第13話 ダーガ家
リルから祖父ヌシの伝言を聞いたルオは、暫く目を瞑り聞いた言葉を自分の身体に染みこませるよう繰り返していた。
「『守りの祝福をルオとその最愛に授ける。永い眠りの地にて待つ。祝福の本質を広めよ』うん、リル確かに伝言を受け取ったよ。有難う」
「はい、良かったです。早くお伝えすることが出来たのはトアのお陰です。トア、有難う」
「そうだね、トアがいなかったら僕たちはまだ何の希望も見出せずにいただろう。トア、僕の前に現われてくれて有難う」
そう言うとルオはトアをぎゅっと抱きしめた。これには、トアばかりでなくリルも赤面してしまう。
(うわっ、ルオ様大胆! あっ、トアが珍しく驚いて赤い顔してる! これはルオ様の方が上手だ……はぁ、でもお二人ともお似合いだなぁ~)
リルはトアたちと同じ十歳という歳にもかかわらず、何故が微笑ましくその光景を見ているのだった。トアはというと——。
「ル、ル、ルオ?! 私、そんな大したことしてないし、だから大丈夫だから! 私もルオに出会えたこと嬉しいし、だからおあいこだよ!!」
「ふふ、トアの顔が赤い……ふふふ」
「そ、それは良かったね! ……ってルオ、何か私をからかってるでしょう?! リルも何か変な顔してる! もーっ! 今はそんなことじゃなくて、ええっと、そう、ルオのお祖父さんからの伝言! ルオは意味が分かったの?!」
「ああ、ふふふ、なんとなくね。でも、それにはやっぱりまたトアの協力が必要かな」
「そうなの?」
「うん。バール帝国貴族の救出作戦が終わったら、トアと一緒に行きたい場所があるんだ。まぁ、ロマンチックな場所ではないけどね」
「ろまんちっく……あ、食べられないから必要ないよ!」
「ぶふっ、何それ?」
「アンドール兄ちゃんに教えてもらったの」
「そうか……アンドール兄ちゃんにはいつか文句を言わないと……」
「えっ?」
「いや、何でもないよ。それより、見つかるといけないから、リルはもう帰った方がいいね」
「はい! ルオ様、どうぞご無事でいてください。ルオ様に祝福を」
「うん、リルとその家族に祝福を」
無事にヌシからの伝言を伝えることができたリルは、晴れやかな顔で戻って行ったのだった。
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その頃、デイン大陸国の城には、大陸の各地へ監視兼調査に行っていたダーガ家の者たちが、緊急の連絡を受けて城に戻って来ていた。最初に駆け付けたダーガ家の当主でありゴウミの実の父であるナドン・ダーガは、ゴウミが横たわるベッドの脇にいた。治癒魔法の使い手であるセド家の者数名が治療に当たっているが、未だにゴウミは目を覚ましていない。
「お前にこんなことをした奴は、どこにいるのだ……」
そこへドアをノックする音がして、次々とダーガ家の者たちが部屋へ入って来た。
「ゴウミ兄上……」
「あなた、一体、何があったのです? この子をこのようにした何者かがこの大陸にいるのですか?」
「今、その場にいた者を呼んでいる。静かにしろ」
しばらくすると、遊戯の場にいたダーガ家の使用人が三名部屋へと入って来た。皆、並んでいるが顔や腕に包帯を巻いており、カタカタと小刻みに震えている。
「来たか……何が起こったか説明しろ」
「は、はい。では、私から……」
途中、ダーガ家の者たちがブツブツと何かを言う度に、恐怖でどもってしまったが、使用人たちはなんとか説明を終えた。
「すると、なんだ? そのフルとかいう単なる小僧に高貴なるゴウミがこのような目に遭わされたとでもいうのか? 魔力も持たぬただの小僧に?」
「は、はい……」
「いい加減にしろ!」
「うぐっ……はっ……うぅ……」
ナドンが怒鳴ると、使用人の一人はガクンと膝から崩れ落ち、苦しそうに床に倒れた。
「しかし、何かが起こったことは事実……そして、それにそのフルとリルという兄弟が関わったのも事実だろう。なのに、お前達はそいつらの捕縛もしていない……しかし、幸運だなぁ、お前たちは。その兄弟を連れて来ることで命が助かるかもしれぬのだから。さっさと連れて来ればだがな……さっさと行け!」
ナドンがそう言うと、立っていた残りの二人の使用人は我先に探しに行こうとドアへ向かった。
——バシュッ、バシュッ——
「「ぐわっ、ぐぅぅ……」」
ナドンが使用人たちの背中へ呪機を放ったことで、二人は床に崩れ落ちる。
「ああ、もう時間切れだ……そもそもお前たちの説明など当てにしていない。そんなことも分からないのか? 愚鈍な者は我がダーガ家にふさわしくないということをその身に刻むために呼んだのだ……」
ナドンはガゴウの怨念が数日前にやって来てあらかた伝え聞いたことを思い出していた。
(フルという者は元々魔力持ちではないとのこと……しかし、ゴウミは魔力圧で飛ばされたようだという……とにかくその兄弟を見つけ出さなければならないが、ガゴウ様やアガトとグドルでもまだ見つけられていない。ガゴウ様も忌々しいルーラル・アラキスのことを思い出すのかイライラされていた。作戦も早めよと仰せだ……)
そしてナドンは皆の方を向く。そこには妻のペドラ、三男ビド、四男ミガ、長女アグーネがおり、ナドンの次の言葉を待っていた。
「皆、いよいよご先祖であるガゴウ様の無念を晴らす時が来た。ゴウミやザウミがいないのは残念だが、明日バール帝国へ行く」
「あなた、いよいよですわね」
「ああ、我々の代でガゴウ様の大いなる目的を果たせるとは、これ以上ない栄誉だ。我らが先祖偉大なるガゴウ様が味わった苦しみ、ルーラル・アラキスの子孫に味わわせてやる。そしてこの世界にはびこるその血筋を根絶やしにしてやるのだ」
ナドンの目は血走り、涙が滲む。そこには狂気をはらんだ怨念が宿っていた。




