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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

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第45話 デイン大陸国

 

 デイン大陸国出身であるフルと弟のリル、そして家族は一時、魔法連合に保護してもらっていたが、ダーガ家の者たちが捕まりブラザリア皇国へ送還されたあたりで、一足先にデイン大陸国へと戻っていた。城にはまだゴウミがいるため、近づいてはいなかったが、ダーガ家がいないことで国民への監視の目は緩んでおり、フルとリルはそこを突いてあることをしようとしていた。


「兄ちゃん、こっちの情報屋さん協力してくれるって! 最近つまらなかったから、すごい情報をくれて嬉しいって感謝してくれたよ!」

「良かった! こっちも上手くいった。これなら、すぐに広められそうだ」


 フルは以前、帝の孫であるルオから言われたことをリルにも伝え、二人はそれを実践しようとしていた。


「僕たちデイン大陸国の民が心を取り戻していく……そのためにできることをやるんだ。きちんとした作法の祝福でなくても、一人一人が自分の国は素敵で誇れるものだと想像するだけでいいとルオ様はおっしゃった」

「うん、それならいつでもどこでも誰でもできるよね! それに、兄ちゃんが書いたこの記事を読めば、皆の心に希望が湧いて来るよ!」


 フルが情報屋へ持ち込んだ記事には、デイン大陸にやってきた異界人が自分たちの国のみならず、他国でも非道な行いをしていたが、今回、他国や異界までもが一丸となって協力した結果、その勢力の大部分を捕えることに成功したことが書かれていた。そして、その過程でオドアイ様が復活した事や、女性版のオドアイ様まで救世主として現われたことなども書かれている。更には、女性版のオドアイ様とルオは深い友情で結ばれており、デイン大陸にも明るい未来が来ること、そして、国民一人一人がその未来を想像し、デイン大陸国の民の誇りを今一度思い出すことが、ルオ様の願いであると締めくくられていた。


 数日後、情報屋によって、その記事はデイン大陸国全土の情報誌に載った。

 監視や統制が厳しい時には、そのような記事を載せることはできなかった為、その情報誌の発行自体が、異界人が捕らえられたという証左となっていた。人々は、その記事を何度も繰り返し読み、近所の者同士で確認し合っては、ルオの言葉を実行していった。中には、危険を冒して正しい作法で祝福を行う者も現われ始めたが、これまでのように捕らえられることはなく、疑いを持っていた民の中にも希望が芽生えるのに時間はかからなかった。



**

 デイン大陸国の城では、ゴウミの元に今日もドルクがついており、たまに訪れるセド家の治癒師から薬湯などを受け取っては、邪険に追い返すということを繰り返していた。

 その晩も本日最後の薬湯を持って来たセド家出身のミハは、ドルクが自分を睨みながら「今日も変わったことはなかったか?」とぶっきらぼうに聞いてきた時、一瞬ドキリとしたが、平静を装い「特に変わりありません」と答えた。


(ドルクがゴウミにつきっきりで、この部屋から出ないことが幸いだ……)


 城内はこの日、大陸全土で一斉に刊行された情報誌の話題で持ちきりだった。この城にいる三名のセド家の者は異界人ではあるが、拉致されて無理やりに連れて来られた者たちで、この大陸の民を脅したり傷つけたりする行為を見ると顔をしかめ不快感を露わにし、影で傷付いた者たちをこっそり治癒するなどの行いをしていた。その為、城内で働く者たちはセド家の者たちに対しては、友好的に接してくれていた。ここに連れて来られる際、言語習得を各段に早くする魔道具で強制的にこの地の言語も習得させられており、意思疎通に困らないことは、後から考えれば幸いだった。情報誌の記事はセド家の者たちの耳にも入っており、具体的な名前は出ていなかったが、異界人で捕らえられたのはダーガ家の者たちなのだろうと推測していた。

 部屋に戻ったミハを、同じくセド家出身のケナとビムが心配した顔で迎える。


「お帰りミハ、お疲れ様。大丈夫だった?」

「ドルクは何か気付いてた?」

「ただいま。ドルクはいつも通り変わったことはないか聞いてきただけだった。多分、何も気付いてはいないと思う」

「そうか、良かった。ビムと話して予想していたんだけど、もし記事が本当だとすると、ルーラル・アラキス・ブラザリア様が生きていらっしゃって、それで皇国と連絡をとってくださったってことだよね? だって、オドアイ様に関するこの地の伝承を見聞きしたけど、容姿も魔道の力もルーラル様しか浮かばないもん。ね、ビム?」

「うん、もし本当にそうだとすると、僕たちにも希望が出て来る。きっと向こうの大陸が落ち着いたら、こっちに来てくれると思うんだ。だって、ここにはゴウミがいるし」

「そうだね、もし仮にルーラル様がブラザリアに行ったとしたら、きっとミスラギ陛下が動かれたはずだ。あのミスラギ様なら捕らえた者も徹底的に絞るし、そもそも最初にダーガ家が来たのはこの地なんだから、絶対に色々な後始末のためにも調査されるはずだよね」


 ミハがそう言って頷くと、ケナとビムの顔が明るくなる。三人は従兄弟で歳も同じ十五歳だった。たまたま遠出をしていた所をダーガ家に誘拐されたのだ。これまでは、もうこの地でダーガ家に管理されて生きていくしかないのだと絶望していたのだが、ゴウミが臥せり、大陸に散らばっていたダーガ家が突然バール帝国へ行き、これまでダーガ家に怯えて監視役を担っていた者の監視体制が弱まったことで、何か好転してきているように感じていた矢先の喜ばしい情報だった。


 そして数日後、更に明るいニュースが城内を駆け巡ることになる。


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