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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
最終章

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第2話 リラ

 

 アラキス侯爵家の当主であるカミウ・アラキスは、現在、厄介な件を極秘に調査していた。公にはされていないが、近年、公爵家やそこで働いている者の行方が分からなくなる事態が発生しており、それは公爵家の威信にも関わることから、皇帝より極秘に調査するようアラキス家に依頼が来たのだった。公爵家と言っても、行方不明者の大半はダーガ家の者で、数名がセド家の者だった。ダーガ家については、当主のナドン・ダーガは特に何も騒いでいないのだが、使用人をしていた男性の両親であるトーチ子爵夫妻から、嘆願がアラキス家に届けられたことで事態が動いた。その両親は、息子のタイルがしばらく帰らず、ダーガ家に聞いた所、ダーガ家にも来ておらず無断欠勤して困っていると言われたという。その後も様々な場所を探したものの見つからず、息子は真面目で無断欠勤するような人間ではないので、アラキス家の魔道具で調べられないかという依頼だった。また、その両親が他の使用人の家族にも聞いてみた所、いくつかの家でも同様のことが起きているということが分かってきている。

 そして、今日はその行方不明の息子を、特殊な魔道具を用いて捜索するということになっていた。


 ダーガ公爵家の敷地から少し離れた辺りに待機していた馬車の中にカミウはいた。同じく馬車の中にいるトーチ子爵夫妻に捜索に使う魔道具の説明をしている。


「この魔道具から出ている二本の棒をお二人で一つずつ握り、魔力を流してください。その後、この装置のスイッチを入れると、お二人の魔力を特殊な信号に変えて発信します。息子さんの魔力の痕跡があれば、その場所に反応し地図上に表れます。それでは順にやっていきます」


 カミウの説明に頷いた二人は魔力を流した。十分な魔力が集まったところで、装置のスイッチを入れる。すると、地図上のある区画に集中して信号が現われた。


「……これは全てダーガ家の敷地内ですね……」

「やっぱり、タイルはダーガ公爵家にいるんだ!」

「ああ、どうか息子をお助けください!」

「そうですね……公爵家の敷地内に勝手に踏み込むことはできません。しかし、他にも行方不明者が出ていますので、その方たちも同様に調べて、結果を皇帝に報告しようと思います」

「有難うございます、アラキス侯爵様。どうかよろしくお願いします……」


 トーチ子爵夫妻は涙ながらにカミウの手を握るのだった。


 侯爵家でありながら皇帝の信任も厚いアラキス家は、権力欲はほとんど無く温厚なことから下級貴族からも絶大な支持を得ていた。普段から魔道具の販売などで下級貴族と接することも多いため、こうした依頼が来ることもしばしばあり、魔道や魔道具を駆使して真摯に対応していた。


 その後、他の失踪者についても同様に調べた結果、予想通りほとんどダーガ家に魔力反応が集中していたため、カミウはすぐに皇帝ミスラギへ報告した。


 調査結果の報告を受けたミスラギは、険しい顔をしたままカミウの方を見る。


「……全て反応はダーガ家か……」

「はい。他の場所には出ていませんので、恐らく敷地内から出た形跡はないかと。ただ、全く反応の出なかった者もいます……」

「そうか……生きていれば、多少なり魔力の痕跡が出るのだがな…………捜査隊の指揮を任せてもいいか?」

「もちろんです」

「すまない。因縁のある相手で、これまでも散々アラキス家は被害を被ってきたというのに……」

「そうですね。しかし、二十七年前のこともあります。これは良い機会かもしれません」

「そうだな……」


 ミスラギは暗い表情のままそう答える。



 皇帝ミスラギは、元々実務に秀でたケイナ家から城に上がった長子だったが、他の三公爵家から上がって来た皇子たちより賢く、それ故話が合う者がいないと次第に口数も少なくなっていった。そんなミスラギを心配して、当時の皇帝が遊び相手に城に招いたのが、アラキス家のカミウとセド家のリラだった。カミウは当時七歳でミスラギと同い年で、リラは三歳だった。最初は面倒くさそうにカミウと話し始めたミスラギは、その日帰る頃には、次回の約束をするほどカミウに興味を持っていた。そして、リラはそんな二人の間で邪魔をするでもなくその美しい緑色の瞳を細めてニコニコ笑い、いつしかミスラギにとっても居て当たり前の存在になっていた。

 しかし、そんなリラは五歳のある日、忽然と姿を消した。リラの母はアラキス家出身で、父はセド家の者だった。両家は必死にリラの行方を捜したが、何日経っても見つかることはなかった。そして、両親はそれから数年後に相次いで他界した。



 暗い表情のミスラギに、カミウが声を掛ける。


「何度も言いますが、リラの家の犬の件は無関係ではないでしょう。何者かが計画的にリラを連れ去ったとするなら殺しが目的ではないはずです」


 リラが失踪する少し前に、飼っていた犬が居なくなったと騒いでいたことがあった。結局、数日後に犬は戻ってきたのだが、以前とは違い気性が荒くなっていたのだった。当時は、過酷な環境で放浪したせいだろうとされたのだが、カミウやミスラギはリラの失踪と関係があると思っている。というのも、リラは犬の涎が止まらず目も虚ろな感じで明らかに異常だと心配していたし、リラの失踪時も犬は行方不明で、その後近くの森で見つかったのだが既に死んでいた。犬の死因は衰弱死で、失踪中の環境が堪えたのだということだったが、不審だと二人は主張したのだった。


「そうだな……」

「はい。当時から私たちの考えは一致しています。リラの魔力量は桁外れに多かった……あと怪しい場所で捜索されていない場所はあの家だけですから」

「ああ……」


 ミスラギは唇を噛みしめると、目を瞑り幼い頃のまま止まっているリラの顔を思い出すのだった。



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