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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第17話 なんか嫌な人がいたので……

 

 そろそろリアに渡す物を買えるくらいのお金が溜まったかな、と思ってアンドールにお金の入った袋を見せると、血相を変えた顔で慌てて「しまえ!」と言われてしまった。


「えっ、なんかダメだった? 少なすぎる? 買えない?」

「いや、そうじゃない、多すぎるんだ! お前、リアと買い物に行ってただろう? 大体どれくらい必要かとか分かってなかったのか?」

「うん、お金はいつもリアが管理してくれていたし、野菜とかしか買ってないから、貴族様の物は高いだろうと思って……」

「貴族様の物って……お前何をリアに渡すつもりなんだ?」

「う~ん、ネックレスとか?」

「あ~、ネックレスはやめとけ」

「なんで?」

「リアの環境は良くないって話してくれたよな?」

「うん」

「それなのに、いきなりリアがネックレスなんて持ってたらどうなる?」

「なんで持ってるんだろうって思う」

「そうだろ? 最悪盗んだんじゃないかとか思われかねないし、ネックレスを誰かに取られる可能性もある」

「そんなの嫌だ」

「そうだな。じゃあ、リアだったら何が欲しいか、自分がリアだったら何が欲しいか考えてみろ」

「うん……………………食べ物かな。あと薬。叩かれたり、家事で手が荒れたりするから」

「ああ、それはいい考えだな!」

「うん、ありがとう兄ちゃん!」

「ただ、絶対に見つからないように持っていくんだぞ。あまりトアからだと分からない方が本当はいいんだが……」

「うん、私からっていうのは言わないつもり。とにかくリアを少しでも助けたいだけだから」


 ルンルンしながらいつも通り透明化&浮遊魔法で窓から出て行ったトアだったが、少し離れた所から話し声が聞こえてきて、その会話から「アンドール」という言葉が聞こえてきた為、その場で停止した。


「……本当にムカつく事態だ。平民のくせに。魔獣討伐で功績を上げたのだって、俺達が魔獣を運んできてやったからだろうが!」

「そうですよ。サイラウス様が倒そうとしたのに、アンドールが邪魔をするから」

「サイラウス様のような高貴な方の盾になって死ぬならともかく、まるで英雄とでもいうような扱いで、まだ静養中とか言って。サボっているだけじゃないですかねぇ」

「ああ、本当にあそこで死んでくれたらよかったのにな」

「「まったくです」」

「そうだな、サボっているんだろう。この際叩き起こしてやるか。ちょうどいいアイテムも手に入ったしな」


 そう言ってニヤリと笑うと、サイラウスはポケットから何やら黒い球体を取り出す。


「それは、何ですか?」

「ふふふ、どうも害虫駆除用グッズの不良品らしい。ちょっと威力が強すぎて、人間にまで被害が出るからと魔道具審査で落ちた代物だ」

「さすがサイラウス様。そのような珍しい品まで手に入れられるとは」

「それを、アンドールの部屋にぶち込んでやるんですね?」

「ははは、ちょっとした害虫駆除だ」


 そこまで聞いたトアは、透明化のままアンドールの部屋の前まで瞬間移動した。


(まず部屋全体に結界魔法発動して……で、あんな悪い奴が持ったままだと怖いから、あれを取っちゃおう。投げた後ならゴミだよね? ゴミならもらってよし!)


 と、そんなことを思っているとも知らず、サイラウス達三人がアンドールの部屋の前までやって来た。透明化しているトアの存在には全然気付いていない。



 コンコンコン……


「はい、どうぞ」


 ガチャ……カゴン!


「「「う、うわっ!!」」」バタバタバタバタ、ガゴン、ドガン!

「「「うぐっ……ギャー―――……」」」


「……えっ、何だ? 誰だ?!」


 トアは笑いたいのを必死に堪えていた。何とも間抜けな図であった。やってきた三人は、ドアを開いて魔道具を放り込もうとしたが、トアの結界に弾かれて跳ね返った球体の魔道具は廊下を転がった。

 焦った三人は、魔道具を避けながら走ったものの、魔道具やお互いの足に引っ掛かり廊下に無様にすっ転び、その隙にトアは魔道具を回収し、収納空間へ仕舞ったのだった。


(後であの魔道具について調べてみようっと。それにしても確かあの人、高貴って言われてたけど、貴族様かな? 貴族様ってあんなに間抜けなのかな? いや、なんか弱っちかったし、多分あれはインチキ貴族様なんだろうな。だって魔法も全然使ってなかったし)


 その日の夜、孤児院の皆が寝静まってから、こっそりベッドを抜け出したトアは、また森に来ていた。


「ギン、いる?」

「ワオン」

「あ、良かった。あのね、今日、こんなのを拾ったんだけれど……」

「ワオオオオン!」


 トアが収納空間から例の球体魔道具を取り出そうとすると、ギンが焦ったように吠える。


「あ、ごめん、やっぱり危ない物だった? 収納空間から出さない方がいいってことだよね」


 しばらく考えていたトアだったが、ふむと頷くと神妙な顔になる。


「あのさ、この空間の中に入ってみようと思うんだけど。というのもね、この中だと時間が止まってるみたいでしょ? だから、この中でなら魔道具のこと調べられるかなって思ったの。どう?」

「ワオ~ン」


 まるで「やれやれ仕方ないな」とでも言いたげにギンが吠える。


「じゃあ行ってみよう!」


 ギンと一緒に入ったその空間は、とにかく見渡す限り真っ白で、隣にいるギン以外は何も見えない。実はギンも白っぽいので、目や鼻の黒い部分がなければ何もいないと思ってしまったかもしれない。


「なんか、色々入れてるのに全然見えないね。あの袋に入ったお金とか……」


 そう言いながら稼いだお金の入った袋のことを思い浮かべた途端、いきなり目の前に袋が現れる。


「わっ、びっくりしたぁ。あ、そういうこと?」


 それから、色々と思いつくままに空間に収納したものを思い描いてみると、その度にその物が現れた。


「えっと、じゃあ、あの黒い球体魔道具!」


 ポンと目の前に浮かぶように現れたその球体を手に取ると、ギンと一緒にしげしげと見つめる。


「なんか害虫駆除をする物だけれど、人間にも効いちゃうんだって」


 その後、その魔道具に集中しているうちに、リアの住んでいる貴族様の家を遠くから内部まで見られたことを思い出し、それと同じ感覚で魔道具を見つめてみた結果、魔道具を分解しなくても中の構造が分かるようになった。不思議なことに、内部の各パーツやその作用は、まるで説明を受けているように理解できる。


「ああ、そういうことなんだ。ここにある魔石の作用をここの魔石が補完してることに気づいていないんだ、きっと。だから作用が強く出ているんじゃないかな。でも、これを作った人は魔石の作用する力をどうやって見ているんだろう? 私はなんとなく感じるけれど、皆こんな感じなのかな? それとも、もっと立派な機械とかで測ってるのかなぁ……?」


 ぶつぶつ呟くトアの隣で、ギンが眠そうにワフンと泣いた。


「あ、ごめんねギン! もう眠いよね? なんとなく分かったし、もう戻ろうか!」


 その後、無事にその空間から抜け出したトアは、ギンと別れて孤児院に戻った。


(なんか魔道具っていう物の構造も理解できたし、もしかしたらリアに何か作れるかも?)


 そんなことを考えながら充実感に包まれて、あっという間に眠りについたのだった。



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