第22話 てんやわんや
その後、城の中はてんやわんやの大騒ぎとなった。異界人はゴウミが倒れた情報が広まらないよう箝口令を敷いたのだが、いつの間にかどんどん広がっていた。異界人たちは慌てふためき、デイン大陸の民は、表面上は心配をしつつ、内心ではお祭り騒ぎのように気持ちが高ぶっていた。
(きっと誰かが立ち向かってくれたんだ! ゴウミを倒してくれた!)
この出来事は、トアにとっては「ちょっとゴウミの魔力圧を試してみた」という程度だったのだが、結果として「異界人ゴウミの攻撃を圧倒して文字通り圧力で倒す」こととなったのだった。
リオの部屋へ戻って来ると、トアは「とりあえず、じいちゃんたちに報告しようかな……リオも危ないから連れて行こう」と言い、まだ混乱の最中にいるリオの腕を掴むと、共に収納袋の中へと入った。
「うわ…………へ?」
「ぉおお! リオ!」
「兄ちゃん? それから……え、ここにもオドアイ様?!!」
収納空間にいたルーラルを見てリオが驚く。トアはフル結界を解除して、リルに「オドアイ様のことは、後からフルに聞いてね」と言うと、ベージェルたちの方を向いた。
「おお、トアよ。大丈夫じゃったか? 何か進展があったようだのぅ」
「うん、ちょっと色々あって……ゴウミに会ったんだけど……」
そう言うと、トアは三人にゴウミに会ってからの経緯を話して聞かせた。リオは、何が起こっているのか分からなかった内容が、トアの視点で語られていくと驚きのあまり、目と口が開きっぱなしになる。トアが話し終わると、フルがまずリルに注意した。
「リル、気持ちは痛いほどよく分かるが、そんなに口を開いてると顎が外れるぞ……」
「ほわいっ……いひゃっ!」
既に手遅れだったのか、リルは上手く話せなくなっていた。
ルーラルも遠視で見ていたようだが、靄人形のことは見えておらず、トアの説明を聞いて驚いていた。そして、感嘆とともにベージェルが口を開く。
「なんと…………ゴウミを伸してしもうたか……」
「うん……そんなつもりなかったんだけど……。結構ひどいことになってたから、治るのに時間かかるかも……あっ、ルーラル、異界には治癒魔法の使い手はいるんだっけ?」
「ああ、僕がいた時代は五大公爵家のうちの一つセド家が治癒に強い家柄だったんだ。僕も実験で失敗した時に度々お世話になったんだよ。意識を失うと、さすがに自分で治癒は掛けられないからね」
「そうだよね! だから私も大怪我しないように気を付けてるんだ。でも、今はルーラルがいるから大丈夫かな!」
「あはははは、そうだね!」
「えへへ」
二人が治癒アルアルのような会話をしているのを、リルはぽけ~っと見ている。
「しかし、その黒い靄人形は気になるのぅ」
「それについては、少し心当たりがあるんだ」
そう言うと、ルーラルは自分がいた時代のダーガ家について話し始めた。
「ダーガ家は呪術を得意とする家系なんだけど、色々と黒い噂が絶えない家でもあったんだ。対外的にもだけど、身内の中でもあの家は争いが絶えなかった。でも、当主だけは絶対の権力を持っていた。他に呪術の才能に秀でている者がいて、何人かで手を組んだら、さすがに負けそうなものだけど、それでも当主は必ず生き残っていた。だから、何か当主だけが持つ秘儀のようなものがあるんじゃないかって噂されていたんだ。でも、トアが見た黒い靄人形の話を聞いたら納得したよ。多分、それが当主の持つ強さの秘密だと思う」
「なるほどのぅ……」
「当時、トアみたいに呪いを見られる人は異界にもいなかったんだ。だから、ずっとそれは謎のままだった」
「なんか、あの靄人形は意思があるみたいだったんだ。自分たちで考えているような感じがした」
「実体がない上に、意思をもっておる呪いだとすると厄介だのぅ……」
その後話し合った結果、トアは牢を抜け出しているということもあり、救出作戦の計画も進んでいることから、一度牢に戻ることとなった。
「じゃあ、デイン大陸の様子はルーラルと私が遠視で確認することにするね」
そうして、戻ることとなったのだが、リルを含めフルの家族にはゴウミから危害を加えられる可能性が高いため、フルとリルから説明をしてもらい、魔法連合で保護することとなったのだった。その際、ルーラルやトアのことを見たフルの家族が「オドアイ様……」と声を失い感動していたのは、言うまでもない。
牢に戻り、例のごとくリアやルオに説明したが、リアからは「何で事後報告なの! まさか海を越えてたなんて!」と怒られ、ルオは心配のあまりトアに傷などはないかを確認する有様だった。
牢で一人静かになったトアは、早速遠視を発動してデイン大陸国の城の様子を見た。しばらくしてゴウミの部屋を見つけると、ベッドの上にゴウミが横たわっているのが見える。周りには医師や侍従たちが沢山集まっていた。
「あれっ、あの靄人形たちどこに行ったんだろう?」
当然、ゴウミの近くにいるのだろうと思った二体の靄人形の姿が見えず、トアは疑問を口にしたのだが——その答えは時空を超えた遥か彼方にあるのだった。
いつも読んでいただき有難うございます(^0^)!
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これにて六章が終わり、明日から最終章です!
本当に、ここまで書いてこられたのは読者の皆様のお陰です。
最終章のプレッシャーをほどよく感じつつ、トアたちの活動をお届けします!
最後までお付き合いいただければ幸いです♪




