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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第二章

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第10話 不思議な出来事

 

 今日もエイミーとケイトは朝から恋の話で盛り上がっていた。


「エイミー、最近貴女をダストン王子の婚約者に推す声も増えてきたわね」

「うふふ、嬉しいけれど、恐れ多いわよ。私なんか」

「そう言いながら、二人のラブラブぶりはもう有名じゃない」

「ダストン様が、もっと近くにといつもおっしゃるから……」

「私も友達が王子のお気に入りだなんて、鼻が高いわ」


 一方、リアはそんなダストン王子とエイミーの仲睦まじい姿を見かけることは度々あったが、全然なんとも思っていなかった。むしろ、王子が自分と婚約破棄をしてエイミーと婚約してくれれば幸せだと思っている。しかし、そんな我関せずの態度は王子を苛立たせ、エイミーは、自分に対して嫉妬もしないリアを気に入らなかった。

 ダストンが自分の味方であることで、いつしかエイミーはリアへの敵意を正当化していった。最初はほんの少しのことだった。少し水を教科書に染みこませたりする程度だったが、それをダストンに話すと、「さすが俺の気持ちを分かってくれる」と喜ぶので、次第に行動はエスカレートしていった。


 しかし、最近何かおかしい——。


 最初は、リアの教科書を隠した時だったように思う。隠したはずの教科書を、リアはカバンの中から取り出したのだ。その時は、誰かが見つけてリアに持ってきたのかと思った。しかし、次に階段の上からバケツの水をかけた時、その水が自分たちになぜか降りかかってきて、しかもリアには一滴すらかかっておらず、何か見えない壁にでも水がぶつかって跳ね返ったような感じがして、怖くなりその場を逃げ出してしまった。

 後からよくよく考えると、近くの壁に跳ね返って水がかかったように思えてきて、リアを一瞬でも恐れたことを馬鹿らしく思った。


 もうそんな失態は犯さないと、今度はリアを自分達の側に置いて嫌がらせをすることにした。不思議がるリアに一緒に食事をしようと誘い、リアの食事にこっそり激辛の香辛料を入れたのだが……その結果は悲惨だった。なぜか自分達の食事が激辛になり、二日経っても舌がヒリヒリする事態となったのだ。

 ダストンはリアが何かしたんだと言って怒り狂い、取り巻き達と協力すると言ってきた。


「お前達、誰にも悟られないようにやるんだぞ」

「はい、大丈夫です、ダストン王子。我が家が懇意にしている者達を使いますので」

「私は、リアを誘導します」

「お前達は本当に頼りになる。エイミー達が怖がっているから、今後リアが一切手を出せないようにしてくれ」

「「はい、おまかせください」」


 その数日後、リアはクラスメイトから、先生が学院の裏門横の倉庫にくるように言っているという伝言を聞き、倉庫に向かった。先生の手伝いで授業の準備のため倉庫に行くことはあったので、特に疑問に思わなかった。しかし、倉庫に着くと先生は来ておらず、木陰からフードを被った男達が三人出てきた。手にはナイフを持っており、リアは後ずさるが、男達はどんどん距離を詰めてくる。パニックに陥ったリアは風魔法を咄嗟に出し、それが一人の男に命中する。


「てめえ!」


 しかし、その間に残りの二人が距離を詰め、一人がナイフを振りかぶった——。


 ナイフが当たることを覚悟して咄嗟に手を出し、目をつぶった——のだが——。


(えっ)


 ナイフは空を切ったようだったが……その刃には血がついている。見ると、勢い余ったのか、その男は自分で自分を切ってしまったようで、ナイフを持つ手と反対の腕から血を流している。

 リアは自分の体をそっと触って確かめるが、やはりどこも切られていない。そうしているうちにもう一人もナイフを振りかぶってきたのだが——やはり刃は空を切り、刃先から血が滴り、その男自身の肩が切れていた。


「ちくしょう! なんなんだ、いっってえ」

「お前がやったのか?」

「いや、俺もなぜか自分で切っちまった。あいつには当たってないみてーだ!」

「くそっ!」


 それから男達は何回かナイフを振り回したが、いずれもリアに当たることはなく、自分達の傷が増えて行く一方だった。業を煮やした男達はナイフを捨て殴りかかって来たが、これまたナイフの時と同じで、その拳は空を切ったように見え、その直後に男達は地面に倒れた。結局何をしても、男達はリアに触れることができず、自分達が攻撃を受け、そのうちに体力が尽きた男達は、気味悪そうにリアを見ながらボロボロの身体を引きずり去って行った。


 リアは何が起こったのか分からなかったが、男達がいなくなると一気に緊張が解けて、座り込みそうになるのをなんとかこらえる。気を取り直したリアは、先生の元へ用事を聞きに行ったのだが、先生からは「特に呼んでいない」と言われ、これまた首をかしげる事態となったのだった。



「やっぱりあいつら悪いこと企んでたんだ! 良かった、リアを守れて……結界に反射の力を掛ける方法、すごく便利だな~」


 リアが去った後、誰もいないはずの場所から、そんな声が聞こえて来た。


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