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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第16話 お金稼ぎ

 

 日々、森で魔法の特訓をしているトアにとって、森の渓谷でのポヤの花採取は、特に苦労しなかった。途中、トアの気配に気づいたギンも合流して、二人で楽しく道中の獣を屠りながら進む。トアとギンの存在を知っている獣は近づいてこないし、出会っても襲ってこないが、知らない獣は無謀にも挑んできて瞬殺されていた。

 最近、町に出歩くことが増えたトアは市場で売られている物にも詳しくなっており、実はこの森で日々倒している獣の毛皮や肉、牙などが売れることに気付いていた。


「だからねギン、今日はなるべくこの獣たちを持って帰ろうと思ってるんだ。でも、こんなにどうやって持っていけばいいのかな。なんかこう、見えない収納袋みたいなのがほしい。でっかくて重くないやつ。なんか転移の応用でいけるような気がするんだよね。空間を飛ぶんじゃなくて、その空間を利用するような……」


 そう言うとトアは転移の感覚を思い出し、全身に魔力を巡らせる。そのまま感覚を保ちながら、転移の瞬間に感じる浮遊感のみをその場に留め、その感覚を周りに広げてみる。


(う……ん、ここに収納できるんじゃないかな。試しにこの熊に触れてそのまま空間へ転移させるように熊にも浮遊感をつなげて……)


「できた!!」


 最初はその感覚を一つずつ確かめながらの作業で時間がかかったが、慣れてくると触れたものをすぐに収納空間へ飛ばせるようになった。試しに取り出してみたが、空間内に集中すると中にある物が分かり、その空間に手を入れて触れると現実に移動させることができた。


 そんなことをしながら、渓谷の断崖絶壁に辿り着くと、そこには白く輝くユリに似たポヤの花が絶壁を覆っていた。


「綺麗だね……孤児院の皆にも見せてあげたいな」


 そう呟きながら、絶壁へ浮遊魔法で移動すると、何の苦労もなく花を採取していく。


「そういえば、どれくらい採ればいいのかな? よく分からないけれど、とりあえず五十本くらいでいいかな。足りなければまた来ればいいし」


 まるですぐそこの店へお遣いに来るようなノリで言うトアの様子をピオットやアンドールが見ていたら、盛大にため息をついたかもしれない。



 その日の夕方、アンドールの部屋に帰って来ると、トアは早速収納空間から花を一本取り出した。


「ちょっと待て。今どこから花を出した?」

「あ、そうなの、さすが兄ちゃん気付いてくれた? これ便利なんだよ! こうやって保存できる空間でね、転移魔法の応用みたいな感じなんだ。それに、花も萎れてないし、空間に入れた時のままだ!」


 ピオットは特に反応せず無言のまま宙を見つめている。


「それでね、何本くらい必要?」

「え、まだあるのか?!」

「うん、沢山あったし、分からなかったからとりあえず五十本くらい採ってきた。まだ必要ならすぐに取って来るよ。今度は場所も分かったし、獣も十分採ったから転移で行けば一瞬だしね」

「一瞬……ポヤの花……」


 ピオットは宙を見つめつぶやいている。

 結局ピオットの様子が戻ったのは、それからしばらくしてからだった。何かを頭の中で整理したらしく、その後は迷いなくキビキビと数本のポヤの花をトアから受け取ると、慌ただしく自分の部屋へと戻って行った。


「ポヤの花一本から十回分の超回復薬ができるんだね! あんなに簡単に採取できるんだから、もっと町に出回ってもいいのに。それともこれも貴族様用なのかなあ?」

「トア……この花のことも絶対に他の人に話すなよ。この花を持っているって知られたら、貴族様に狙われるからな」

「うん、分かってるよ。なんか最近話せないことばっかりになっちゃった」

「まあ、リアも頑張ってるだろうから、お前も頑張れ」

「うん、そうだね。あっ、それで思い出した! リアに何か贈り物したいんだけど、お金がないでしょ? だから獣を売ろうかと思って何体か持ってきたの。えーっと、これとか……」

「あっ、いい、いい、分かったからここで出すな!!」

「そう? 見せた方が早いかと思ったんだけど……」

「大丈夫だ、十分分かったから」


 空間からムズッと引っ張り出された熊の頭を見た時点でストップをかけたアンドールは英断であった。


「で、それを売りたいんだな? だったらまず解体屋のじいさんのところに持っていけ。但し、それは俺が倒したことにしろ。それからいきなり空間から出すんじゃないぞ、近くの誰もいない路地で荷台に出してから運んでいくんだ。俺が手紙を書くから、それを見せれば大丈夫だろう」

「うん、分かった! ありがとう兄ちゃん!!」


 解体屋のじいさんビオは、アンドールからの手紙を渡すとニコニコしながら荷台にこんもり積まれた熊などの獣の解体作業に取り掛かってくれた。じいさんは部下の若者達を総動員して解体してくれたので、思ったよりも早く解体は終わった。


「じゃあ、これが解体料を差し引いた分じゃ。金額が大きいから気を付けて持っていくんじゃよ」

「うん、気を付ける! ありがとう、ビオじいちゃん!」


 トアがキラキラした目でそう言うと、ビオの目は三日月型になる。


(それにしても、近年稀にみる状態の良さだったのぉ。アンドールが腕を上げたのか? それにしても、まだ子供じゃというのに、あんまりめんこいから店の若い者がチラチラ見とったわ。ありゃあ大人になったら大変じゃわい)


 そんなことを思ったビオだったが、まさかそれからしょっちゅうトアが訪れるようになるとは思ってもみなかった。毎回、討伐の難しい大型の獣を数体、多い時には十体以上持ってくる。しかも、状態はまるで今倒したかのように新鮮で、無駄のない急所への攻撃によりほぼ全ての部位が売り物になるという最高の品質だった。おかげでビオの店としても売り上げが伸び大助かりであった。


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