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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第六章

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第20話 遊戯

 

「おいっ、準備をしろ!」

「はっ!」


 ゴウミが命令すると、同じく異界人だと思われる白い顔の男たちが、何やら大きな台のようなものを運んで来た。その上に上がるように指示され、むすっとした顔のトアと青い顔をして歯をガチガチ鳴らしているリルが台に上る。二人が上ると明かりに照らされたが、良く見ると台の上には血や染みなどが沢山ついていた。

 男たちは、トアとリル呪機を渡すと「この引き金を相手に向けて引け。引かなければ殴るからな」と脅される。


「ふはははは! 最年少かもしれないな! これは愉快だ! さあ、楽しい遊戯の始まり始まり~」


 一人、ケラケラ笑いゴウミがそう言うと、いつの間にか台の下に集まった五人の男たちが拍手をしながら、「呪機を構えろ!」と怒鳴る。リルはブルブル震える手で呪機を持ってはいるが、構えようとはしない。


「リル、大丈夫だから構えて」


 トアは小声でリルに囁く。聞こえはしなかったかもしれないが、リルはなんとなく伝わったようで、トアの落ち着きぶりに少し落ち着いたのか恐々呪機を構えた。


「それでは、放て!」


 男たちの内の一人がそう叫んだが……トアもリルも呪機を構えたまま動かない。


「何をしてるんだ! 早く放て! 殴られたいのか!」

「ははははは、子供だから扱いを理解できていないのか? まあ、すぐに終わっても面白くないからな」


 ゴウミの相変わらず愉快そうな声にトアの苛立ちは増していく。

 ついに二人の男が台の上に上がって来て、トアとリルの呪機をひったくると怒鳴った。


「ここだ! ここを押すんだ! 今やってみろ、押せ!」


 ——カチッ——


「うがぁ!!」

「なに?! お前!」


 押せと言われたトアは、対面のリルに呪機の使用を強要している男に向けて呪機を放った。


「あ、動くみたいだね」


 トアがそう呟くのをゴウミは黙って聞いているように見えたが、次の瞬間、台の上にうずくまり悶えている男の姿が消えた。


 ——ドガッ——


「ぐわぁあ! ゴ、ゴウミ様……お許しを……」


 リルは目の前でうずくまっていた男が消えたかと思うと、次の瞬間には部屋の壁に打ち付けられ、ゴウミに嘆願し始めたことに驚いた。


(なにが起こっているんだ?! これは、呪術? 魔法??)


 驚くリルの前で、今度はトアの前にいる男が突然台から床に落下し苦しみ始めた。


「使えない奴はいらないな」


 冷酷なゴウミの声が響き、残された他の男たち三人の顔に冷や汗が浮かぶ。


「いいか、お前たち、もしもう一度でも……」

「ねぇ、使えないって何?」

「あ? 誰が駒がしゃべっていいと言っ……」

「ねぇ、聞いてるんだけど? あと、駒って何?」

「……お前、頭おかしいのか?」

「どっちがおかしいんだろ?」

「……やれ……」


 ゴウミが呟くと、トアの纏うフル結界に何かが触れた——。

 しかし、トアの纏う結界は対物理、対魔法、対呪術が施されている為、特に影響はない。しかし、何を勘違いしたのかゴウミが愉快そうに話し出す。


「ははは、動かない所を見ると立ったまま死んだか? まったく、すぐに殺したら面白くないではないか。まぁ、仕方がない。ほら、兄が死んだぞ? どうだ? あはははははは! しかし、お前はすぐには殺さない。苦しむ様が見られなくなるからなぁ。しかし、兄が受けるはずだった仕置きは受けてもらうぞ。あと、お前たちもだ」


 ゴウミはそこまで話した時、奇妙な違和感に気が付いた。普通なら自分の言葉に恐れ慄くはずの男たちが、自分の方を見ていないのだ。不思議に思い、その視線の先を辿ったゴウミは、珍しく驚きに目を見開いた。

 そこには、首や腕をくるくるっと回すフルの姿があった。それを目にした途端、ゴウミのこめかみに青筋が浮かび、何やらブツブツと言い始める。


「△× ×■■◇〇△▽!」


 誰かに話しかけたようだが、返事をする声は聞こえず、リルは困惑しながら見ていた。



 この部屋に入り、顔を上げた時からトアには見えていた二体のソレらは、台に上がった後、男たち二人を吹き飛ばすと、トアにも攻撃をしてきた。

 ソレらは、これまでトアが浄化してきた呪いに近いものだと思えたが、一つ違っていたのは、人型をしており意思があるかのように動いていることだった。そして、トアには黒い靄の人型に見えているソレらが、ゴウミには見えていないようだった。というのも、ゴウミは命令する時も話す時も、ソレらがいる方向とは違う方を向いていたりするからだ。だから、ソレらがフル結界を纏ったトアに纏わりつき、しかしトアが苦しむ様子を見せないことに驚き、今度は打撃を加えるような素振りを見せていても、ゴウミは気付くことはなく、観察して動かなくなったトアのことを死んだと勘違いしたのだった。


 トアが生きていることに驚いたゴウミは、思わずソレらに異界の言葉で話しかけていた。異界の言葉はトアには理解できないが、音自体は聞こえていた。


(あれ、もしかして、ゴウミはこの靄人形が発する音も聞こえないのかな? 一方的に話しかけてる感じ。それと、この言葉……記憶録で聞いたドルクの言葉と同じ音だ。この靄人形も異界の言葉を話すってことは、そっちの世界から来たってことだよね……)


 トアには靄人形が異界の言葉らしきものを話しているように聞こえてくるが、ゴウミはそれに被せるように話しており、不思議に思うのだった。


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