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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

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第22話 近づく脅威

 

 その後は、皇帝とカーラが倒れたことで、動揺した牢の所長が日光浴の時間を切り上げ、囚人たちを牢に返した。トアは近くにルーラルの気配を感じると、「じいちゃんの所に集合しよう」と言い、牢に戻ってからすぐにベージェルの元に転移したのだった。


 トアがベージェルの部屋に現れると、先に着いていたルーラルがベージェルに先ほどあった事を話しているところだった。


「……それで、とりあえず水魔法を鼻から少し奥の方まで詰めたんだ……ああ、トア、先に説明しておいたよ」

「うん、ありがとう! あっ、あれ水魔法だったんだ! 確かに鼻だけに詰めるなら目立たなくていいね」

「よく来たのぅ、トア」

「うん。それでね、ダルーガが倒れた後、例の黒い大きな人型靄がダルーガの身体から出て来たの! すごいエネルギーを出してた」

「えっ、ガゴウ兄さんの怨念が? あの地響きがした時だね……しかし、それってダルーガはガゴウ兄さんに操られていたってこと?」

「多分、そうだと思う」

「こちらの言葉も普通に話していたし、言葉も理解するのか……」

「うん。あの黒い靄の力はかなり強いと思う。多分、浄化にも時間がかかりそうだし、その間に逃げられるかもしれない」

「それは厄介じゃのぅ……対策を練らんといかん」

「うん。あと、カーラも少し黒いけど、こっちは何も出て来なかった」

「呪いを掛けられてるわけではなさそうだとすると、人間性が邪悪に染まってそのような色に見えているのかのぅ……」

「前からひどいこと沢山してる人だったけど、あんなのは出てなかったと思うんだよね」

「何か性質を変えるようなことがあったのかもしれんのぅ」

「それで、今回のことはダルーガたちとしては失敗でしょ? またすぐに何かして来そうで、どうしたらいいかな……」

「そうじゃな。救出作戦の決行は明後日じゃ。ガゴウの靄に気付かれてもいかんからの、ここはダルーガとカーラを見張るしかないのぅ。しかし、誰かの生命が脅かされそうな時は、なるべく気付かれずに今回のように守るのじゃ」

「「うん」」



**

 一方、ガゴウはダルーガの部屋に浮遊して、ベッドに寝ているダルーガの顔をじっと見つめ、一人懐疑的な事象に首を傾げていた。


「この男の鼻や口から水が垂れていたと、先ほど医者が言っていた……あれは水魔法だったのか? しかし、囚人は皆枷を付けている……兵士か、もしくは牢屋番たちの誰かか? そういえば、以前反抗的な人間がいたと、こいつが微かに記憶していたな……しかし、そんな手練れがあそこにいるだろうか。そもそも牢屋番は魔法が使えない者ばかりのはず……魔道具か……」


 ガゴウがそう考えていた時だった。ドアがノックされ、デイン大陸から客人が着ている旨が伝えられる。


(ああ、あいつらがようやく到着したか……)


 ガゴウはベッドに寝ているダルーガに再び憑依すると、薄ら笑いを浮かべ応接室へと向かうのだった。


 応接室に入ると、そこには顔を伏せたまま片膝を突くダーガ家の者たちがいた。ガゴウが人払いをすると、代表でダーガ家当主のナドン・ダーガが挨拶をする。


「ガゴウ・ダーガ・ブラザリア様、ダーガ家五名参上しました。ゴウミの失態、申し訳ございません。何なりとご命令を」

「よく来た。ゴウミにあのような事をした者については探しているところだ」


 ガゴウの声がダーガ家の人間の脳内に直接轟き渡る。


「誠にありがたく思います。しかし、あれはゴウミ自身の気の緩みに他なりません。愚息の失敗は私が挽回します。どうぞ、ガゴウ様の本懐を遂げるべく我らをお使いください」

「さすが、我が子孫、ダーガ家の当主だ。ダーガ家の者がこの地へ来て一国を盗り、この国の人間を使って事を成すという作戦にも意味はあった。お陰で何を潰すべきかがよく分かった。この世界の人間には反吐が出る……ルーラルのことを賢者だなどと……まぁ、ブラザリアの人間も同じだがな。我はこの存在になって確信したのだ、やはり呪術こそ魔道の上位であると。ルーラルなどを崇める愚かな輩には、その身にダーガ家の呪術の素晴らしさを刻んでやるのだ」

「はっ」


 そこへアガトとグドルがやって来てガゴウに何やら伝え、それを聞いたガゴウの顔がニヤリと酷薄な笑みを湛える。


「どうやら、ルーラルの子孫である女の家に物資を運んでいる不届きな奴等が見つかったようだ……我はそちらへ行ってくる。お前たちはここの地下牢の者たちを皆殺しにしろ。ルーラルの子孫を擁護する厄介な奴等だ。呪術がいかに素晴らしいか知らしめるために派手にやれ。ただ、最下層のルーラルの子孫のウィズダブラという老いぼれがいる牢には、何か仕掛けがある可能性がある。牢屋番などにからくりを聞き出せ。ああ、それからこの城にカーラという女がいるが、牢に行くにも顔が効くはずだから使うといい」

「はっ」


 指示を終えたガゴウは、カーラや牢の所長へも伝令を飛ばすと、再びダルーガの部屋に戻る。そして、ダルーガの身体をベッドに横たえてから靄となって抜け出すと、アガトとグドルと共にルルド王国へ向かった。


 ガゴウが去った後、ナドンたちダーガ家の五名は早速、カーラへの面会を希望した。既に伝令から用件を受け取っていたカーラへはすんなり話が通り、そのまま一行は地下牢へと向かうのだった。


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