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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第一章

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第11話 怒りと修行

 

 それからトアは毎日リアの様子を頭の中で映像として見ていた。しかし見れば見るほど、怒りが湧いてくるのだ。


「なんだあの意地悪ばっかりの家は!! 食事は一回だけ? しかもあんな残飯なんか、孤児院のほうが全然いいじゃん! 他の人は皆良い食事をしているのに、なんで、なんでリアだけ……」


 トアは怒りを通り越して涙が出てきた。しかし、シスター達に心配されるといけないので、泣き顔は見せないようにしていた。リアの一日は早朝から始まり、夜は誰よりも遅くまで起きて勉強をしている。様々な家事や雑用を押し付けられ、時に暴力を振るわれている。だんだんあのレスト子爵家の様子が分かってきたが、長女のミシェルを筆頭に侍女達もリアの虐めに加担していた。父親と母親はほとんどリアに会わないが、会うとひどい言葉を吐いている。唯一、リアに優しくしてくれているのは、次女のチェリーだった。チェリーもずっとミシェルから虐められていたらしく、リアが来てからはその矛先がリアに向けられるようになり、心を痛めているということが分かった。


「リアを虐める奴は絶対に許さない。でも、アンドール兄ちゃんも貴族様は怖いって言ってたし、変なことしてリアがもっとひどいことされるといけないから、まずはリアがちゃんと生きていけるようにしよう」


 トアは様々な魔法の練習を開始した。そして、透明化や防音、探索、結界といった魔法が使えるようになった。これらの練習は主に森でしていたが、度々ギンがやってきて、魔法の練習に付き合ってくれたことが大きい。ギンはとても賢くて、こちらの言ったことを理解してくれるので大助かりなのだ。


「じゃ、ギン、次は透明化して浮遊するから、私が消えて見えなくなったら吠えてね!」


 まずは普通に浮遊するそして透明化のイメージを明確に描いて魔力を多く流す——。


「ワン、ワン!」


「ありがとう! じゃあこのままで防音するから、私の声が聞こえなくなったら教えてね」


 しゃべり続けながら防音を発動すると「ワン、ワン!」という合図がきた。


「やった! 成功だね!」

「ワォン~」


 自分も嬉しいとでも言うかのように、ギンはトアに身体をスリスリしてくる。


(そういえば、リアが魔法を習ってるおばさんがリアのことインチキ呼ばわりしてたよね、無詠唱はインチキだって。だからリアは無駄な詠唱をするようになってたけれど、私だって無詠唱だから、インチキって言われるんだろうな。まあ私は誰にも習わないし、アンドール兄ちゃんくらいしか魔法のこと話してないから、どうでもいいけれどね!)


「ギン、今度は治癒魔法の練習しようと思うんだ。リアがひどい怪我とかさせられたら怖いし、そういう時に助けられないと魔法を練習している意味もないから」

「ゥワオン!」


 そのとおり!とでも言うかのようにギンは返事をしてくれた。そして翌日——。


「うわっ、ギン、そのウサギどうしたの? えっ、血出てる!」


 ギンは咥えてきたウサギをそっと地面に置くとトアのことをじっと見つめる。


「私が……治す……の?」

「ワオン!」

「そうか……治癒魔法の練習するって言ったもんね。うん、わかった。やってみる」


 苦しそうに薄目を開けているウサギを見て、一瞬、自分に託された大きな責任を感じ緊張で手先が冷たくなったトアだったが、救わなくてはという思いで手を翳す。


「魔力を出して傷を覆って……傷がふさがるイメージで。身体全体も元気になれ……元通りになれ……」


 ぎゅっと目をつぶってひたすら願いを込めていると、「ワン!」という声がした。恐る恐る目を開けると……。


「ああ、ウサギさん! よかった! 元気になってる!!」


 そこには、起きてピンと耳を立てつぶらな瞳でこちらを見る元気なウサギの姿があった。草むらにピョンピョン跳ねていったウサギを見送ると、ほっと安堵の気持ちが広がる。


「よかったぁ~。ギンも有難う見守ってくれて」

「ワオン」


 しかし、ほっとしたのも束の間、それからは毎日ギンが怪我や病気の動物達を運んでくるようになった。そして、日増しに大きな動物になり、数も複数匹に増えたりしている。


「ちょ、ちょっと今日のは焦ったよぉ。だってあんな大きな熊を五匹とか……。かなりスパルタじゃない? それにしてもこの森の動物ってなんであんなに怪我しているの? みんな喧嘩っ早いとか?! でも、なんかするどい切り傷もあるよね、あんなに鋭利なのって何かの牙や爪とか?」


 そうトアが言うと、珍しくギンは相槌を打たず、静かに森の奥に目を向けるのみだった。


 **

 森の奥深く——。


「ウー……ギャイン……」

「ちっ、こいつはダメか。あっけなく死にやがって。死んだら使い物にならねえだろ。まあいい。まだまだいるからな」


 フード姿の男の周りには、傷つけられ弱った動物達が何十匹と横たわっている。図書館にも現れたそのフードの男は、胸ポケットにある黒い液体の入った瓶の存在を確かめるとニヤリと暗い笑みを浮かべるのだった——。


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