・トビアーヌという言葉を聞いて、先日の薬草買い占めの貴族だと分かり怒りが増す。

 三人が見ている前でケイソンの遣いを名乗る男は、店の内側まで来てカミドを引きずって行こうとした——。


「カミドさんに硬化の魔法をかけよう……」


 トアの呟きを聞いた二人は同時に「えっ?」と聞き返したのだが、その時には既に店内では異変が起きていた——。


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