第10話 偉業
皆の興奮が冷める様子がないことを見て取ったベージェルが、簡単に経緯を説明すると、皆はトアとルーラルを交互に見ては、驚きと納得を繰り返していた。リーニャだけはジトーっとあきれた視線を親友に送っている。
「というわけでの、ルーラルが作戦に加わってくれるようになって、儂らの計画も立てやすくなったのじゃ」
「わはははははは、まさか賢者殿とは! トア、まさかこんな偉業を成し遂げるとはな!」
ドリアムが豪快に笑いながらトアを褒める。
「えへへ、でもルーラルの所に案内してくれたのはギンなんだよ! ギンは大きい動物だけど、実は人間で異界からルーラルと一緒に来たらしいよ」
「トア、じゃあギンも呼んで紹介しておく?」
皆の頭に疑問符が浮かんでいるのを見てとったルーラルの提案により、ギンも連れて来ることにしたトアは、「じゃあ、ちょっと行ってくるね!」と言うと、シュンッと転移して消えた。トアの転移にまだ慣れていないススリードやルルドの国王たちは、「いとも簡単に転移魔法を……」と感心している。それからすぐに、トアはギンを連れて戻って来た。
「うわっ!」
突然、自分の隣に馬よりも二周りほど大きいギンが現われて、ルミオンは思わず飛び上がる。ホワイトシルバーの毛並みが美しいギンを見ていたリーニャは、何かを思い出しそうで首を傾げていたが、しばらくすると「あっ!」と声を上げた。
「どうしたの、リーニャ?」
「トア、思い出したんだけど、この前デイン大陸の「オドアイ様」の伝承について聞いたでしょ? その時、聞いたオドアイ様って、左右の瞳が青と紫の男性で、隣には白い獣の眷属が付き従っていたんじゃなかった?」
「リーニャ、よく覚えてるね~」
「うん、とても良い伝承だなって思ったから……それで、今、賢者様とギンが並ぶと、その伝承のままの光景だって思ったのよ!」
「あっ、本当だ!」
トアは皆にそのことを話して聞かせた。すると、ルーラルが口を開く。
「それ、僕のことかもしれないな。そんなに役に立てたかは分からないけど、デイン大陸の人はとても良い人たちで、よく交流したんだよ。この世界に慣れていない時に色々助けてもらった。僕の目の色が珍しいみたいで、僕が元いた異界では、こういう目を『オドアイ』って言ってたから、まだ言葉がうまく話せなかった頃に、そう言ったんだ。そしたら、いつの間にかそう呼ばれるようになってた」
ルーラルは、当時を思い出し懐かしそうにそう話す。
「では、賢者様が復活されたと知ったら、デイン大陸の人たちもすごく驚くでしょうね……」
「そうだね……彼らの子孫に会うのは感慨深いものがあるだろうね。早く皆が元の平穏な生活を取り戻せるように、頑張ろうと思う。それから、皆、どうか僕のことは気軽にルーラルと呼んで! 『賢者様』ってなんか恥ずかしいし、そんな柄じゃないんだよね。ちょっと距離を感じてしまうし、どうかお願いします!」
ルーラルがそう言うと、皆「恐れ多いけれど……」と言いながらも、なんとか慣れようと努力し始めた。そんな様子を見てトアはクスクス笑う。
そうして打ち解けてきた所で、ルーラルから皆に、ルーラルがデイン大陸に来た理由や、今もデイン大陸に同じ異界出身と思われる者たちが侵略していることなどが伝えられた。
「だから、僕とトアでもう少し情報を探ってみるよ」
「儂らは、引き続き魔道具類の確認などを行うが、大部分はルーラルが製作したものじゃて、ルーラルに聞くのが良いじゃろうのぅ」
「うん、もちろん! 改良できることもあるかもしれないしね」
「救出した貴族たちの警護などは、ルルドとススリードの兵を出して行うことは前回話した通りで準備を進めておるが、ミカルダス殿、全体の兵の統率にはどなたが良いか?」
「ダンデリアム殿、貴殿の弟のドリアム殿が相応しいのではないか? 良ければうちの筆頭魔導士コアトールとも協力してほしい」
「分かった。ドリアム、頼むぞ」
「承知した!」
こうして、貴人の保護については国王たち主導で話が進んだ。一方、ピーコロやカミドたちは、主に大量生産する魔道具や怪我人の手当などについて話を進めることとなった。
そこでミードルとピーコロが新たな魔道具について提案があると話し始めた。
「前回の話し合い以降、僕とピーコロ先生で考えていたんだけど、敵が使ってた呪いを発動する機械からヒントを得て、こちらもああいう機械を作ってみたらどうかなって思うんだ」「誰でも扱えて、少し距離があっても届くようにしたいと考えている。もちろん、トアの魔法の力が必要なんだけど! あ、なんならルーラルと一緒に!」
ミードルとピーコロが興奮気味にそう言うと、ルーラルとトアが目をキラキラさせて頷く。
「それは魅力的な提案だ! 是非、魔道具作製に協力させてほしい!」
「魔力なら、いくらでも注ぐよー!」
こうして、新たな魔道具作製班が立ち上げられた。リーニャたちもメンバーに入れられたのだが……。
「どうしよう、私一人でこの人たちの暴走を止められる自信がないわ……カミドさん、ミケーさんご協力よろしくお願いします」
「あれっ、僕は?」
「ルミオンはもう少し精進しなさい。大丈夫ですよ、リーニャ。それにギンもこちら側のようですから」
「クゥーン」
「先生の暴走は任せてください」
こうして、バランスのとれた魔道具作製班が出来上がったのだった。




