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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

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第52話 久々の学校は……!?

 

 あれから一か月ほどが経ち、様々なことが落ち着いてきたため、トアはルーラル・アラキス魔法学校へ今日から戻ることにしていた。


「リーニャやルミオン、ミードル先輩たちはもう先に学校に戻っているし、私だけちょっと出遅れちゃったなぁ。色々、忙しかったから仕方ないけど……クラスの皆も元気にしているかな~」


 そう考えた所で、最期にリーニャに会った時に言われたことを思い出す。


「そういえば、『学校に来る時は色々気を付けて』って言ってたっけ。気を付けるよって返事したけど、もう周りの国も王様たちが頑張ったお陰で落ち着いてるし、大丈夫だと思うんだよね」


 そう軽く考えて久々に学校の門の前に転移して来たトアは、突然聞こえて来た地鳴りかと思うような轟音に「ビクッ」と身構え、咄嗟に結界を張った。しかし——。


「ぅわぁあああ! 本当だ!!」

「今のが、転移魔法??」

「えっ、うそぉ! 私、その瞬間見逃した!!」

「すごい美少女……!」

「トア様ぁ! こっち向いてください!!」

「あっ、皆、道空けて!! リーニャ様たちが通られるわ!」


 一気に色々な声が聞こえて来て、トアの目は真ん丸になる。

 次第に喧噪に耳が慣れて来ると、トアの目に飛び込んできたのは、門の上にデカデカと掲げられた横断幕であった。


『世界の英雄トア・ウェスリッド様、お帰りなさい!』


 その文字を読んだ途端、トアの顔は真っ赤になった。


「ええーっ! 何これ??! 皆、何で私の苗字をもう知ってるの??!」


 トアが驚きの声を上げると、馴染みのある声が聞こえて来る。


「トア、だから言ったでしょう? 気を付けてって。こうなるだろうって思ってたわよ。私たちの時だって凄かったんだから」

「リーニャ! それに、ルミオン、ミードル先輩! 何かすごいことになってるね」

「他人事みたいに言ってるけど、全部トアのことだよ」


 ルミオンがやれやれと言った仕草で笑ってみせる。


「とりあえず、人だかりがすごいから、トアは転移魔法で寮に飛んだ方がいいかも」


 リーニャがそう言ったので、トアはリーニャたちも一緒に転移することにした。

 シュンッとトアが消えると、再び爆発的な歓声が上がる。そんな中——。


「あ、あれっ? トア? 皆? ええーっ! ひどいよ、何で僕だけ??」


 取り残されたミードルが悲痛な声を上げた所で、再びトアがシュンッと現れた。


「ごめん、ミードル先輩! ちょっとびっくりしちゃって。じゃあ、転移するよ、引っ付いててね!」

「グフッ!」


 トアの言葉に、急になぜか嬉しそうにニヤけるミードルの腕を掴んでトアは転移したのだった。



 『なぜここまで皆がトアを熱狂的に歓迎しているのか?』そして『少し前にやっと正式にウェスリッド公爵家の籍に入ったのに、こんなに早く皆がその情報を掴んでいるのか?』その答えをリーニャが簡潔に説明した。


「全ては、ピーコロ先生のせいね」

「え? ピーコロ先生の??」

「そうなの。今回の戦いについては、大まかには知られていたし、トアという少女が中心にいることは、帝国の情報誌に載っているし、少し調べれば分かることだったのだけど、その時点では孤児院の場所は伏せられていたし、トアという名前の少女は他にもいるから貴女だという特定には至っていなかったのだけど、魔法学校へ取材に来た人に、ピーコロ先生が話してしまったのよ!」

「ええーっ、何て話したんだろう? 大袈裟に話したのかな……」

「まぁ、記者に乗せられたのね。トアのことや魔法のことについて、素晴らしいだの研究費も良ければ援助しますだの言われたみたい」

「あー、何か想像できるかも」

「まぁ、その後ミケーさんにこってり絞られたらしいわ」

「それも想像できるねー」

「まぁ、そういうわけでルルド王国や周辺国でも、貴女は有名人なのよ。私も想像の上を行ってて驚いているわ」


 リーニャがそう言うと、ルミオンやミードルも頷く。


「僕たちも、学校に戻ってから遠巻きに見られてる感じだよ」

「僕も、学年が皆と違うから、何か一人ぼっちで居心地が悪い」


 ミードルが苦笑しながらそう言った。


「いいじゃない、ミードル先輩は女子生徒にモテて。婚約者決めもそろそろでしょう?」

「い、いや、僕は好きな人いるといえばいるし……」

「えっ? 何て言ったの? 大きな声で言ってちょうだい」

「ナンデモナイデス、リーニャ先輩……」


 そんなミードルの様子をルミオンが怪訝な顔で見ており、トアはクスクス笑う。


「皆はいつものまんまで、なんか安心したよ~。あ、リーニャは家とか大丈夫だった? あんまり家にも帰ってなかったでしょ?」

「あー、家ね……実はね、私、家を出ようと思って、既に手続きをしている所なの」

「えっ!?」

「ああ、別に今回のこが無くてもいずれそうしようかなって、何となくは考えていたのだけど、今回カミドさんの所で魔道具作製をしたりして、市井でも暮らしていけるかもって自信がついたの。元々、実家とは折り合いが悪かったし、マルカのこともあったから……」

「え、マルカさんのことって、あの呪いのこと?」

「ええ、多分、あれは姉の仕業なのよ。まぁ、トアに解呪してもらってあの呪いは本人に返ったから、姉ももう悪いことはできないと思うわ」

「大丈夫? リーニャ無理してない? 浄化もできるけど……」

「いいのよ。そもそも呪いは普通見えないわ。本人の魔力が多かったりして、なんらかの方法で解呪されれば本人に返るものでしょう? 悪い力を使うなら、そういう覚悟はしていて当然なの。マルカは呪いに掛かっても私に心配をかけまいと気丈に振舞っていたわ。それに、今はトアの魔道具が他国でも手に入ったりするのだから、姉が気付けばそういう手段でも症状は抑えられるしね」


 そう言い切ったリーニャの顔に迷いはなかった。


「うん、分かった。でも、もし何かまずい事態になったらすぐに呼んでね! リーニャのためなら行くから」

「ありがとう、トア」


 まだ学校生活は何年もあり、卒業後のことは分からないトアだったが、親友のリーニャとの関係はその後もずっと続くのだという予感があった。


(リーニャは貴族様じゃなくてもやっていける。でも、もし困ることがあったら助けよう。どんな時でも助けられるように、もっと魔法も勉強も頑張ろう)


 長年の目的だったリアの境遇が改善できた今、トアの心には新たな目標が宿るのだった。


 それから暫く経っても、学校では「トア様!」というむず痒い扱いが続いた。初めは担任のロジャー始め教師たち全員がトアの事を「偉大な」だとか「賢者のお血筋である」という大仰な言葉を付けて呼び、その度にトアは止めなければならなかったのだが、ロジャーが普通に接するようになると、他の教師たちもやっとトアを一生徒として扱ってくれるようになった。

 放課後、クラスの当番でロジャーの荷運びを手伝っていたトアとリーニャに、ロジャーがぼやく。


「はぁ~、それにしても、まさかあの日、編入試験を受けに来たトアがなぁ、まさか世界を救う中心人物だったなんてなぁ……」

「ロジャー先生、それもう聞き飽きたよ! 私はそんなに変わってないんだって!」

「ああ、そうだよな、まぁ、最初からなんというかな……ははは」

「先生はトアの担任なんですから、しっかり立派に先生してください」

「ちょっとハードルが高いな、それは」

「魔法じゃなくて、人としてです」


 トアやリーニャからビシビシ言われ、ロジャーは立つ瀬がないと肩を竦める。


「ああ、そういえば、教師のガルマ・バルザンが正式に解雇になったと報告があったな。あれも、もしかして……」

「あっ、うん、甥のダストン王子の血液で親族を探したら、帝国の田舎の方に潜伏してるのを見つけたんだよね。それでススリード王国の王様の所に送ったんだ。今はダストンの隣の牢に入ってるみたい。なんか、随分やつれてたよ」

「ははは、田舎で潜伏していたのなら、恐らく平民よりも貧しい生活をしていたんだろう。選民意識が高かったから、かなり堪えただろうな」

「沢山のお金と人がいないと満足に生活できないなんて、貴族様って不便だよね。結局、平民よりひどい生活になっているし、何がしたかったのか、よく分からないや」

「そうだなぁ、先生にも理解できないな。でも、トアは貴族様になったんだろう? 生活が変わって大変なんじゃないか?」


 そうロジャーから聞かれたトアは、数日前にリアから届いた手紙を思い出すのだった。



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