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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第18話 屋敷での悪意と不思議な贈り物

 

 ここ最近、孤児院では肉料理が頻繁に出されるので子供達は大喜びだ。


「それにしても、トアがこんなに狩りが上手だとは知らなかったわ。小さい獣をこんなに沢山捕って来るなんてすごいわ。でもくれぐれも森の奥には入っちゃダメよ!」

「えへへ、うん、小さい獣なら森の入り口で罠を仕掛ければ捕れるからね!」


(熊なんて見せたらびっくりを通り越して心配されて怒られそうだから、小さい獣を罠で捕ったことにしているけれど、本当は大きい獣のほうがお肉は沢山なんだよね……)


 そんなことを考えながらも、なんとなく一人前に孤児院に貢献できているのが嬉しい。リアに渡す物は色々考えた結果、町で買ったクッキーと自作の魔道具にした。先日の魔道具の構造が分かったお陰で、リアに魔道具を渡すことを思いついたのだ。ただし、一見魔道具には見えないように、何の変哲もないような四角い蓋付きの木の入れ物になっている。中には買ったクッキーを入れてあるのだが、実は底の部分に少し空間があって、魔道具の装置を入れている。



**

 リアはレスト子爵家に連れて来られてからというもの、孤児だと蔑む侍女たちからの嫌がらせで、満足な食事もできない毎日だった。また、レスト家の長女ミシェルは、普段は学校の寮にいるものの、休日や長期休暇には家に帰って来て、トアと顔を合わせる度に暴力や嫌味を浴びせてくる。日を追うごとに、元から細いトアの身体は一層やせ細り、痣の絶えない毎日を送っていた。早朝から夜まで勉強以外の時間は家事を押し付けられ、空腹と身体の痛みに耐えながらなんとか生きていた。もう何度ダメかと思ったか分からない。それでもなんとか心を保っているのは、この家に唯一、自分の心配をしてくれる次女のチェリーがいたからだった。チェリーは自分のせいではないのによく「ごめんね」と謝ってくれ、心配してくれていた。リアが「全ての貴族が同じではない」と思えているのは、チェリーというたった一人の良心によるものだ。


(ふぅ……トア、私は今日もなんとか生きられたよ。トアに会いたい……。トアに会うまでは死にたくない……)


 そう考えるだけで疲れた身体は深い眠りにつく。最近は日中でも「抓られても殴られてもいいから眠りたい」というほど身体に限界がきていた。



(もう朝か……またひどい一日を耐えなくちゃいけない……)


 こういう思いで毎朝が始まる。

 しかし、この日は少し違う始まりだった。

 普段はほとんど何もない机の上に、小さな木の箱が置いてあったのだ。


「なんだろう。誰かが部屋に来たのかな。珍しいな……」


 そう思いながら箱を開けてみると、中に可愛らしい花の形をしたクッキーが入っていた。一瞬、虫でも入った嫌がらせのクッキーかと警戒したリアだったが、小さなメモが入っているのに気付いた。


「この木の箱を水に沈めると温かいお湯になります。お風呂に使ってみてね」


 孤児院にいた頃にトアは文字を書いてはいなかった為、リアがその文字でトアだと気づくことはなかった。


「お湯になる……?」


 半信半疑なリアだったが、まずはクッキーを恐る恐る口にしてみる。


「お、いしい……」

 慢性的な空腹感に慣れていたお腹が急に主張し始め、枯れたと思っていた唾液が出てくる。思わず夢中になってクッキーを五枚も食べてしまった。


「こんなに食べちゃった! チェリーにもあげたいし、明日の分も取っておきたいのに!」


 風呂も水のみ使うことを許されていた為、毎日寒くて苦行の時間だったが、今日はそれが覆された。

 半信半疑で水を張った桶に木の箱を入れてみると、ものの数十秒で温かいお湯になった。


「すごい……これは魔道具じゃないかしら? 魔道具なんてこの子爵家にはあるのかも分からない……高価なものよね。体誰が……?」


 湯に浸かると、すごい幸福感に包まれた。


「あったかい……」


 誰もいない殺風景な屋根裏部屋が温かい場所に感じられて、自然と涙が頬を伝う。


「誰か分からないけれど、本当に有難うございます。こんな幸せな気分にさせてもらって……」



 午前中の勉強の後、廊下でチェリーに会うと、チェリーが周りをサッと見回してこっちこっちと手招きする。


「あのねリア、なんか今朝部屋に誰かがクッキーをくれて……」

「あっ、私も!」

「リアも? ああ、よかった!」

「うん、チェリーと分けようと思ってたの!」

「私も!」


 ふふ、と二人で笑う。チェリーにはメモ書きは入っておらず、クッキーだけだったことが分かった。チェリーからは「絶対に誰にも見つからないようにね」と言われた。



 そんなやりとりを遠くから見ていたトアはニッコリする。


「ああ、よかった! あんなに喜んでくれて! 頑張って獣を狩った甲斐があったなぁ!」


 嬉しくなると、またリア達の喜ぶ顔が見たくて、トアは度々透明化と転移を駆使してクッキーを届けに行った。家の人達はリアの部屋に近づこうとしないので配達は簡単で、慣れてくるとパンやハムなども差し入れ始めた。

 謎の差し入れが届くようになってから、リアの健康状態は改善し、活力が戻ってきていた。何よりチェリー以外にも味方がいるということが、リアに勇気を与えていた。ミシェルや侍女達の当たりは変わらず酷かったが、最近調子が良さそうなリアの様子に首をかしげたり、悔しそうにしていることが増えていた。


 そんなある日、リアは珍しくレスト家の当主ダーミー・レストの部屋に呼ばれた。


「来年から王立セントラル学院へ行け。学校で学べることを光栄に思え」

「はい」


 会話はそれだけだった——。



これで第一章が終わりとなります。明日から第二章突入です。

一日一話投稿で頑張ります。トア&リアの奮闘を見守ってください♪


沢山の方に読んでいただき、ブックマークもしていただき、とっても嬉しいです!

本当に有難うございます(*^^*)

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