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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

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第18話 ピーコロの診察

 

 魔法訓練室では、叡智のメンバーがテキパキと仕事をしており、トアたちが作製した治癒の箱を生徒に握らせて回復を促しているが、魔力量の少ない生徒ほど呪いが効いており、まだ床に寝たまま動けない生徒もいた。しかし、これまでトアが解呪してきたものと比べ、そこまでしぶとい呪いでもないと確認すると、トアは再び透明化して、寝ている生徒たちに素早く浄化魔法を掛けて回った。そして、再びリーニャたちと合流すると、隅の方で叡智のメンバーの質問に答えているピーコロを見つけて側へ行く。トアが近づくと、叡智のメンバーはスッとお辞儀をして去って行った。


「ピーコロ先生、大丈夫?」

「お、おぉお! トア! それに君たちも、無事だったか、良かった! もう、先生は感動しているんだ。是非色々聞きたいと……」

「先生、こんなところに居ましたか。さあ、医務室に戻りますよ。貴方の居場所はあそこですから」


 いつの間に現れたのか、ショートカットの髪に眼鏡をかけキリッとした目つきのミケーがピーコロの襟ぐりを掴みズルズルと引きずって行く。


「す、すごい腕力だわ……」


 リーニャがそう呟くと、ミケーが振り返った。


「先生を引きずる為に鍛えましたから」


 それを聞いたトア、リーニャ、ルミオンは絶句したが、ミードルだけは「愛だ……」などと変な反応をしていた。


 その後、四人はそのままミケーについて行き、医務室のベッドの上に無事カミドを寝かせた。そのまま、ミケーにカミドのことをお願いして部屋を出ようとしたのだが、ピーコロに捕まってしまう。


「や、約束したよね? トアのこと調べていいって! 幸いなぜか生徒たちも元気になって仕事も減ったし!」

「え、今ですか?」

「すぐ終わるから、一つだけでも検査させて!! じゃないと眠れない!!」

「う~ん、じゃあ一つだけ一番早い検査をお願いします」


 トアがそう言うと、ピーコロはこっちに来てと手招きをした。


「魔力回路の検査をするね。さあ、ここに立って、両手を軽く広げて。そのまま……」


 ——パシャッ——


「はい、終了! ね、早いでしょ? 結果も見て行く?」

「はい」


 ピーコロはパシャッと音がした装置の下から透明のペラペラした薄い板のようなものを取り出した。しかし、取り出すなりピーコロは固まる。


「先生! ピーコロ先生! どうしたんですか? トアの結果は??」


 リーニャが心配そうにピーコロに聞く。すると、やっとピーコロがトアの方を向いた。


「トア、この結果は一人で見るかい?」

「え、別に皆で見ていいよ。減るものでもないし」

「そうか……トア、親御さんは?」

「いないよ、双子のお姉ちゃんはいるけどね。赤ちゃんの時に孤児院に預けられたから」

「そうか……ここにいる友達は信頼できるんだね?」

「そうだよ。私の秘密も共有してるからね」

「分かった。では、こっちの部屋に皆来て、ドアを閉めて……じゃあ、これを見て」


 そう言うと、ピーコロは白いボードに透明の板をぶら下げる。そこには、人体の形とその内側にびっしり張り巡らされた青い線が映っていた。複雑で隙間がないほどに青い線で埋め尽くされており、一見すると塗りつぶしてあるようにすら見える。それを見た途端、リーニャとミードルが目を見開いた。ルミオンとトアはよく分からずにただ眺めている。


「先生、これが魔力回路?」

「……恐らく……」


 歯切れが悪いピーコロに、トアは怪訝な顔を向ける。


「え、違うかもしれないの?」

「いや、多分そうなんだろう。そうだね、違いは見てもらうのが分かり易かな……」


 そう言うと、ピーコロは自分の魔力回路を撮って戻って来た。


「これが、僕の魔力回路だ。僕の……といっても大体皆これと同じなんだ……」


 そう言いながら、ピーコロは自分の分をトアの魔力回路の隣に並べる。


「えっ! 全然違うよ?! 先生のは綺麗な一本の線でつながってる!!?」

「うん。これが通常なんだよ……」

「私のは……ぐちゃぐちゃだよ? 線が多すぎて……」

「それだけじゃない。中心に魔力を作り出す魔臓と呼ばれている魔力器官があるんだけど、トアのは尋常じゃなく大きいんだ……」

「本当だ……線が多すぎて見えなかった……」


 そこまで聞いて、ようやく息を「ふーっ」と長く吐き出したミードルがピーコロに尋ねる。


「じゃあ、この違いがトアの特殊な魔法発動にもつながっているということですか?」

「大いに関係あると推測できるね……これほど複雑な魔力回路に大きな魔臓だ。常人のそれらができる範囲とは次元が違う……魔力回路は神経ともつながっているし、恐らく魔法発動時の感覚も相当優れているのだろう。緻密な操作も可能にしているはずだよ」


 トアはピーコロの言うことを聞き、それが重大なことというのは理解していたが、心の中では「ピーコロ先生が初めて先生っぽく見える……」などと感心していた。


「じゃあ、皆とは違うけど健康に問題はないってことですか?」


 ルミオンがそう聞く。


「そうだね、僕もこんな魔力回路を見るのは初めてだから、何とも言えないけど、トアが不調を感じていなければ大丈夫だろうと思う。とりあえず、色んな文献を当たって調べてみたい!」


 と、ピーコロが俄然やる気になったところで、リーニャが「先生、守秘義務ですからね!」と念を押し、トアたちは医務室を出たのだった。

 その後、トアはベージェルにのみ魔力回路や魔臓のことを知らせておいた。ベージェルはなんとなくそうではないかと仮説を立てていたようで「やはりそうじゃったか」と納得していた。


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