↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/191

第8話 驚きの治癒魔法

 

 トアがルーラルに連れられて転移した先は、どこかの家の部屋だった。目の前に男性が二人と女性が一人おり、皆同様に驚いた様子をしているが、男性のうち一人は涙を流していた。

 どういうことか分からずに目を瞬いているトアに、ルーラルが話しかける。


「ごめん、トア。説明も無しに連れて来てしまったけれど、ここは僕が元いた世界のブラザリア皇国なんだ」

「えっ、ここ異界?!」

「うん、実はひどい怪我をしている女性がいるんだけど、トアに治せるかどうか見てみてほしいんだ」

「異界の人……私の世界の人と身体同じかな?」

「僕が見る限りでは、魔力の質に多少違いがあるけれど、機能的にはほとんど違いはないんじゃないかと思う」

「うん、分かった。その人どこにいるの?」

「ちょっと待ってね、家の人に説明するから」


 突然、ルーラルに似た両目の色の違う少女が現われ、聞きなれない言語で話し始めたことに驚いていたチェーリエたちだったが、ルーラルが説明すると更に驚愕に目が見開かれた。カミウがトアの手を握りトアに話しかけたが、トアは理解できずに困惑する。


(どうしよう、すごく真剣に何か言ってるみたいだけど分からない……理解できたらいいのに…………理解……あ、もしかしたら……)


 トアはこの前ルーラルが、トアの記憶を見ていた時のことを思い出していた。


(ルーラルは、記憶を見る時は、遠視を脳に使う感じって言ってた。脳のどこを見るかで変わるって。脳のどこかに言葉が分かる部分があるかも……)


 トアはすぐにそれを実践してみる。しばらく脳の色々な部位に集中して遠視を発動していたが、ある部分を見た時、何かが伝わってきた。


(あ、これは……感情かな……言葉じゃないけど……うん、なんとなく分かる……私への気遣いと期待……かな)


 そう感じたトアは、カミウの目を見るとコクンと頷いてみせた。カミウの目が優しくなり、目尻に涙が光る。


 その後、トアは怪我人のいる部屋へと案内された。ベッドの上に横たわる女性の姿を見たトアは、その女性がこうなった理由は分からなかったが、そのひどい状態に怒りが込み上げてくる。


(こんなに躊躇いなく真っすぐな傷……多分、自分でやったんじゃない……)


 トアは魔力が吹き出ないように「フゥー」と長く息を吐いて感情をなんとか抑えると、早速女性に手を翳し始めた。トアの手が光り始めると、ルーラル以外の三人は驚き、食い入るように手元を見つめる。トアが手を翳している場所にある古傷がだんだんと薄れていくように見え、三人は息を飲んだ。


 静寂の中、トアの治療はいよいよ包帯が巻かれた目に移る。包帯を外し、瞼をそっと持ち上げたトアは、ぎゅっと拳を握ると、そのまま無言で手を翳した。暫く翳しては瞼を持ち上げて確認し、ひたすらそれを繰り返していた。


(目が白くなって機能が失われてるみたい……肌もすごく白い……一体、この人に何があったんだろう……)


 気になりながらも、トアはその女性が良くなるように気持ちを込め懸命に治癒に専念した。

 しばらく経った頃、トアが「ふぅ!」と息を吐き出し、四人の方を振り返る。


「多分、治ったと思う!」


 言葉でなく、トアのその表情から意味を悟ったカミウが、トアに駆け寄り手を握るとそのまま自分の額に当てる。


「〇□◇……」


 言葉は分からずとも理解できたトアは、カミウに微笑みながら頷いた。



**

 リラは、もう長いこと暗く重い世界の中に沈んでいた。身体も心も凍り付き、暗闇に支配され自分は死んだと何度も思っては、まだ生きているのだと絶望する。そんな長い長い年月の中、だけど、たった一つ、昔の楽しかった頃、共に居た二人を思い出すことは、絶望を少しだけ軽くする術だった。


 最初は「なぜ?」を繰り返し続け、「いつか」と希望を抱くこともあったように思う。しかし、一年ほど経つとそういう考えは自ら消していった。


 ある時、ひどく身体の状態が悪かった時に、リラは珍しく夢を見た。優しい誰かが居て、穏やかな世界に包まれている夢。幼い頃にいた二人とも違うその人は優しく、リラにとって特別で……幸せな日々の中、その優しい人と居ることは当たり前で、ずっとそんな日々が続くと思っていた。しかし、その人は自分から離れて行ってしまった。もっと一緒に居たかった……自分も連れて行ってくれたら良かったのに……。だけど、最後に見せたその人の笑顔は歪で、痛いほど悲しみが伝わって来て、そんなことは言えないまま自分は「またね」と微笑んだ——。その日は起きたら、珍しく涙が頬を伝う感触があり驚いた。

 それからも、時折、そんな夢を見た。そんな日の朝は決まって悲しくなって嫌だった。とっくに何も感じなくなっている心が、その夢を見ると揺さぶられるのだった。

 そんなリラは、今、これまでとは違う感覚の中にいた。


(私、ようやく死んだのかもしれない……周りも暗くなくて白い世界だし……身体の痛みもないわ。ああ、何だか音も聞こえる……こんな世界なら、もっと早く来たかったわ……)


 そうして、リラは瞼を開いた——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。