第12話 リルからルオへ
結局、ルーラルの提案によりアラキス家に転移で移動してきた四人は、リラの寝ている部屋に集まっていた。リラの身体の傷はトアの治癒魔法により綺麗になっているが、長年閉じ込められ満足な食事も与えられていなかったと思われる身体は、瘦せ衰えて衰弱していた。
リラのか細くなった手に、そっと自身の手を重ねたミスラギが辛そうな顔で呟く。
「あんなに天真爛漫だったリラが……こんな姿になってしまって……」
リラが起きるといけないと、すぐに部屋を出たミスラギは、珍しく怒りを露わにしていた。
「ダーガ家の罪は重い……法治国家であることを歯がゆくも思うが、だからこそできることもある。リラだけでなく沢山の者たちが犠牲になったということは明らかだ。今後は、その一つ一つを詳らかにするぞ……」
「「はい」」
ミスラギが怒りと共に絞り出すように言った言葉に、カミウもガイルも覚悟を持って頷くのだった。
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一方、無事に転移で自分の世界の牢屋へと戻ったトアは、まず時刻を確認していた。
「うん、体感の時間と大してずれてない。もうけっこう遅い時間だけど、まだじいちゃん起きてるかな……今日のうちに話しておきたいしね」
そう決めると、トアはベージェルの元へと転移した。
「じいちゃーん!」
「うわっ! おおっ、トア、無事に戻ったか!」
トアを異界に連れて行くことはルーラルが伝えていたようで、ベージェルの顔が安堵に包まれる」
「うん、じいちゃん知ってたんだね! あっちの世界の王様に会ったよ。いい人だった、言葉は分からなかったけどね、ニシシ」
「そうか、かなり話が進んだ様子じゃのぅ。とにかく無事で良かった」
「ありがとう、じいちゃん。それでね、あっちの王様たちも協力してくれることになったから、それを伝えにきたの。今度の話し合いの時に紹介できるんじゃないかなぁ」
「おお、それは良いことじゃ。異界人を捕えた後のことも気になっておったからのぅ。ルーラルは一緒には戻らんかったんじゃな?」
「うん、向こうでもダーガ家が色々悪いことやってたみたいで、そっちの協力もするみたい。話し合いの日が決まったら、ルーラルに伝えに行くよ!」
「うむ。じゃあ、すぐに予定を立てるとしようかのぅ。それと、少しだけトアがどんな冒険をしたのか教えてもらうとしようかの」
「うん!」
そうして、各方面への連絡をぱぱっと済ませたベージェルは、寝る前にリラックスできる良い香りのする茶を用意すると、再びトアとの静かな夜のひと時を楽しむのだった。
ベージェルの元を去る際に、ベージェルが思い出したようにトアに伝える。
「そうじゃった。何やらフルの弟のリルがトアに話したいことがあるようじゃ。明日にでも、リルの所へ顔を出してみてくれんかのぅ?」
「うん、分かった! じゃあじいちゃん、またね、おやすみなさい」
「おやすみ、トア」
そうして翌日、トアはリルの元を訪れていた。リルは現在、家族と共に魔法連合が用意した宿泊施設に滞在している。宿泊施設内の職員からトアの訪問の連絡を受けてやって来たリルは、トアの顔を見るとパッと明るくなった。
「トア、来てくれて有難う!」
「うん、何か話したいことがあるって?」
「そうなんだ。僕、どうしてもルオ様に直接会って伝えたいことがあるんだ」
「ルオかぁ、聞いてると思うけれど、ルオは牢屋にいるんだよね。私は連れて行けるけど、危険がないわけじゃないから、一応お父さんお母さんに言った方がいいと思う」
「うん、大丈夫、もう話してあるから。兄ちゃんも行ったことあるって聞いてたし、ルオ様のお役に立てる事なんだったら行ってきなさいって言ってくれた」
「そっか、じゃあ大丈夫そうだね。早速行く?」
「うん……トアってさ、本当に転移のノリが軽いよね……」
こうして早速トアはリルを連れて、ルオの牢へと飛んだのだった。
フルを連れて来た時と比べればリルは静かだった。でも、それは驚いていないわけではなくて声が出ないほど緊張していただけである。
(ここが、バール帝国の地下牢……薄暗くて不気味だ。こんな所にルオ様が……)
目の前の鉄格子を見ながら、牢に到着したばかりのリルはそんなことを感じていた。その後ろで、嬉しそうな声が上がる。
「トア!」
「ルオ、来たよ! 今日はフルの弟のリルを連れて来た!」
「あはははは、まるで遊びに来たって感じだ。でも、トアの声を聞くと明るい気持ちになるよ。そして、初めましてかな、リル」
暗がりから姿を現した黒髪に青い瞳のルオは、こんな場所でありながらも気高い雰囲気を纏っていて、リルは一気に身が引き締まる。
「は、はい、ルオ様、お初にお目にかかります。フルの弟リルです」
「ははは、そんなに固くならないで。トアが連れて来たということは、何か重要な話があるんだね?」
「はい。ルオ様に伝言を預かっています」
「誰から?」
「帝、ヌシ・ウヌ・デイン様からでございます」
「何?! お祖父様に会ったのか?」
「はい。しかし、実際にお会いしたというより、夢でも見ていたような感覚でした……」
「そうか。全て聞こう」
「じゃあ、私はその間、どこかに行ってようか?」
「ううん、トア、一緒に聞いてほしい」
「そう? うん、分かった」
リルはルオのその言葉に驚いていた。
(ルオ様にとってトアは大切な存在なんだ……)
ルオがリルに向かって頷くと、リルはヌシが現われた時のことを詳細に語り始めた。




