↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/182

第40話 破滅

 

 カーラの手は皮膚や肉が無くなり骨だけとなっていた。


「え……私の手……う……ぎゃぁあああああ!」


 鳥の断末魔のような高い叫び声を上げたカーラは、ブルブルと自分の両手を見ている。


(カーラから魔力をほとんど感じない……靄は相変わらずだ……)


 ガゴウがカーラの身体に施した魔力回路の拡張は、カーラの身体に甚大な不可を掛け続けていた。既に身体中のエネルギーも枯渇していたところに、更に強力な土魔法を発動しようと魔力を絞り出した結果、肉体が急激に壊れ始めたのだった。


「あ、あああ……あああああがが……ダルゥガザバ……」


 最早、立っていることもできずに、地面に倒れたカーラを、トアは茫然と見つめていた。一度壊れ始めた肉体は、一気にカーラの姿を無機物へと変化させていく。

 そして、完全に骸骨となったカーラの頭蓋骨がカランと地面に当たり、ついに動かなくなった。骨となったカーラは、黒い靄だけを残し朽ち果てていた。


「カ、カーラ様が!! ああ、なんてこと……」


 ペドラの悲鳴が響き渡り、駆け付けて来たビド、ミガ、アグーネの三人もさすがのことに絶句している。


「お父様! お母様!」


 アグーネの声に我に返ったビドとミガは土に埋もれる両親に駆け寄るが、ナドンの鋭い声が飛ぶ。


「三人とも散らばれ! 見えない敵がいる!!」


 はっとした三人は散らばろうとしたが、三人とも足元に突然できた土の塊につまずいて倒れ、その後瞬時に土に覆われてしまった。それを見ていたナドンは真の恐怖を感じる。


(な、なんだあの土魔法の威力とスピードは!? 別々の場所に同じ体積の土を一瞬で操るなど……敵が一人だとすると……化け物……)


 カーラには驚いたものの、ダーガ家の五人を無力化してほっとしたトアは、牢へ戻ると残りの人たちを収納袋に入れていったのだった。


 バール帝国兵は、カーラたちの異様な状況に、自分たちも同じ目に遭うのではないかという恐怖心が芽生え、一人が逃げ出すと残りも我先にと地下牢から飛び出して行ってしまった。所長や牢屋番たちは、戦闘が始まって早々に「巻き込まれては大変」と逃げ出していたため、今やトアの周りには合同軍の兵士と捉えたダーガ家の者たちだけとなっていた。


「ふぅ」と肩の力を抜いたトアは、土に埋もれた五人に近づいて行く。


「ねぇ、おじさん達は、一体何がしたかったの? 違う世界に来て、ずっと前に生きた人の言いなりになって」

「お前に何が分かる!」

「そう、何も分からないから聞いてるんだよ」

「というか、姿を見せろ!! 怪しい奴め!」

「はぁ~おじさんたちほど怪しくはないよ。自分たちの姿をよく見てよ」


 そう言いながらトアが姿を現すと、なぜか五人ともトアの顔を凝視して驚愕の表情になる。


「お、お前は!? ル、ルーラル……」

「あー、違うよ……」


 トアが「めんどくさいなぁ」と思ったところで、ルーラルがミスラギとガイルと皇国の兵士たち十名ほどを転移魔法で連れて来た。トアと土に埋もれた五人を見たミスラギたちは目が点になっていたが、「くくっ」と一瞬後ろを向いて笑う。ミスラギたちを見たトアの顔はパッと輝いたが、一方でナドンたちは蒼白になり目をパチパチと瞬いている。


「あっ、ちょうどいい所に来てくれた! さすが!」

「な、な、なぜ皇帝陛下が……!!?」

「あ、あなた! なぜここに……?!」


 ルーラルは面倒を避けるために透明化しているが、トアには魔力の気配で分かっていた。その気配の方に向かってトアは頷く。

 トアの元へやってきたミスラギはトアに微笑むと、今度は一転して凍てつくような視線をナドンたちへと向けた。異界の言葉で発するそれは、意味は分からなかったがナドンたちの表情を見れば、その先の未来は絶望的なのだということが分かる。


「お前たち、こんな所まで来て……帰る家がまだあるとでも思っていたのか? 呑気なものだな……」

「へ、陛下、これは……」

「誰が口を開いていいと言った?」

「!!」

「お前たちの代でダーガ家が終わるとは……ははは、偉業を成したではないか……」

「そ、そんな……お、おのれ、いつか……」

「いつかは来ないぞ」

「ヒッ」


 説明を終えたミスラギとガイルは、再びトアにニコッと微笑む。透明化したルーラルから土魔法の解除を依頼されたトアは、さっと魔法を解いた。すかさず皇国の屈強な兵士たちにがっちりと両側から固められ、五人は成すすべなくうなだれている。


(さて、これでここは終わりかな……)


 ミスラギは、ナドンたちを送還するためブラザリア皇国へ転移することになっており、トアの方を向いて手を振っていた。トアも手を振りながら何気なく前方のカーラの屍を見たのだが、そこで違和感に気付く。


(あれっ、さっきまで黒い靄が見えていたのに、いつの間にか無くなってる……)


 さっと辺りを見回したトアは鋭い声を上げた。


「あっ、あそこに黒い靄!」


 意味は分からなかったルーラルやミスラギたちも異変が起きているのだと察知し全員、トアの指差した方を見るが、靄を見ることはできない。カーラの靄と思われるそれは、フワフワと漂っていたが、トアが指差すと急にトア目掛けて飛んで来た。トアは冷静に浄化魔法を発動するが、危険を察知したのか、急にミスラギたちの方へと方向転換をする。


(ここで逃げられたら厄介!)


 トアは、カーラの靄より早く転移魔法でミスラギたちとの間に立ち塞がると同時に高速で魔力を多量に使い広範囲かつ高威力の浄化魔法を一気に発動した。トアの転移や浄化のスピードはあまりに早く、カーラの靄は方向転換する間もなく、今度は浄化魔法を真正面から浴びる。


「ウグワァアアアア、オノレ、ウウウガァアアアアア……アア……ア……」


 最後に獣のような絶叫を響き渡らせて、カーラの靄は消滅した。


「トア、今のは……」

「うん、カーラの靄……ちゃんと消えたよ……」

「そうか……これ以上、人が傷付く前に、消せてよかった」

「……そうだね」


 トアは、死してなお人を傷つけようとするカーラのことを純粋に恐ろしいと思い、理解できないことに戸惑ったものの、ルーラルの言葉を受けて「大切な人たちが傷付かなくて良かった」と前を向くのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。