第3話 集合
トアからの報告を聞いたベージェルは、事の重大さに驚きつつも、すぐさま、ススリード、ルルド、魔法学校、魔連の主だった者たちへ連絡し、皆は魔法連合に集まった。そこには、トアが希望したいつもの魔道具作製の面々もおり、続々と集まって来るそうそうたる顔ぶれを見ては顔を青くしていた。
「リ、リーニャ、トアが『最近のことを共有するだけだから』って言うから、魔法連合にノコノコ来ちゃったけど、やっぱり僕なんて来るべきじゃなかったんだよ! 魔法連合って聞いた時から何かおかしいと思ってたんだ! ぁあっ! ほら、今、入って来たのはススリードの王様でしょ?? 王太子殿下もいる! 町の新聞でも度々見る有名人だよ!!」
「ちょ、ちょっとルミオン、落ち着いて! 大丈夫よ、私たちはただ立って聞いていればいいんだから」
「ああ、これが貴族と平民の差だよ! そんなに平静にしていられない。だって、もし王様が話している最中に咳でも出たらどうするの? 気まずすぎるよ! あっ、そうだ! またトアにあの収納空間に入れてもらおう!」
「ルミオン、それじゃ意味がないでしょ……それに、それだけ話せるなら大丈夫よ……」
リーニャは、この部屋に入って来てから、こちらの様子を見て面白そうに笑いを堪えている隣国の王太子マルスミアに気付き恥ずかしくなる。一見、表情に変化がないように見えるマルスミアが、実は笑いを堪えていると分かるのは、リーニャの洞察力が優れているからだった。
そしてまた関係者であり、国王の護衛として一緒に来たドリアム騎士団長もまた、マルスミアの愉快そうな顔を見抜き、心の中で「うむうむ」と頷いていた。一時は生死の狭間にいたドリアムだが、トアによって呪詛を浄化してもらい治癒魔法を掛けられてからの回復は、誰よりも早かった。また、ドリアムがカミドの店から購入していた魔道具により、呪詛に掛かっていた他の高位貴族たちも回復させることができ、ほぼ平常業務が行えるまでに国の混乱は収束した。そのお陰で今回こうして魔法連合に来ることもできたのだった。
(マルスミアが愉快な気持ちになるのも頷ける。こんなに多様な顔ぶれで、しかもこの距離感……さてさて、何が話されるのか……それにしても、もちろんこの中心にトアもいると思ったのだが……トアはどこだ?)
魔法学校については、生徒や教師に掛けられた呪詛は、例によって魔道具やトアがこっそり浄化や治癒をして回ったお陰でほとんどが回復しているが、建物自体への被害が大きく、まだ再開できていなかった。しかし、今回の情報共有は襲撃にも関係している重要事項ということで、校長のテリウス始め、理事のフロイスにハシル、更にピーコロやお目付け役のミケーも参加している。
皆が、集まった面々をお互いに把握した頃、ベージェルとビームス、そしてトアが姿を現した。入り口から入って来た三人に皆の視線が集まる。
皆を見回してから、ベージェルが口を開いた。
「皆、遠路はるばるよく集まって下さった。時間もないので早速本題に入るとする。皆、承知置きの通り、今回ススリード、ルルド、そして魔法学校が攻撃を受けたが、それは帝国による計画的なものじゃった。そして、その背後にデイン大陸の者たちが関わっていることまでは把握しておったが、今回、それを上回る事態じゃということが分かった……」
シンと静まり返った部屋の中、皆は固唾を飲んでその先を待つ。
「異界の存在じゃ」
「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」
ダンデリアム王、マルスミア王太子、ドリアム騎士団長、ミカルダス王、テリウス校長、リーニャ、ミードル、ピーコロ、ミケーなどは瞬時に目を見開き、言葉を失ったが、後の者はすぐには理解できずにいた。それを察したテリウスが、ベージェルに確認する。
「ベージェル殿、それはこの世界とは違う世界の存在ということで間違いはないのですな?」
「うむ。トアがデイン大陸の帝の孫ルオ殿から聞いてきた情報じゃ」
それを聞いた面々は、更に目を見開きトアを見た。
好奇心が刺激されたテリウスが更に質問をする。
「なんと、帝の孫が!? トアはどこでルオ殿と会ったんじゃ?」
「実際に会話をしたのは……バール帝国の牢屋です」
「「「ろ、牢屋?!」」」
今度はダンデリアム王、ミカルダス王そしてピーコロが思わず聞き返す。
「ああ、そうじゃな。皆がトアについて共有しておる部分もまちまちじゃったのぅ。とりあえず、トアは自らバール帝国に捕まりに行っての。今は牢屋にいる……ことになっておるのじゃ」
「なんと……トア、大丈夫なのかい?」
ルルド国王が心配そうにそう尋ねる。
「うん、平気だよ。今も抜けて来てるし」
「その……ようだね」
「わはははははは、また枷をフンッとやったのか?」
ドリアムが愉快そうに聞いた。
「毎回するのは面倒くさいから、枷の形を魔法で変えたの。内部の針を取って滑らかにして、ボタンみたいにすぐに付けたり外したりできるようにしたから、便利になったよ」
「うはははははは! それではもう、枷ではないではないか!」
「そうかも、重い装飾品? かな」
それを聞いたマルスミアが「ぷっ」と小さく笑うのをリーニャは見逃さない。
「トアよ、姉のリア嬢も無事か?」
今度はダンデリアム王が尋ねた。
「はい。結界も張っているし、牢屋の中も過ごしやすいように変えたので、大丈夫です」
「そ、そうか……うむ、良かった」
ダンデリアムは『過ごしやすい牢屋とは……』と気になりかけたが、頭を切り替え疑問を振り払った。
「それでのぅ、そのルオ殿はこちらに協力してくれると言ってくれておる。それから、トアの得て来た情報によると、デイン大陸の者たちで首に模様のある者は、人質を取られたり制約の呪詛をかけられたりして無理やり従わされておるらしい。儂やトアの希望はバール帝国の城で捕らわれておる前皇帝ウィズダブラ派の貴族とその家族を救出した後、デイン大陸の者たちにも協力したいと考えておるのじゃが、皆はどう思うかのぅ?」
それを聞いた面々はお互いに話を始める。
少しして、ルルド国王が口を開いた。
「私は賛成です。今回、今まで静かだったバール帝国がなぜ急に、こうも好戦的に各国に攻めて来たのか、不思議でしたが、その背後にデイン大陸……いや、異界の存在があると聞いて納得しました。デイン大陸が閉鎖的になったことも、そういう理由があったのだと推測します。大元である異界人をどうにかしなければ、また今回のようなことは起こると思いますので」
それを聞いた面々も皆頷いている。
その後は、ベージェルが各々個人に確認を取り、満場一致で協力することが決まったのだった。




