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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

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第15話 医務室での攻防


 突然壊された医務室の扉は、一緒に攻撃を受けたらしい魔法学校の女性教師と共に医務室内に倒れこんできた。


「ミリアム先生!」


 ピーコロが女性教師の名前を呼び駆け寄る。トアは何が起きたのかは分からなかったが、咄嗟に危険を感じてカミド、リーニャ、ルミオン、ミードルに透明化の魔法を掛け、カミドとリーニャに近寄ると「ちょっとこの中に入ってて!」と言って収納空間に入れた。そしてルミオンとミードルがいるであろう場所へ向かって小声で話す。


「ルミオン、ミードル先輩、窓際へ行ってて!」

「「分かった」」


 二人も小声でそう返してきた。


 トアは、壊された戸口を注意深く観察する。

間もなく、そこから敵が姿を現した。先に入って来たのは、五人の黒ずくめの服を着た男たちだった。そして、その後から黒地に赤く迷路のような模様の入った服を着た男が入って来た。その男が黒ずくめの男たちに指示を出す。


「お前たちは医者を捕えろ。俺は室内を調べる」


 黒ずくめの男たちはピーコロを簡単に捕らえると、すぐに枷をはめた。トアはそれを険しい目で睨むが、勿論男たちからはトアの姿は見えていない。


(あの黒ずくめの服……やっぱり帝国だ! ピーコロ先生なんて何もしていないのに、あんな枷をはめるなんて……)


 トアはそっとピーコロに近づくと、枷に指先で触れ変形させていく。ピーコロの手がビクッと震えたが、男たちが気付く様子はなかった。トアはピーコロの手首に刺さっていた枷の針を抜き、枷を引き延ばして緩くしておく。

 ピーコロは枷が勝手にムズムズと動き始めた感覚がして、飛び上がりそうなほど驚いたが、恐らくそんなことができるのはトアだろうと勝手に推測すると、その魔法の底知れぬ凄さに、捕らえられていることも忘れてワクワクしていた。そして、突然独り言のようにピーコロが喋り出す。


「ああ~なんてことだ、捕らえられてしまうなんてー、僕はまだ放っておいても大丈夫だけれど、生徒たちが無事か心配だなー、誰か見て来てくれないかなー、あーついでに校長も大丈夫かなー心配だなー……」

「おい、こら、うるさいぞ! 無駄口を叩くな!」


 トアは、ピーコロの耳元に口を寄せると極小さな囁きで「分かった、見て来ます」とだけ伝えた。勿論、姿の見えなくなったトアの魔法の能力に、ピーコロの興奮状態が跳ね上がったのは言うまでもない。


 トアは窓際へ行くと、ルミオンとミードルの魔力を感じる方に向かって囁く。


「ルミオン、ミードル先輩いる?」

「「うん」」

「ちょっと、魔法訓練室とか校長先生の様子を見に行くんだけど、ここも危険かもしれないから、二人も収納空間に入っててもらっていい?」

「「う、うん」」


 二人が緊張気味に返事をすると、トアは二人を収納空間に入れた。

 医務室には他にも患者がいるが、敵は特に攻撃する様子は見受けられない。指示を出している黒地に赤い模様の服を着た男は、患者に質問をしたりもしている。何かを探している様子なのだとトアは気付いた。

一通り質問を終えると、その男はピーコロの方へ戻ってきた。


「おい、そこの医者。この部屋で鍵のかかっている扉を開けろ」

「そこは、薬品の保管庫ですが……」

「いいから、早くしろ!」


 ピーコロはトアによって緩められた枷を気付かれないように敵の視界から外しつつ、自分の机へと移動する。


「この机の引き出しに鍵があります。私は枷をされていますので……」


 そう言うと、男の部下が机から鍵を取り出した。


「ありました。ドルク様、どうぞ」


 ドルクは扉を開いて確認するも、目当ての物ではなかったらしく舌打ちをする。


「ちっ、どこなんだ! おい、医者、この学校で魔道具はどこに保管されている?」

「どんな魔道具でしょうか?」

「いいから、全ての場所を言え!」

「ええと、研究課ですと壊れた魔道具なども保管されて……イタッ!」


 ドルクがピーコロの頬を殴りつける。


「お前、わざと言っているな? 俺が壊れた物を探しているように見えるか? さては、俺たちが探している物の見当がついているな?」


 ニヤリと笑ったドルクは懐から呪機を取り出すと、ピーコロの額に突き付けた。


「これの無駄遣いはしたくない。早く言え」

「…………」

「そうか、なら仕方ない……カチッ……ん? 不具合か?」


 ピーコロに何の影響もないのを見て、呪機の不具合だと思ったドルクが、今度は患者が寝ている方へ向けて呪機を発射しようとする。


——グシャ——


「あっ?」


 突然、持っている呪機に力が加わったかと思うと筒の先が半分ほどでグニャリと下へ曲がった。


「なんだこれは? お前何だその顔は? 何かしたのか?!」


 なぜか一瞬、顔を輝かせたピーコロを見逃さずにドルクが詰問する。


「い、いえ、私は何も……」

「くそっ、一体、何でこうなるんだ! 誰も魔法の詠唱などをしたそぶりもない……何かの魔道具でも作用しているのか? とにかくここには何もないな……仕方ないさっきの場所へ戻るぞ」


 ドルクはそう言うと、医務室を出て行く。ピーコロもそのまま連れて行くようで、ピーコロのことも心配になったトアは、透明化に浮遊魔法を重ね掛けして、その後ろから付いて行くことにした。


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