↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/191

第10話 ミスラギ

 

 カミウからの報告を今か今かと待ちわびていたブラザリア皇国皇帝ミスラギ・ケイナ・ブラザリアは、カミウたちが来たという報告を聞くと、自室で待ち構える。城の中でも奥にあり、厳重に警備されている皇帝の寝所は、ミスラギにとって内密な話をするのにうってつけの場所だった。勿論、ここへ通す者はほんの一握りである。


「陛下、いらっしゃいました」


 護衛の者の声があり、ミスラギが許可を出すとカミウとガイルが入って来た。


「陛下、お待たせしました」

「ご苦労だった。二人とも楽にしてくれ。それで、どうだった?」

「はい、まず結論から申し上げますと、行方不明になっていた者たちは、そのほとんどが屋敷内に捕らわれていました」

「やはり、そうか……」

「はい。しかし、拉致や監禁はずっと以前から行われていたようで、人の遺体や骨と思われるものが敷地内から出てきています……それから、リラもいました」

「な……に……生きて、生きているのか?!」

「はい。なにぶん年月が経っており成長していますが、記憶にあるリラの面影があります。ただ、とても……酷い状況でした。地下室の更に下の日の射さない部屋につながれていて、目は視力を失い白くなっており、身体中におびただしい傷跡がありました」

「ぐっ、なんということだ……なんと惨いことを……。しかし、生きていてくれたか…………。あと、どれくらい……生きられるのか?」


 ミスラギは治癒魔法が及ぶ範囲も理解しており、だからこそリラの状態が絶望的であることが分かり、心が抉られる思いでカミウに問いかけたのだった。


「心の傷は長くかかると思いますが……傷は全て治癒されました」

「全て!? 目は……視力は?」

「はい、大丈夫です。昔のように綺麗な緑色の瞳に……」

「そんなことが……?! ガイルがやってくれたのか?」


 カミウの言葉にミスラギは、ガイルの方を向く。しかし、ガイルは首を振り——。


「いいえ、奇跡の御業を持つ者の助けがありました」

「奇跡……一体、誰だ?」


 その問いかけにカミウが口を開く。


「まず、その方たちをこちらにお呼びしても良いでしょうか?」

「たち? ……ああ、構わない」


 ミスラギは、カミウがここに呼ぶと言ったことには驚いたが、信頼できる者だと理解しカミウにブラザリア皇国の紋章の入ったペンを渡した。カミウは少しお待ち下さいと言うと部屋を出て行った。


 皇帝の寝所を出ていくつか部屋を隔てた先の廊下に出ると、カミウは右手を上げる。すると、数秒後にトアとルーラルが目の前に現れた。その途端、護衛の兵士たち十名ほどが一斉に「うわっ」と声を上げ剣の柄に手を掛けたが、カミウがミスラギから預かったペンを見せて「大丈夫だ」と言うと、兵士たちは構えを解いたのだった。

 兵士たちのうちで一番年長のベミスは、突然現れたトアとルーラルに驚いていた。特にルーラルを見た瞬間、その容姿が今なお語り継がれている消えた第四皇子ルーラル・アラキス・ブラザリアの絵姿に酷似しており、そんなルーラルとトアが並ぶと神秘的で、剣の柄に手を掛けながらも圧倒されていたのだった。


(一体、この方たちは……そしてどこから……もしや、これが転移魔法だろうか……)


 ブラザリア皇国でも、転移を可能にする魔道具は発明されているが、実際には膨大な魔力が必要で、一般に実用化はされていない。しかし、何もない空間からいきなり現れたことを考えれば、転移しか思い浮かばなかった。



 カミウは驚きに目を見開いている兵士たちに背を向けると、元来た扉を開き、二人を中へ連れて行く。

 皇帝ミスラギの私室をいくつか通り抜けると、トアが感嘆の声を漏らす。


「うわぁ、これがこっちの世界の王様の部屋なんだぁ! 見た事ない置物とかあって面白い! ルーラルもこのお城に居たんだよね?」

「うん、物のデザインは変わったりしているけど、部屋の配置とかは変わってないんだなぁ。僕の頃も、ここらへんの部屋が皇帝の私室だったよ。ただ、昔は今みたいに結界は張られてなかったと思うから、魔道具も発達したんだなぁって感慨深いよ!」


 ルーラルは先刻、カミウに受けた説明を思い出し、興奮した様子でそう言った。ルーラルとトアがわざわざ部屋の外の廊下に転移したのもそれが理由だった。ただ、結界の魔道具も転移ほどではないにしろ、魔力の消費が激しく、一般には出回っていないということだった。


 そんな話をしていると、いよいよミスラギの寝所に繋がるドアの前に到着した。



**

 寝所でガイルと共に待っていたミスラギは、思ったよりも早くノックの音が聞こえて「おやっ」と思う。


「陛下、カミウです。失礼します」


 そう言って入ってきたカミウに続き、背の高い青年と少女が入って来る。その二人を見た途端、ミスラギは思わず椅子から腰を浮かせた。


「君たち……いえ、貴方がたは……」

「初めまして。ルーラル・アラキス……ブラザリアです。こちらは、トアと言います」


 こちらの言葉が話せないトアに変わってルーラルが紹介する。


「やはり!! なんということだ! ははは、あっははははは! カミウ、それにガイルも……ふふふ、まったくお前たちは人が悪い」

「私たちの驚きを陛下にも共有していただきたかったもので」


 驚きのあまり笑い出してしまったミスラギに、カミウがしれっと答える。


「それにしても……本当に貴殿はルーラル殿なのだな……」

「はい」

「ああ、私から言うのも変な話だが、どうか対等に話してくれないか? 歴史としても、貴方があの代の皇帝になっていた可能性は高いのだから。私にとっては先輩のようなものだ」

「それはないと思いますが……では、お言葉に甘えて。えーっと、僕のことはルーラルと呼んでもらえたら嬉しいな」

「分かったよ、ルーラル。では、私のこともミスラギと。それで、その類い稀な美貌のお嬢さんは、ルーラルの……?」

「ああ、いや違う違う、娘じゃない」

「そうか……いや、オドアイまで一緒だからね」

「トアは別の世界から来たんだ。僕が転移した先の世界だよ」

「……なんてことだ……まさか、異世界人とは……瞳の色などはさておき、この世界の人間と変わらなく見える」


 感動しているミスラギに、カミウが説明する。


「陛下、トアが重症だったリラの傷を治してくれたのです……」


 カミウはその時の詳細な様子をミスラギに語った。聞き終わったミスラギは、きょとんとして皆の表情を見ているトアに微笑むと近づき、その手を取る。


「トア……有難う……」


 トアは異界の言語ではあったが、それが先ほどカミウに言われたのと同じ音だと分かるとニコッと笑い頷いた。幼いながら美しい緑と青の瞳を間近で見たミスラギは、「神の使いのようだ」と感じるのだった。


 そこからは、ルーラルも交えてダーガ家の失踪やあちらの世界に呪術が持ち込まれていること、ゴウミについての謎などについて報告されたのだが、そのあまりの内容に、さすがのミスラギも言葉を失い、その後は険しい顔でしばし目を瞑り沈黙することとなるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。