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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

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第12話 窮地に現れた集団

 

「兄上、これまでお疲れ様でした。もう安心して倒れてください。今後は私が王国を強い国にしていきますので」


 ダストンはそう言うと、兄である第二王子ソルティスの眉間に当てた呪機の引き金を引く。ソルティスは「もうダメだ!」と思い、覚悟して目を瞑った。しかし——。


 ——カチッ——……——カチッ——……——カチカチッ——


 眉間に押し当てられた呪機はカチカチ言うだけで反応はなく、ソルティスは恐々目を開けてみる。すると、ダストンの焦った顔がそこにはあった。


「な、ぜだ!? なぜまた動かない??!」

「まったく、うるさいなぁ……」

「はっ? おい、誰か何か言ったか?! 誰なんだ!!……う、うごぼっ……」


 ソルティスの耳にも、誰かの声が聞こえた気がしたが、突然目の前のダストンの顔を水の塊が覆い溺れだしたことに驚愕する。


(い、一体、何が起こっているんだ?! 僕は……ひとまず助かったようだが、ダストンは……誰かに攻撃を受けたのか? 水魔法のようだが……詠唱も聞こえなかったし、今も誰かが水を操作している様子もない……)


 ダストンの異変に気付いた帝国兵たちは、「ダストン様をお助けしろ!!」と走って来ようとするが、いつの間にかホールに出現した白いマントの者たちが、その進路を阻む。


「ソルティス様、どうぞこちらへ」


 白いマントのうち一人の男性が、ソルティスをホールの端へ案内した。そこには既に、父や叔父、それにガカランがいた。


「ここは結界が張ってありますので安全です。この花が結界の中心ですので、近くに居るようにしてください」


 そうして、その白いマントの男性はまた争いの中へ戻って行く。ソルティスはそれを聞いて安心すると、張り詰めていた身体から力が抜け床へと倒れこんだ。



 ダストンの頭に纏わりついた水魔法は少しすると解除された。


「ゲホッ、ゲホッ、ヒューッ……ゲホゲホゲホ……」


 ダストンは苦しみながら呼吸を元に戻そうとするが、水が気管に入り込み必死の形相だった。帝国兵は叡智の集団と戦っており、ダストンに駆け付けられる者はいない。


 それを見るとトアは結界の中に入り、敵にトアだと分からないようにフードを被ると透明化を解いた。そして、まずドリアムに近づく。


「おじちゃん……おじちゃん……」

「うぅ……ああ……ト、アだな……来てくれたのか……」

「うん。少しそのままでいてね……」

「トア、ドリーをお願い……します!!」

「うん」


 そう短く返事をすると、トアは片手で治癒魔法を掛けながら、もう片方の手で呪いを掴み取っていく。取り払った呪いは、いつもなら掛けた者へ飛んでいくが、結界内にいるせいか、結界から出られないようだった。それを見たトアが、静かに国王ダンデリアムに聞く。


「王様、今、おじちゃんの身体から呪いを取っています。普通、呪いは取ると術者に戻るけど、今は張ってある結界に阻まれて、術者へ戻っていません。術者に戻るようにもできますが、どうしたいですか?」


 それを聞いたダンデリアムは驚きに目を見開く。言われた内容をようやく理解すると、トアに質問する。


「その呪いは、閉じ込めることも可能か?」

「多分、出来ると思います。一度やってみます…………できました。呪いだけ更に結界で囲みました」

「そうか……では、少し無理な願いかもしれないが、その呪いの四分の一ほどを術者へ返してもらえないか……」

「はい、分かりました」

「トアよ、すまない……感謝する」


 トアは閉じ込めた呪いの四分の一ほどを更に小さめの結界に閉じ込めると、全ての結界の外へ出し、その小さな結界を解除した。その途端、呪いはダストンへと返っていく。


 ダストンは水魔法が消えたと思ったのも束の間、今度は全身を駆け巡る痛みと気持ち悪さが押し寄せ、血の気が引き立っていられなくなり膝をついた。


「うぐっ……な、んなんだ……次から次へと……ぐああっ!」


 国王でありダストンの父ダンデリアムは、その様子を見て一層厳しい眼差しを送る。


(自分のやったことの責任は取らねばならぬ……まだ若くとも、王族であればなおさらだ……)


 ダストンの様子を一瞥すると、トアは再びドリアムの浄化に専念する。

 あまり強くない呪いであれば、手を翳すだけの浄化や、もしくは治癒で回復することもあるが、強力な呪いになると、呪いが執拗に絡みついており、それを掴み取る方が早く浄化できる。ドリアムに掛けられた呪いは強力だった為、トアはその方法を用いたのだった。他の王国の兵士の中には既に絶命している者も多く、ドリアムがここまで持ちこたえたのは治癒の箱とドリアム自身の魔力量の多さが理由だった。以前、毒に冒された時もそうだったが、咄嗟に魔力を全身に巡らせ、体内への呪いの影響を遅らせていたのだった。


「ドリー、ドリー!」

「ガカラン……大丈夫だ……」

「ああ、良かった……トア、ありがとう!!」


 ガカランは袖で涙を拭いトアに礼を言う。ガカランに笑顔で頷くと、トアは今度はソルティスの元へ行き浄化を始めた。ソルティスは初め、トアが何をしているのか分からなかった。自分に手を翳すとその手が光始めて驚く。


(この子は確か、魔法連合の統括ベージェル殿と一緒にいた……これは魔法なのか? とても温かくて心地良い光だな……)


 ソルティスはそう思いながら、いつの間にか眠ってしまっていた。


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