第11話 足跡はどこに
作戦会議から戻ったトアは、まずリアに情報共有した。案の定、リアも教科書でも最も偉大な魔導士として登場する歴史上の人物のまさかの復活に、驚き過ぎて開いた口が塞がらず、何度も「うそ……」と繰り返していた。
「賢者様、どんな姿なの? 本の表紙とかに載ってる感じ??」
「うん、そっくりだよ!」
「そうなんだ、会ってみたい!」
「そのうち、絶対に会えるよ。ここに来てもらってもいいけどね」
「それはダメ!!」
そんなやりとりをした後、トアは夕食を牢で済ませると、ルオの牢にも行くことにした。牢にやって来ると、ルオの方もトアが来るのを楽しみにしていたようで、トアが現われると嬉しそうに「トア!」と笑顔を見せる。薄暗い牢屋なのに、ルオの笑顔を見るとトアは景色が明るく輝くように感じて不思議に思う。心もポカポカしてくるようだった。
「ルオ、色々話したいことがあるんだよ。実はね……」
トアが話した内容は、ルオも始終驚きっぱなしだった。
「まさか、オドアイ様が生きておられたなんて……ああ、お祖父様にも伝えられたら……」
「ルーラルは言ってたよ、デイン大陸の人たちには良くしてもらったって。だから、助けたいって。大丈夫、きっとまた平和になるよ!」
「そうだね、オドアイ様がそう言ってくれて、それにトアも力を貸してくれるなら、きっと上手くいく気がする。トア、ありがとう」
「う、うん……」
「どうしたの? 疲れた?」
ルオに覗き込まれると、トアはなんだか落ち着かなくなってくる。
(どうしたんだろう、なんかルオと話すと呼吸がおかしくなる……)
しかし、ルオの方も内心では少し落ち着かない気持ちでいた。
(本当に不思議だ……以前は誰と話しても、また裏切られるんじゃないかと思ってしまっていたのに、トアには何でも話せている。もっと話していたいと思うなんて……それにしても、本当に綺麗な瞳だな……ずっと見ていたいくらいだ……)
表情には出さずに、ルオがそんなことを思っているとは知らずにトアは「ルオは落ち着いてるなぁ」などと考えていた。ここに、リーニャがいれば「ふ~ん」と意味あり気に二人を見たに違いない——。
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ゴウミの元に弟リルを残し、一人デイン大陸を離れたフルはバール帝国に着いていた。少しでも時間を無駄にしたくなくて、フルは着いたその日からドルクの行方を捜し始めた。まずは城に赴き、ゴウミの使者として皇帝ダルーガに会ったフルは、デイン大陸とのパイプ役であるドルクから連絡が無いと伝えた上で、ドルクが確かに魔法学校へ向かったことをさり気なく確認する。しかし、それ以降はダルーガにも報告が来ていないと分かり落胆していた。
(ドルクが実は異界人ゴウミの部下だということはダルーガ皇帝も知らない。だから、これ以上突っ込んだ話は聞けない……やはり、そう簡単には見つからないか……しかし、こちらへの連絡が途絶えたのとほぼ時期を同じくしてダルーガ皇帝へも連絡が途絶えているようだ……魔法学校で何かがあったと考えるべきか……今日はもう遅い。明日、ケイリュウさんたちに話を聞いてみよう……)
翌日、フルは再び城を訪れ、ケイリュウたちのいる部屋へ案内され来ていた。ドアをノックすると、少ししてケイリュウがドアを開いたが、その雰囲気が少し焦っている気がして、フルは気になった。
「ケイリュウさん、久しぶりです。今、お取込み中でしたか?」
「おおっ、フルか! い、いや、大丈夫だ。中にジキたちもいる」
「デインにいた頃と変わらないメンバーですね……」
「今は、護衛ではないがな……」
フルは、ジキ、コクド、メイハクといった懐かしい顔ぶれに安心しつつ中に入る。
「フルがここまで来るとは珍しい。何か大陸であったのか?」
「はい。ご存知かとは思いますが、ドルク様の行方が分からなくなっています……それで、ゴウミ様が業を煮やしておりまして……」
「よく、帝国行きを許されたものだ」
「いえ、弟が代わりにゴウミ様のお側に仕えています。私が一週間以内にドルク様の情報を持ち帰らないと、弟は……」
「そうか、リルが……」
ケイリュウたちは、俯いて唇を噛む。
「残念だが、我らもドルク様の行方は分からないのだ」
「魔法学校へ行ったのが確認されているようですが、どのような用向きだったのですか?」
「それも分からない……ルカッドも一緒だったようだが、城には戻って来ていないようだ。ルカッドはドルク様の指示で動いているので、行方不明なのかどうかも我らには分からぬ」
「そうですか……」
「力になれずすまない」
「いえ、ケイリュウさんたちも私も同じ身の上ですから……ミレイは元気ですか?」
「ああ、他の子らと一緒なので落ち着いている。ただ、ルオ様が連れて行かれた」
「え……なぜですか?!」
「分からない。得られた情報では、城の地下牢へ連れて行かれたらしい」
「無事なんですか? ひどいことをされたりはしていないでしょうか!?」
「ああ、今のところ大丈夫なようだ」
それを聞くとフルは少し落ち着く。
「あの方は私たちデインの者の希望です。あの方を失うわけにはいきません」
「そうだな」
フルは、引き続きドルクの行方を捜すと言って部屋を出て行った。
フルの足音が完全に聞こえなくなったのを確認し、ケイリュウは何もない場所に向かって声を掛ける。
「トア、もう大丈夫だ」
すると、トアが透明化を解いて現れた。トアはちょうどルオのことをケイリュウたちに話すためにやって来ていたのだ。少し話したところでフルが来たため、咄嗟に透明化したのだった。
「ふぅ……緊張したぁ、くしゃみとかできないもんね。ところで、あのフルって人もデイン大陸から来たの? 首に模様なかったね」
「ああ、フルは模様はないが、弟が人質に取られているんだ」
「本当にひどいことするよね……ドルクの行方を捜してるんだね? 誰の命令で動いてるの?」
「すまない、答えられない」
「制約がかかってるんだね……そうだ、さっきの話の続きだけど、ルオは……」
「トア、あまり我らにルオ様のことは話さないほうが良いかもしれない。この先、新たな制約で話すよう強要されることも考えられるのだ」
「そうか、そうだね」
「しかし、トアがこれからもルオ様に会ってくれたら我々も嬉しい」
「うん、もちろん! 私、ルオのこと好きだよ!」
トアがそう言ってニシシと笑うと、一瞬ポカンとしたケイリュウたちだったが、微笑みながら頷いた。
(ルオ様にもやっと友達ができたのだな……ルオ様の心の壁を崩してくれて、ありがとうトア)
トアは「制約のせいでルーラルのことも話せないなぁ」と不満だったが、仕方がないと諦めた。
(ずっと話せないわけじゃないしね!)
その後、透明化して城の中を偵察しながら帰ることにしたトアは、城の中を浮遊しながら進んでいたが、前方から派手な声が聞こえてきて、眉を顰めた。




