第11話 トアへ
全速力で孤児院へ辿り着いたランゾウは、孤児院の裏庭で白いマントの人間を見つけると叫んだ。
「魔法連合の方! どうかトアに連絡を! 城が襲われドリー……ドリアム様、他多数が重症です! 敵は見えない攻撃を使います!」
「分かった」
孤児院の護衛に戻っていたマゴットはそう答えると、すぐに他の仲間から叡智の特殊通信網を使ってベージェルに連絡してもらう。ベージェルから魔法学校の校長テリウス経由でフロイスに連絡が行き、すぐさまフロイスはハシルの家でトアを待つことにした。
夜の食事運びに現れたトアは、ススリードの城襲撃の連絡を聞くと、即座に遠視で状況を確認する。
「トア、どうだ? ドリアムたちは?」
「沢山人が倒れてる……皆、黒い靄に包まれてるから、多分呪いだと思う。ダストン王子が何か手に持ってる……見たことない機械……。あっ、ドリアムのおじちゃんとそれに……ススリードの王様だ! おじちゃん目は開いてるけど苦しそうに倒れてる。首に模様のある人たちもいるけど、デイン大陸の人たちかな……なんか悲しそうな顔してる……敵は何十人もいるよ」
「そうか……そのデインの人たちは無理強いされているのかもしれない。しかし、そんな人数だと、トアが回復させても気づかれたそばから、殺され兼ねないな……トア、魔法連合に応援を頼めるかい?」
「うん、浄化には一人一人時間かかりそうだし、応援が必要だね。じいちゃんの所に行って聞いてみる! ついでにカミドさんのところで魔道具も取って来よう」
そう言うとトアはベージェルの所へ転移し、フロイスも校長へ情報共有をしに出掛けた。
トアから遠視で見た情報と、叡智からの報告を聞いたベージェルは、ただちにススリード王国へ向かう人員二十名ほどを終結させた。魔法連合が所有する転移装置も使えたが、最初に込められた魔力で稼働している為、それほどの人数を送ることが可能かは分からず、今回はトアが全員を転移させることになった。
「じいちゃんは来ちゃダメだよ、万が一じいちゃんだって分かったら、真っ先に狙われるんだから!」
そうトアが強く言うので、ベージェルは魔法連合にて情報のまとめ役を引き続き担当することになった。トアは透明化を全員に掛けたかったが、そうするとお互いも認識できなくなるので、止めることとなる。ただ、牢屋にいることになっているトアだけは、透明化することにした。
「とりあえず皆さんには、結界を張っておくね! 城に転移したら、敵がいない端の方に大き目の結界を張るから、その中に負傷した人を運び込んでください! 結界の中心にこのポヤ花を置いておくので目印にしてください」
トアがそう言うと、突然宙に現れた超回復薬の原料に全員が動揺したが、「はい、トア様!」と元気に答える。トアは「様はいらないよ~」と思ったが、急いでいるので話を進めた。
「敵の中で首に模様がある人は、多分、脅されて強制的に連れて来られたデイン大陸の人たちです。彼らは本当は戦いたくないと思っているはずだから、なるべく傷つけないようにしてください。ただ、皆さんの身の安全が一番大切なので、相手が攻撃してきたらきちんと身を守って! それじゃあ、転移します!」
いつの間にか全員に結界を張ったトアは、そう言うと全員を転移させた。
**
ドリアムは自身の命を削ろうとする力と治そうとする力がせめぎ合っているのを感じていた。カミドの店で購入した治癒の箱を握りしめているが、気を抜くと意識も箱も手放してしまいそうになる。もうとっくに周囲には立っている王国の兵士は無く、ドリアムも横たわっていた。
ガカランは邪気を撥ねつける魔道具を握る手に力が籠り、もうあまり感覚が無くなっている。しかし、必ず双子の弟ランゾウがトアを連れて来ると信じていた。
しかし、ここで追い打ちを掛けるように、敵の声がホールに響く。
「ダストン王子、ソルティス第二王子を見つけました!」
「第一王子や正妃はいなかったか?」
「まだ見つかっていません。第二王子だけベッドにおりました!」
それを聞いたダンデリアムは唇を噛む。
(マリアンヌとマルスミアは恐らく、影が守っているのだろう……)
第二王子ソルティス・ススリードは、ダンデリアムほどではないが、やはり少し前から呪詛を掛けられ臥せっていた。フラフラと歩く足取りは覚束なく、玄関ホールの階段の上で今にも倒れそうだが、玄関ホールを見渡し、父と叔父の姿や、敵の側に異母弟のダストンがいるのを見ると、大体の状況を把握した。
「ダストン様、この第二王子はどうしますか?」
「居ても俺の邪魔をするだけだしな……」
そう言うと、ダストンは手にした呪機をソルティスに向ける。
なんとなく危険な気がして、ソルティスはふらつく身体を思い切り動かして抵抗した。
「あっ、大人しくし…………うがぁ!」
ソルティスが動いたことで、ダストンが呪機から放った呪いが帝国兵に命中した。
「ソルティス兄上……」
ダストンはギロリとソルティスを睨みつけると、ソルティスの方へ近づいて行く。ホールの階段を上り迫って来るダストンから逃れようと身体をよじるが、既に呪いに冒されている身体は重く、警戒した帝国兵一人に羽交い絞めにされ動けない。そうしている間に、ついにダストンは目の前まで来てしまう。ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべると、ダストンはゆっくりと呪機をソルティスの眉間に押し当てた——。




