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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第二章

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第1話 王立セントラル学院

 

 レスト子爵家に引き取られてから一年ほどが経ち、公式の記録上でリアは八歳になっていた。レスト家で受けた養女としての教育はとても厳しかったが、元来真面目で賢いリアはそれを全て吸収し、王立セントラル学院の入学試験は主席で合格した。そのことを喜んだのはチェリーだけで、ミシェルや使用人達には様々な嫌味を言われたが、それでもリアには十分だった。

 王立セントラル学院は八歳から入学でき、貴族家出身の子供が大半だ。平民はリアのような魔力保持者が貴族の養子となって入学する以外にはいない。


 入学式では、新入生代表の挨拶を本来は主席合格のリアがするはずが、今年は第三王子が入学するということもあり、教職員の意向で第三王子が挨拶をした。

 リアは内心ほっとしていた。目立つのは嫌だし、この学校では穏やかに過ごしたかったからだ。しかし、ほっとしたのも束の間、すぐに暗雲が立ち込め始める。


「ほら見て、アレが例の……」

「嫌だわ。平民のくせに魔力保持者というだけで貴族に取り入って……」

「レスト家も可哀そうに。ミシェル様が言っていたけれど、家では偉そうに使用人に指図しているらしいわよ」

「なんて恩知らずなのかしら」


 そんな陰口が絶えず、ここの学院には家で一番リアを虐めているミシェルが先輩として君臨していることを思い知ることになった一日だった。これからの毎日を想像してリアの表情は暗くなり、そんな様子を見て勝ち誇ったようにミシェルが声を掛けてきた。


「リア、くれぐれも学院ではお友達にひどいことはしないようにね。私にならいいけれど、どうか他の人には……ね」


 他から見えない時にはニヤリと口角を上げて見下した笑いを向けるのに、人が集まって来ると、途端に悲しそうな表情をしてそんなことを言った。それを聞いていた生徒達はヒソヒソとリアを見て陰口を叩き、ミシェルに対しては同情して気遣う言葉をかけている。


(ここにも私の居場所はないのかしら)


 初日から謂れのない中傷にさらされリアの心は傷付き、それを隠すように固い殻が心を覆うのを感じる。


(チェリーは他のクラスだし、何かあっても迷惑になるから頼れないわ。学院は幸い広いし図書館もあるもの。私はとにかく勉強に打ち込みましょう)


 学院の寮に入り、もうあの幸せなクッキーは届かないと思っていたリアだったが、翌朝目覚めると、机の上にクッキーが置かれており、リアは固くなった心がほっこり温かくなるのを感じる。


(誰か分からないけれど、すぐ側に味方でいてくれる人がいるんだわ。今日も頑張ろう)



 そんな様子をトアは遠くから見ていた。昨日の入学式以降のリアを取り巻くひどい状況に怒り心頭で、ひどいことを言った生徒の髪をチリチリにする魔道具を作成しようとしたトアだったが、そのことをアンドールに話しに行くと、速攻で止められた。「まだ初日だから様子を見ろ。とりあえずリアが元気になるようクッキーを届けてこい」と言われ、思い直したのだ。


 アンドールはそのことを振り返りながらピオットに話していた。


「……ってことがあってな。トアの魔法は規格外だからな。多分やろうと思えば髪をチリチリになんて簡単にやっちまいそうだよな……」

「ああ、トアなら事も無げにやるだろうね。貴族にとって身だしなみは当たり前の尊厳でもあるし、プライドの体現だからね。髪をチリチリなんて……ははは、笑いごとじゃないけれど、多分トアには事の重大さが分かっていないよね」

「ああ、平民にとってはアクシデントでチリチリなんて、たまに起こることだしな。はっきり言って俺にもそこまで重大ってのはピンとはこない。でも、平民が貴族の髪を燃やしたらどうなるかは想像できるな」

「まぁでも、トアなら貴族をも返り討ちにする力がある……」

「そうなんだよな。何か信じられないけれどなぁ、あのトアがなぁ」

「アンドールは小さい頃から知っているんだよね?」

「ああ、トアとリアが捨て子の赤ん坊として孤児院に来た時から見てきたからな」

「あの髪に瞳の色……」

「ああ、平民にはいないんだよなぁ」

「でも、あんな色はこの国の貴族でも見たことないな」


 二人はトアの銀髪に緑と青のオッドアイを思い浮かべ、ふぅーっと息を吐いた。


 ここススリード王国の王家は代々火魔法の使い手で、金髪や赤い色の髪が特徴的だった。火魔法は王家の象徴ともなっていて、火の魔法が使えるということは王家の血が濃く流れていることを表している。火魔法は他の魔法より優性で、両親が火魔法の子どもと他の属性の子供との間に生まれた子供は必ず火魔法となる。孫の代までは火魔法が優勢だが、その先は様々に変化することが知られていた。理由は魔力の強さや先祖の魔法属性にもよるようで、実際には生まれてみないと分からないことが多い。


 ススリード王家には現在、正妃の子の第一王子、第二王子と、側妃の子の第三王子がいるが、第三王子であるダストン・ススリードはこの日、大層不機嫌だった。


「なんでこの俺が元平民なんかと婚約しなくてはいけないんだ? なあ、誰か答えろ!」


 怒りを買いたくなくて、第三王子付きの侍従は押し黙るしかない。事の発端は、珍しく父王であるダンデリアム・ススリードに呼ばれ、ワクワクしながら会いに行ったことから始まった。王の書斎で言われたことは「学院に主席で合格したリア・レストと婚約しろ」ということだった。元平民で子爵家の養女となったリアのことは、主席合格ということでダストンの耳にも入っていた。元平民で孤児ということだが、自分とは関係ないと思っていたから気にしてもいなかったが、婚約者になると言われ慌てた。


「そんな! 父上、元平民のしかも孤児ではありませんか!」

「元平民というだけで、今は貴族だ」

「しかし、そんな血筋の劣った者を婚約者にするなんて! 受け入れられません!」

「リア・レストは優秀だと聞いている。座学だけではない、魔力量も貴族としての振る舞いも高い能力を備えていると。それにこれは決定だ。国力強化の為にも優秀な者が王家には必要だ」

「私が優秀であれば、婚約者は他の貴族でも問題無いではありませんか! 孤児の平民など……」


 その後は最早取り合ってもらえず「お考え直しください!」と叫び続けたが、王の側近たちにズルズルと部屋の外まで連れ出されてしまったのだった。



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