その4
ほわ~…
疲れました~
字が小さいと寄り目になるのは仕方ないですけれど、後頭部がズキズキします。
小説なら、スッゴく細かい字でも読めるようになってきたんですが、法律本、面白くない!
正直、頑張ってますが、難しい(イミフメイ)単語が沢山あるので、一個一個調べながらです。
これ、本当に初級者用?
うげー…疲れたですよぅ!
でも『自分で、頑張ってみましょ?』て、レイチェルさんが。
曰く『自分で調べないと覚えない』って。アクマ!
そんなレイチェルさんてば、参考文献ともっと難しそうな法律の本をすごいスピードでめくっております。時々、ノートにメモっているので本当に読んでおります。本当に頭が良いのですよ。レイチェルは。
以前、勉強のコツを聞いたら、『分析です』言っていました。『分析をすることで、事象と類するものを関連付けて、予測をしていくことは楽しい』のだそうです。よくわかりません。『分析を~』意味を聞いたら『データや裏付け、根拠が何かを探したり紐付けたりすること』と噛み砕いてくれたので、わかったふりをしました。多分、バレてるでしょう。
はうー…ウルスラ様ぁ…お外行きたいです…
「…ディアナ様。進んでます?」
「ほえ?…いえ、ハイ!」
レイチェル、視線が恐い!ユルーゲル先生っぽい!
怖いよぅ…
「コーディリア様は今度、経済と福祉について学ばれるそうです。
「!」
「近いうちに福祉施設の視察にも同行されるみたいです。」
「!!」
「市場調査も行かれるそうで…行きたいですか?」
「はい!!!」
「では、こちらを解いておいてください♡お嬢様のご希望を伝えて参ります♡」
ディアナ、視察同行のためにガンバります♪
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私の可愛い可愛い可愛い×∞妹が、私がお勧めしたロマンス小説にはまってくれました。
スタートは本の虫レイチェル、からの守備範囲の広いメイドの鏡メアリアン、からの私!
ただ、予想と違ったのは妹が憧れたのは、『悪役令嬢』でした。
なんてこと!
ディーは、絶対絶対ぜぇーーーーーーーーーーっ対!!、ヒロイン推しになると予測してましたのに!
ディーは、仔ウサギとか仔リスとか、ヒヨコとか仔犬とか仔ネコ………いや、天使!!天使よりも更に上級のプチ女神!!!!!!
もう、世界中の可愛いが渋滞しているのに!
国宝級の鈴のような声で『お姉様』って呼んでくれるのに!
完・全・に!ヒロインなのに!
何故、真逆の『悪役』に憧れちゃいました?
姉様は泣きそうです。
私が色々立ちはだかって、『愛花』の主人公の様なハッピーエンドを演出しようと計画していましたのに!
厳しくする場面はレイチェルに取られ、ツッコミもメアリアンに取られ…姉様の出番は何処!?
『コーディリア様が全てのトップに立てば、ディアナ様は尻尾振って付いてきます』
そんなところに天啓が。
そうですわね…確かに。
いくら『悪役令嬢』を目標としていても、その悪役はハンサム女子ウルスラ様。10歳のディーには、ハードルというよりは高跳びのバーよりも高い理想…
愛くるしいディーの目標となる。
これは頑張り概があるというもの。
やれるわね!?やれるわ!!!!
コーディリアぁぁぁぁ、ファイっ!!!!!!!!
ハッ!
と言うことは、私が先に『悪役令嬢』になれば良い…のでは…!?
幸い、幼馴染み(=王子)のところよりよちよち歩きの頃から腐れ縁付き合いの延長(=婚約を打診)されています。虫除けだそうです。
もう、物理的環境的テンプレ条件はピッタリ!
私、そういう取引バッチコイです!
そして、性格は悪くないし、顔もそれなりの幼馴染みを可愛いディーのためにキープします!
おっし!
勉強に向き合うモチベーションが、俄然!湧いてきましたよ!
『私もコーディリア様の(学ぶべき諸教育の)お手伝いをしますね。』
心強いですね、レイチェル!才媛レイチェル!
幼馴染み(=王子)にも話を通しておかねば。
両家の親が名指しで約束しちゃったら、後にひけなくなりますからね。後始末も火消しもできる限界があることは、16歳の私でも青ざめるくらい理解しています。
ウチの家と向こうの家、っていうフンワリで約束させねば。家庭内婚約者スライドなら、ギリギリOKですもの。
お金も名誉も家のプライドも全てかかってきますからね…面倒臭いけど仕方がない。
ディー、私の可愛い妹!
姉様は頑張りますよーーーー!
「あ、後2年で仕上がってくださいね?」
何で?
「あと2年でディアナ様がデビューです。」
そうでした。
「ところで、次回のコーディリア様の同行される視察にディアナ様も行きたいと。コーディリア様にお訊きになりたいことがあるようで…」
「分かったわ!!」
ディー。
姉様は、姉様は!血のにじむまで頑張りますよー!
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「ねえ、レイチェル?」
「はい。奥様。」
「コーディとディアナがとても張り切っているようね。」
「はい。つきましては、モチベーション維持のため、奥様の次の視察にコーディリア様と共にディアナ様も見聞を広めたいと。」
「モチベーション、ねぇ…ま、良いでしょう。」
「ありがとうございます。お喜びになります。」
我が娘達は素直で可愛いこと♡
結婚希望者避けにフンワリ婚約なんて、コーディリアもお茶目なこと考えてるし(笑)
一礼して退出する家庭教師補佐を笑顔で下がらせ、侯爵夫人は子女教育の進捗状況について今後を思いめぐらせるのだった。