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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

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第20話 地下室

 

 城の地下室へ続く扉の入り口には、ビームスが言った通り見張りがいた。一応そのことを確認したトアは、そのまま転移でドアを開くことなく中へと進む。


(本当だ、狭くて一人しか通れない。一本道だけど、けっこう奥まで続いてる……)


 狭くて長い土壁の通路に閉塞感を感じながら奥まで進むと、ドアが見えて来た。木製のドアだが、外から鍵がかけられている。ドアの上部に四角く開いている場所があるが、トアの背では中を除くには足りないため、遠視で中の様子を確認してみる。すると——。


(あっ、子供だ!)


 トアより少し年下に見える子供が八人と、同じくらいの年齢の子が二人いるのが見えた。皆、集まって寝ているが、着ているものは汚れて茶色くなり、決して良い環境でないのが分かる。


(ケイリュウさんが会いに来ているなら、ケイリュウさんの子供もいるのかな……この子たちを人質に取られてるんだ!)


 トアは怒りが湧いてきたが、魔力圧で子供たちを苦しめるといけないと抑える。


(どうしたらいいんだろう……ケイリュウさんたちは制約で話せないだろうし……じいちゃんに相談してみよう)


 自分より小さい子供たちが心配なトアだったが、ひとまずベージェルのところへ転移することにした。



「じいちゃん!」

「うわっ、トア、どうしたんじゃ?」


 トアの焦った様子に、何かがあったと察したベージェルは、驚きながらも聞く姿勢を取る。


「あのね、子供たちが城の地下に閉じ込められてるの!」

「なに?! トア、詳しく話しておくれ」

「うん」


 そうして、トアはベージェルに事の経緯を話して聞かせた。


「なんと、むごいことを……制約を加えるだけでなく、子供まで人質に取っておるとは……もしかしたら、国にも人質がいるのかもしれん……そうなると、子供を助けても、国に連絡がいけば、そっちの家族も危なくなるしのぅ……」


 とりあえずベージェルと話し、すぐには動かず様子を見ることにした。ただ、命が危なくなるような事態にならないよう、トアはこまめに確認することにする。


 それから数日が経ち、トアが観察していて少しずつ分かってきたことがあった。食事の配布は城の兵士によって行われているが、何か危害を加えるようなことはなく、一日に一回それぞれの親だと思われるデイン大陸の人たちが会いに来ている。親はいずれも首に模様を入れられており、男性だけでなく女性もいた。子供たちは一日一回の交流を楽しみにしていて、親が帰る時はとても寂しそうだった。しかし、そんな中で一人だけ誰も会いに来ない子供がいた。トアと同じ歳くらいのその子は、長い黒髪を高い位置で括り、切れ長の綺麗な青い瞳をした男の子で、親は会いに来ないが寂しがって泣くような様子もなく、静かにしているのが印象的だった。


 トアはこまめに確認していたが、ウェスリッド家やトーマス、ウィズダブラへの食事の配布などもあり少しの間目を離すこともあった。そして、ある日トーマスたちの食事配布を終えて遠視で確認してみると、例の青い瞳の男の子の姿がないことに気付いた。焦ったトアは、城を片っ端から確認していく。


(どこに行ったんだろう、いや、連れていかれたんだ……きっと……)


 そうして、城をくまなく探したが結局見つからず、それから数日してもその子の姿はなかった。


 日光浴の時間、外に出た際にトアはリアにそのことを話した。


「その子はね、何か他の子とは少し雰囲気が違ってるんだよね……落ち着いてるし」

「長い黒髪に青い切れ長の目の男の子ね、ちょうどあんな子なのかな、髪の毛長いよね? あんな子供も男性の牢にはいるんだね……」

「あーっ! あの子だよ!!」


 金網を隔てた先で男性の囚人たちが日光浴をしている中に、その子を発見したトアは驚きの声を上げた。



**

 以前の希望がなかった時とは違い、前皇帝ウィズダブラは日光浴の時間を交流の場として前向きに行動していた。トーマスから小声で囁かれた時には、喉が治ったことに喜び、トアが治したと聞いた時には大変驚き、更に、フロイスたちが救出に向けて作戦を立てており、それにもトアが絡んでいると知った時には、胸が熱くなった。そして、自分を支えてくれた貴族たちと再び積極的に交流し、情報を集めるようになっていた。

 今日の日光浴では、数日前に来たという、とある子供の話題で持ちきりだった。ウィズダブラもその時初めて目にしたのだが、最初に思ったのは旧友に似ているということだった。かつてウィズダブラが皇帝であった時は、デイン大陸とも交流があり、デイン大陸の帝ヌシ・ウヌ・デインとは、旧知の仲だった。しかし、アラキス帝国で政変が起こる数年前から、急にデイン大陸は閉鎖的になってしまった。ウィズダブラからヌシ宛に親書を送っても、そのまま送り返されてしまい、何かあったのだろうかと心配しだが、使者を送っても海を渡った先のデイン大陸に足を踏み入れることは叶わず、様子が分からないまま、結局政変によりウィズダブラは、何の情報も届かない牢獄で過ごすこととなってしまったのだった。


 その子供の近くの牢に入っている貴族からの情報では、その子供は筆頭魔導士のラーラル・ダハンが連れて来たということだった。子供ということもあり、心配した貴族たちが声を掛けたようだが、出身や親のことなどを訪ねても、何も答えず首を振るだけだったと言う。


(ダルーガの側近のラーラルが自ら連れて来るということは、重要な立場の子供なのだろう……ヌシに関係する者だろうか……)


 ウィズダブラは、日光の眩しさに目を細めながら、久しく会っていない友の顔を思い出すのだった——。


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