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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第六章

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第16話 祝福の本質

 

 トアと頷き合うと、ルオは予め話す想定をしていた提案をフルにすることにした。


「フル、トアが言う通り、僕も君に諦めてほしくないんだ。僕たちの国の現状は悲惨で、そんな状況が長く続いている今、諦めてしまう者も多いと思う。でも、一人一人が自分にできる小さなことをしたら、何か大きなうねりに繋がるかもしれない。小さなことでいいんだ……皆が自分の命を大切にしつつ、デイン大陸の民の心を取り戻していくんだ」

「……デイン大陸の民の心……それは祝福のことでしょうか?」

「祝福もそうだね。でも、きちんとした作法で祝福をする必要はないんだ。僕たちが自分たちの国は素敵で誇れるものだと想像するだけでもいいと思う」

「想像する……それなら敵にも気づかれませんね!」

「うん。僕たちデイン大陸の民が行う祝福の本質は、その想像する力にあるんだよ。僕はどうにかして、それを民たちに伝えたいと思っている」


 ルオは、かつて祖父であるヌシから言われたことを思い出しながら、そうフルに伝えた。

 フルは真剣な眼差しでルオの言うことを聞き頷く。


「僕は周りにルオ様のおっしゃったことを伝えていきます」

「有難う。でも、まずはフルの安全が第一だよ。君がドルクの行方を捜していると聞いた。それもゴウミの指示なんだね?」

「はい……ドルクが音信不通なので情報を得てくるよう言われています。一週間以内に戻らなければなりません」

「そうか……」

「トアさんが、ドルクについて知っているのですよね?」

「ああ、トアが知っている……そして、僕も知っているんだ」

「そうなのですか?! 一体、ドルクはどこに!?」

「……フル、君はドルクがなぜ魔法学校に行ったか知っているか?」

「いえ、知らされていません。ドルクはゴウミから直接の指示で動いているので……。私が知っているのは行先だけです。ルオ様はご存知なのですか?」

「ああ……まず魔法学校に行くより以前から、ドルクがどのようなことに関与してきたかを話した方がいいだろう」


 そう言うと、ルオはドルクが呪詛を使い、どのようなことをし、また制約で縛ったデイン大陸の者たちにどのようなことをさせているのかを話した。途中、トアも補足する。聞き終わったフルは、目をきつく瞑って沈黙していたが、目を開くとバッとトアに頭を下げた。


「トアさん、申し訳ない……知らなかったとはいえ、デイン大陸の者がそのような事をしでかしていたなんて……なんてことだ……それなのに僕はノコノコやって来てドルクの行方を聞くなんて……」

「フル、僕はフル以上に責任がある立場だし、トアたちにとても申し訳ないと思っている。でも、トアは逆にデインの民を案じてくれた。だから、僕はトアたちに協力してまずはバール帝国の地下牢に捕らわれている前皇帝や貴族たちを助けたいと考えているんだ。そもそも異界人が帝国に入り込んで呪術などを持ち込まなければ、政変も起こらなかったかもしれない。だから、これは僕たちの戦いでもあると思う」

「……そうですね、こちらの国々が今協力して戦えば、異界人を追い出せるかもしれませんね」

「うん、こちらには協力な助っ人もいるしね」


 そう言ってルオはトアの方を見る。トアは「ルーラルのことだね」と思って頷いてみせた。


「でも、フルさんの弟が心配だね……」

「あ、トアさん、どうか僕のことはフルと呼んでください。敬語も無しでお願いします」

「分かった! じゃあ、私も同じでお願い、トアって呼んで」

「うん、分かった」

「それで、ドルクはさっき話した通り捕まってるんだけど、その情報を話すと異界人がドルクを奪い返しに攻撃してくるかもしれないし、かと言ってゴウミに伝えないと、弟が危ないよね?」

「うん……」

「弟だけ守ったとしても、他の人が狙われるだけかもしれないしなぁ……異界人がどんな呪術や魔道具を使うのか、はっきり分かってないからな……フルの代わりに私が行ければいいんだけど……」

「トア、ダメだよ」


 聞き捨てならないことを耳にしたルオは、身を乗り出してトアの目を覗き込みジロッと眉を上げる。


「また、危険なことを考えてるでしょう?」

「えっ、な、何も考えてないよ!!」


 バッと思わず後ずさりしたトアに、更にルオが迫る。


「ううん、絶対に考えてたよ。トアが危険なことをすると、僕の身が持たないんだ」

「わ、わかった……でも、ルーラルにも聞いてみていい? 何か解決できるような魔道具を知っているかもしれないし」

「そうだね……オドアイ様ならなんとかできるかもしれないね」


 と、そこでフルが「ん?」と疑問を口にする。


「あのー、ルオ様……ルーラルとかオドアイ様っていうのは、まさかとは思うのですが……」

「あっ、ああ、そうそうまだ話していなかったね! オドアイ様が生きていらっしゃったんだよ!」

「うっ、ぅえええええっ!!? オドアイ様って人間じゃなかったんですかぁ?」

「なんで、そうなるの??」

「あはははは、フルって面白いね!」


 混乱して斜め上の理解をしたフルに、その後トアとルオは順を追って説明したのだが、今度は「トアは人間?」と言い始める始末だった。


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