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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

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第7話 尾行

 

「ビームスさん、いる?」


 牢の側でビームスの魔力を感じながら、そうトアが言うとビームスが小声で返事をした。


「あのね、デイン大陸のケイリュウさんたちの仲間について調べてほしいんだけど、お願いしていい?」

「承知しました」

「ありがとう」


 トアは自分で調べたいところだったが、捕らわれている人たちの健康状態を改善したりと手が離せないため、ビームスにお願いすることにした。

 そして、まずは女性の囚人たちに治癒魔法を掛けたり、食料を配布したりし始めた。皆、最初はとても驚いていたが、日光浴の時間にこっそり情報が行き渡ると、トアに大変感謝し涙を流す者も多かった。大勢いるため時間を要したものの、順調に進み男性の牢にもとりかかり始めた。

 ある日、いつものように牢に転移して治癒魔法を掛けて回っていたところ、ミラスが慌てて走ってきた。


「トア、大変だ! 今、ルカッドという皇帝の部下を名乗る男が、トアの牢がある階に向かって行ったよ!」

「分かった! ありがとう!」


 トアが牢に転移するのと、ルカッドが牢の前に到着するのはほぼ同時だった。トアは枷を外していたので、腕を後ろに回して誤魔化す。


 一瞬、ルカッドはトアがいきなり牢に現れたように見えた。しかし、牢の奥は暗かったこともあり、見間違いだろうと思うと「フゥ」と短く息を吐き出した。


(まったく、ルルドでは結局、発光体のことは分からなかったし、部下たちに有益な情報が掛かるよう網を張らせたが、何も出て来なかった……いや、あることにはあったが、それがこの銀髪の少女の情報だ。しかし、やはりただの小娘たちじゃないか! まったくラーラルはこれで手柄を立てたと言っているなんて……チッ……こっちはもっと働いているというのに! まあ、俺はあの御方のために働いているのであって、ここの皇帝に認められても嬉しくないがな)


 ルカッドはそんなことを考え苦々しい表情になる。

 一方、トアはトアで、ルカッドを見て何かを思い出しそうだと目を細めて思案していた。


(なんだっけ、この人……なんかどこかで……う~ん……けっこう前のような……ススリードだっけ……あっ!)


 やっと閃いたトアは、ススリードの町の図書館や、森でギンに出会った時にいたフードの男を思い出す。


(あの時の人に似てるんだ! 背の高さとか、何か似た感じ……顔はよく分からないけど)


 そう思いながら遠視で確認すると、不思議だがよく見えるようになる。


(そうそう、こんな感じだった。まぁ、似た人はいっぱいいるかもしれないけど……)


 因みに、その時見かけたのはいずれも、このルカッドだった。ススリードの図書館の地下では結界を弄ろうとしたものの、上手く行かず早期に警報が鳴り、退散した先の森では魔獣に出くわし、森の奥へ逃げ込んだのだった。その後、特殊な液体で獣を魔獣化させ、ススリードを混乱に陥れる作戦に切り替えたのだ。思いの外、混乱は早くに収められてしまったが、魔獣の実験としては上々だと捉えていた。

 それ以降の作戦もあまりうまく行っていないのだが、まさかそれが全て目の前の少女によるものだとは知る由もない。


 一方、トアは黒い服を見て、ベージェルが倒れた時にいた敵のことを思い出していた。


(じいちゃんたちが戦っていた敵も同じような服装だった……何人もいたから顔はよく覚えていないけど……)


 そう考えた時、魔力が膨れ上がり全身から噴き出しそうになる。しかし、すんでの所でなんとか抑え込む。


(隣にはリアもいるんだ……リアが危ない目に遭ったらダメ……)


 結局、ルカッドはトアとリアを確認すると、面白くなさそうな顔をして去って行った。


「リア、ちょっと行ってくるね……」

「分かった。気を付けてね」


 トアは透明化して転移で抜け出すと、そっとルカッドの後を追った。そうとは気づかないルカッドは、地上に上がると、そのまま城の外へ出た。向かった先は帝都の一軒家だった。こぢんまりとしたその家にルカッドが入るのを確認すると、トアは一旦、遠視で内部を確認し、ルカッドがいない廊下へと転移した。足音が響くといけないので、浮遊で家の中を探索する。家の中は殺風景で、あまり生活感はない。


 ルカッドがいる部屋の前で耳を澄ませると、中からルカッドの声が聞こえて来たため、すぐに遠視も発動する。


「……はい。計画は続行中です。多少問題が起こり少し遅れていますが、じきに魔道具の回収を行う予定です。魔法学校の教師の戦闘力はさほど高くありませんので、混乱に乗じて盗み出せると思います。ススリードでも手の者を送り込んでいます……はい、我らが崇めるゴウミ様の御為に」


 会話が終わり、ルカッドが部屋から出て来る様子だった為、トアは急いで屋根へと転移した。


(相手は誰だったんだろう? 何か手で持った物に向かって話してたな……魔道具かな? 見てみたいけど、仕組みが分からないしなぁ……他にも機能あったら怖いし……この家の場所も分かったし、今はいいか!)


 トアは自分が規格外なことから、自然と複数魔法が付与された魔道具を想像し、用心して今は近づかないことにしたのだった。

 その後、トアは一旦、牢へ戻ってリアに説明した後、夜の食事運搬の時間だったこともありハシルの宿に飛んだ。今日もハシルの部屋にはフロイスとドリアムがいた。やはり真っ先に声を上げたのはドリアムだった。


「おおっ、トア! 来たな来たな!」

「トア、良かった。今日も無事だね」

「トアさん、お待ちしていましたよ」


 トアは早速三人に、今日見たルカッドの話をし始めるのだった——。


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