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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第二章

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第18話 魔道具

 

 今日は朝から魔道具作成についての授業だったが、リーニャの頭の中は昨日のことを思い出してまだ興奮状態だった。


(昨日のトアの魔法って……マルカの症状が呪いだったとすると、やっぱり浄化魔法になるわよね? でも浄化魔法が使える人は現代にいないし、昔には居たけれどそれだって……)


「リーニャ・ルストン、外じゃなくて黒板を見るように!」


 そんなロジャーからのお叱りを受けてバツが悪そうにするリーニャの隣で、トアは真剣な顔で授業を聞いていた。お転婆なトアではあるが、授業は真面目に受けている。トアにとって魔法学校での授業は自分の為でもあるが、元を正せば双子の姉のリアの為でもある。貴族社会に連れて行かれたリアを助ける為には知識がいるのだ。周りの反応や授業の成果で、どうやら自分の魔法が規格外なことは分かってきたが、具体的にそれをどう生かせばリアを助けることにつながるのかはまだ分からない。ただリアを連れ出すというだけでは、色々な人に迷惑が掛かるということは想像できるようになっていた。自分の家である孤児院の皆に迷惑が掛かるのは嫌だし、それはリアも望まないだろう。だから、とにかく知識をつけて、それから最善の策を考える。その為に今日もトアは真面目に先生の言うことを聞いていた。


(魔道具って前にリアに作ったこともあったし、魔法と道具作成の技術が必要なのはなんとなく分かっていたけれど、通常は一流の魔法士が作成しても、内部に入れた水が少し飛ぶとか、風が出るとかそれくらいのものっていうのは驚きだなぁ。しかも刻む魔法陣は古の時代に作られたものしかないのかぁ……しかも、水関連の魔道具なら水の魔法を使う人の魔力を込めないと発動しないんだ。あれっ、そういえば、私が作ったやつは特に魔法陣とか書かなかったけどなぁ?)


 色々疑問に思いつつ、自身の魔法について考えていたトアは、あることを思いつく。


(私の治癒魔法を込めたらどうなるんだろう? この『今は使用者がいない古の魔法陣』に書いてある治癒の魔法陣を治癒の薬草ピロウの液で書いて、それに治癒魔法を込めるとか…………うん、なんかできそうな気がする?! でも、まず先生に聞いてみよう)


「先生、この魔法陣って、治癒魔法を込めたら使えますか?」

「治癒の魔道具か……先生は見た事ないが、国家や研究機関が所有している魔道具の中にはあると聞いたことがあるな。しかし、そもそも治癒の魔法を使える者がいないから発動はできないだろうな」

「そうなんだ。皆が使えたら便利なのに」

「そりゃあそうだな。そんなものが開発されて、庶民にまで手が届くようになればなぁ。まぁ今は夢みたいな話だな」


(ま、そんなに研究してても発明できていないなら、出来なくても当然だよね! とりあえず挑戦だけしよう)


 そんな軽い気持ちで、授業中に考えた内容を実践してみたのだが——。


「トア、何やってるの??! 何その木片は?」


 放課後、なんとなく暇だったのでトアの部屋を訪ねたリーニャだったが、ドアを開けて目に入って来たものは、木片を組み合わせて作られた四角い物体だった。


「あ、ちょうど良いところに来たね! 今から実験するんだよ! 見ててね……」

「ぁああっ、何するの!!?」


 リーニャの目の前でトアがナイフで自分の腕を少し傷つけた為、リーニャは叫んで思わず顔をそらす。


「ほら、見てて! これを握ると……ほら! うわーやったぁ! 治ったし、これ成功じゃない?? 治癒の魔道具!」

「へっ、治癒? 魔道具? ぇええええ!!」


 切り傷が瞬く間に綺麗に塞がった腕を見て、リーニャは思わず叫んだ。


「うん、今日の授業で習ったでしょう?」

「習ったよ? 習ったけれど、基礎の基礎をね??」

「うん、じゃその応用かな!」


 無邪気にやったーと喜ぶトアの姿はまるで、「ちょっと良いお菓子をもらった子供の反応」くらいのものだとリーニャは思った。しかし、これは重大なことで、世界がひっくり返る事だとリーニャの頭は告げている。


「トア、ちょっと聞いてくれる?」


 友人のいつになく真剣な表情に気づいて、トアはとりあえず魔道具を置いて椅子に座る。


「あのね、この前マルカを治してくれた浄化魔法もこの治癒魔法も、今使える人は世界中探してもトア以外いないと思うの。この前授業でも習った通り、これらの魔法が使えたのは、古の賢者ルーラル・アラキスだけなんだよ。現在残っている浄化や治癒の魔道具は王家や研究機関が所有しているけれど、それもその時代の物で、賢者由来のものって言われてるし、ずっとそれらの研究も行われてきたけれど、未だに実用化は無理なんだよ。だからね、トアが出来ますって知られたら大変なんだよ! はっきり言ってトアがどうなっちゃうのか、どうされちゃうのか想像もできないの!」


 そう一気に言うと、リーニャの目に涙が溜まる。トアは、自分のことを本気で心配してくれるリーニャの気持ちが伝わり胸がじんわりと熱くなった。


「リーニャ、有難う心配してくれて。うん、そうなんだよね。何か自分でも分からないんだけど、私の魔法は皆とは違うし、結構何でも出来ちゃうんだよね。でも、それが危ないってことも分かってる。リーニャの前だから安心して色々やってた。ごめん。実はね、ここに来たのは、そういうことに対する知識をつける為と、双子のお姉ちゃんリアの為でもあるんだ……」


 そう言うとトアはリアが貴族の所へ連れられて行ってからのことをリーニャに話して聞かせた。

 話し終えると、それまで大きく見開かれていたリーニャの目がやっと元に戻る。


「……ススリード王国のマルスミア殿下って良い人ね~なんか、色々驚きすぎてトアがそんな強力なパイプを持っているとか、もう当たり前くらいに思えてきたわ……最初、マルスミア殿下が味方なら大丈夫なんじゃないかって思ったけれど、リアさんと第三王子の関係があると色々厄介ね。でも、トアならリアさんが人質に取られても力ずく……」

「ん? どうしたの?」

「う、ううん、なんでもない、言い間違えただけ!」


 自分が言ったことをトアなら実行できてしまうと思ったリーニャは、慌てて誤魔化した。


(きっとそういう危うさもあるから、マルスミア殿下達はトアをこの学校の保護下に置くことにしたのね……トアはマルカを助けてくれた恩人でもあるし、何より私の親友だから……全力で守らないと)


 そう心に決めたリーニャは、トアの目的である『リアの救出』について、どうすればいいのかをトアと真剣に考え始めるのだった。


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