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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第3話 養子と別れ


 リアが教会の客間に入ると、先ほど見たフリフリの服を着た小太りでピンク色の髪の男性が座っていた。細めた目で嫌そうな視線を受け、リアの身体は強張る。

 ナイル神父の隣に腰掛けると、その男性はダーミー・レスト子爵だと紹介を受けた。


「もう顔も見たし、あとは日にちを決めればいいだろう」

「はい。ご希望はございますか」

「こっちの準備は特にいらないから、いつでもいい」

「では、5日後ということでよろしいでしょうか」

「いいだろう」


 自分のことだと思うけれど、分からないままに勝手に進んでいく話に焦ったリアが思わず「あのっ」と声を出すと、子爵からギロリと睨まれる。


「なんだ」

「あ、あの、私はどうなるのでしょうか」

「ふん、お前をうちに引き取ってやろうという話だ」

「え、うち……?」

「はぁ、まったく意味も分からないのか? 五日後から、うちに住むんだ」

「な、なぜですか?」

「お前が魔力持ちだからだろう! 魔力がなければ誰がお前みたいなのを引き取るか!」

「は、はい、すみません」


 こんなに高圧的な態度で接する人間が周りにいなかった為、萎縮したリアは思わず謝ってしまう。


「はぁ、もういいか?」

「は、はい、後はこちらで説明をしておきますので」

「期待はしていないが、ちょっとはましな恰好で連れてこい」

「はい」


 尊大な態度の子爵が帰っていくと、リアは涙ぐみ、直後に部屋に突入してきたトアの質問攻めにあった神父は、事の詳細を二人に聞かせた。


「え、じゃあリアはキゾクの家に行くの? そんなの嫌だよ! 魔力って何?」

「魔力とは本来、貴族が持っているものなんだ。でも稀に平民でも魔力持ちが生まれることはある。でも、小さい頃にそれが分かるとほとんどは貴族様の養子になるんだよ」

「なんで?!」

「それは……平民の間に魔力持ちがいることを貴族様は嫌うからだよ」

「そんなのひどいよ! なんでそんなにキゾクサマは偉いの? なんで言うこと聞くの? リアと離れたくない!!」

「でも、仕方がないんだよ。私達は弱い。貴族様は孤児院を潰すこともできるんだ」

「そんな……いやだ……いやだよぅ」


 そう言うとトアは泣き出してしまった。不安と悲しみで押しつぶされそうなはずのリアは、それでも気丈にトアをなぐさめ、その光景を見ていたシスターマリーの頬にも涙が伝う。


 それからリアが子爵家に行くまでの間、トアはずっとリアに張り付いていた。


「リア、私絶対にリアに会いに行くから。約束する」

「うん、私それを楽しみに待ってるね。どこに行ってもトアは私の妹で唯一の家族だから」

「うん……。私、強くなるから。こんなの嫌だから……だから強くなる」

「私も怖いけれど頑張る」

「そうだ! 何か二人だけの合言葉を決めておこうよ!」

「合言葉?」

「そう、何かあった時に二人だけに通じるやつ」

「そうね……あっ、じゃあ花はどう?」

「あ、私達がここに来た時の服に刺繍されてたから?」

「うん、なんか可愛いかなって」

「いいね! うん、そうしよう!」


 無常にも数日間はあっという間に過ぎ、別れの日がやってきた。

 貴族の屋敷は町の中心から反対側のエリアにあるとのことで、町の中心までは徒歩で行き、そこから馬車に乗るとのことだった。トアは教会でお別れをしなければならず、神父様に連れられてだんだん離れていくリアに向かって声の限りに叫ぶ。


「リア、約束忘れないで! 絶対また会えるから! だから元気でいて! 風邪引かないで……負けないで…………だ、大好きだよ、ずっとずっと大好き!!」


 涙でぐちゃぐちゃになりながらリアが見えなくなるまで手を振り続けたトアは、しばらく立ちすくんだ後、ダッと孤児院に駆け込んだ。それから夕方までベッドに伏せたまま泣く声が聞こえていた。

 夕食の席は皆がしゃべらず、こんな静かな夕食はトアが来てから初めてのことだった。シスターマリーも落ち込んでいるのが見て取れて、それが余計に悲しみを実感させた。


(でも、リアと約束したから。リアはもっと寂しいはずだから。だから、私が強くならなくちゃ……)


 翌日には、なんとなく以前と雰囲気の違うトアの顔があり、それに気付いたシスターマリーも気合いを入れ直すことで、孤児院には日常が戻っていった。


 リアがいなくなってから、トアはどうやったら強くなれるのかを考えていた。まずはリアに会いたい。でも、今はどうすれば会えるのかさえわからないのだ。これまで自分達が見知っていた孤児院やすぐ先の商店という世界にいきなり現れたキゾクサマの世界。どうやったらそれに対抗できるのか、どうやったらキゾクサマに邪魔されずに生きていけるのか。トアはその答えが見いだせずにずっと不安を抱えていた。


(そうだ、今日は兄ちゃんが孤児院に来る日だ。聞いてみよう)



 個人出身のアンドールは、騎士団員として活躍していて子供達の憧れだった。強い身体と努力で手に入れた剣の強さは、特に男の子達にとっては自分も努力すれば騎士団に入れるという良い目標になっていた。アンドールも自分の我が家と呼べる孤児院の子供達が少しでも将来良い暮らしができるよう、見守りやアドバイスを兼ねてよく孤児院に来ていた。


「よっ、お前たち元気にしてるか?」

「「「アンドール兄ちゃんだ!」」」


 アンドールが孤児院に現れると、子供達がわっと集まって来る。


「兄ちゃん遊んで!」

「庭で剣の練習見てよ!」

「結婚まだ?」

「騎士団の話聞かせて!」

「こら! 誰だどさくさにまぎれて変な質問したやつ!」

「「「あはははははは!」」」


 いつもと同じように元気な子供達の顔を見て笑顔になったアンドールだったが、そこでいつも飛びついてくるトアの姿がないことに気づいた。


「ん? トアがいないな」

「ああ、うん、多分部屋だよ」

「そうか……」


 気づかわし気な視線を一瞬見せたアンドールだったが、子供達に不安な気持ちが伝染しないよう、すぐにいつもの笑顔に切り替えたのだった。


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