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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第六章

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第4話 ギン

 

 救出作戦に向けて、それぞれが出来ることを進めていくこととなり、カミドが「難しいことは分からないが、これまで通り魔道具製作をして備える」と話すと、それを聞いていたピーコロは興味深々で、ミケーと共に魔道具製作に協力したいと手を上げた。いつの間にやら、ピーコロとミードルは意気投合し、様々な魔道具の可能性について熱く語っている。トアについては、引き続き薬草などの採取と魔道具作製、それに牢屋に捕らわれている人たちとの連絡や確認などを担うこととなった。

 また、ススリード国王とルルド国王は兵士たちの鍛錬や防衛での協力体制と、牢屋から救出する際の家族も含めた滞在先の確保などの協力をすると申し出る。魔連と魔法学校はお互いが共有する魔道具について、トアの力も得ながら検証し、使用できるものがあれば、帝国や異界人の襲来に備えることを確認し合った。また、ススリードより元側妃カーラが消えたことが共有されると、魔法学校からはカーラの兄ガルマが休暇後も姿を見せないとの話も出て、カーラ脱獄に関わっている可能性も有り得ると推測されたのだった。


 トアは牢に戻ると、話し合いに参加できなかったリアやルオに、今回の内容をそれぞれ話し共有しておいた。



 トアは早速、魔道具作製の材料を集めにススリードのいつもの森でポヤの花やピロウの薬草採取に取り掛かることにした。森に転移して間もなく、ギンがいつものように出迎えてくれる。


「ギン、少し間が空いたけれど、元気にしてた?」

「ワォーン!」

「そっか、良かった。こっちはね、色々あったんだよ~まずね……」


 そう言うと、トアはここ最近の様々な事件のことと、その裏にバール帝国や果ては異界の存在まで出て来たことを、ギンに話して聞かせた。


「それでね、今から思うと最初にギンと出会った森にいた男も帝国と繋がってたんだと思うし、ギンも最初黒いモヤがかかってたから、呪いの一種だったのかな、とか思うんだよね……ん、どうしたの?」

「ウーーウーー」


 ギンはこれまでにない凄まじい怒りを露わにしている。少しして落ち着いたギンは、トアに背を向けると乗るように合図した。


「え、どこかに行くの?」

「ワォン!」

「分かった」


 トアがギンの背に跨ると、大きなギンの身体は疾風のように木々の間を走り抜けていく。


「うわっ、さっきまでいた辺りがあんな下に見えるよ!? どこまで行くの??」

「ワオーーーー」

「まだまだ先なんだ!」


 ギンはそのまま最短距離を駆け抜け、そこら一帯で一番高い山の上の方へと向かっていく。


「うわ~なんか頭がフラフラしてきた。あ、これ授業で習ったやつかも……」


 トアは魔獣の生息域に関する授業で「山の上の空気は薄い」と習った事を思い出していた。そして、すぐに自分の周りに大き目の結界を張る。


「これで、これ以上は悪くならないかも」


 それからしばらくすると、山頂まであと一歩という場所へ辿り着き、ギンはやっと止まった。そこには大きな岩が二つあり、互いに支え合うように聳えている。その根元には空間ができており、ギンはその中へ進んで行った。


「わぁ~、中も広い空間なんだね」


 トアがその大きさに驚いていると、その空間の奥の方まで来てギンは姿勢を低くした。


「ここで下りるんだ……何があるの? あっ、明かりをつけるね」


 トアが指先に火魔法を出現させると周りの様子が露わになる。しかし、奥の壁は光が当たらないのか暗いままで、トアは更に近づいて行く。


「ガルルルルルル!!」


 突然ギンが唸り声を上げたためトアは歩みを止め、そして気付いた——。


「うわっ!! 何これ……呪い??!」


 近づいて火魔法で照らしても暗いままだと不思議に思ったその場所は、一面凄まじい量の呪詛で覆われていた。


「これじゃ、見えない……奥に何かあるのかもしれないけれど……」


 トアは遠視を駆使して黒いモヤの中、更に奥の方を見てみる。すると、モヤの奥に透明の石壁のようなものがあることに気付いた。


「ここから先は、透き通ってるみたい。綺麗……これ石? あ、違う……もしかして結界??!」


 トアはその透明の壁に魔力を感じて驚く。そして、目を凝らすと更にその向こうに何かがあるのが見えた。それは横たわっている人のように見える——。


「……えっ、人? ギン、この中に人がいるの?!」

「ワン!」


 トアは、横になっている人物にさらに遠視で近づき、その顔をよく見る。その顔は、トアでなくとも誰もが知っている人物によく似ていた。


「学校や魔法連合に飾られている賢者さん……ルーラル・アラキスにそっくり!」

「ワン! ウーワウ……ワァフゥ……」

「えっ、もしかして賢者さん生きてるの?」

「ワフゥ」


 トアの口から古の賢者ルーラル・アラキスの名前が出ると、ギンは安心したように鳴いた。




 びっくりしたトアは、とりあえず黒いモヤが邪魔なので、ルーラルの呪詛を掴んで、新たに作った異空間に放り込んでいく。しかし、呪いの規模が大きくて、すぐにはなかなか減らない。すると、ギンが「ワンワン」と吠えた。


「え、モヤを取りながらこの結界に魔力を注ぐの?」


 とりあえずトアは、ギンに言われた通り、モヤを取りつつ結界に魔力を注いでいく。時間をかけてかなりの量の魔力を流していくと、その結晶の端の方が少しだけ溶けてきた。


「ふぅ~時間がかかるね。さすがにすぐには無理だね。たまにここに来て溶かすよ」

「ワフ~ゥ!」


 ギンが嬉しそうに鳴いたので、とりあえずこの日は帰ることにした。この日、大量の魔力を使ったトアは、疲れ切って学校の寮に着くと、すぐ深い眠りに落ちた。


 この世界が震撼するほどの大発見は、未だトアとギンという小さな世界の中に閉じ込められているのだった——。


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