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狐のお店  作者: 105 秋
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11/12

11:『うどんすき』


 「できるまで寝かせておいてやれ。」


 居間についたら月子さんはまた菜衣の膝枕で寝てしまった。


 「簡単に鍋でよいじゃろ。」

 「俺もやるよ。」


 手はまだ痛むけど包丁を握れない程じゃないと思う。

 しかし、材料ぶっ込んでおけば良いと思っていたら違うらしい。

 結局、指示してもらいながら作ることに。


 「なにはともあれ無事で良かったよ。」


 居間には聞こえないように話す。


 「本当じゃ。」

 「現代社会だとすぐに情報も広がってしまうしな。」


 下手したら今日にでもネットとかで広められていたかもしれない。


 「じゃが今の時代じゃから助かったのかもしれん。」


 包丁を持つ手が止まる。


 「昔じゃったらその場で殺されていてもおかしくはない。」


 何かを思い出すように言葉が止まる。

 昔何かあったのだろうか。

 俺には決して立ち入れないだろう。

 そう思い話しを変える。


 「そういや、俺の眼も光っていたのはなんでなんだ?」


 札も貼れなかったし、霊力なんてものが俺にあるとは思えない。


 「ふむ。」


 話しのそらし方が強引すぎたかね?。


 「まぁいい。鈴が鳴いたのは覚えておるな。」

 

 乗ってくれるらしい。


 「おう。」

 「あれは鈴が共振しておったんじゃ。」

 「確か親子みたいな物だからって言っていたよな。」


 昆布をしいたお湯が沸き鰹節を投入する。


 「瞳は狐同士の共振じゃ。」

 「俺は狐じゃないぞ?。」


 両親ともに人間のはずです。


 「お主が狐でないのであれば答えは一つ。」


 タイミングを見計らってお湯をこす。


 「生まれてこのかた人間一筋だ。」

 「鈴がお主を所有者と認めたのじゃな。」


 まるで鈴が意思を持っている様だ。


 「所有者と認められると、持っている間は狐に近い者となれる。」

 「近いってことは、人でも狐でもないってことか?」

 「だからといって術が使えるとか狐になれるとかは無いがな。」


 ちょっと残念。


 「精々、狐なんかと意思の疎通ができる程度じゃ。」


 それで、狐の姿に戻った菜衣とも話せたのかね。


 「それでも、今回は共振の一役を担えて菜衣の為になったんじゃ。じゃから役に立たないこともない。その鈴はお主が持っておけ。」


 断る理由もないしもらっておくか。


 「ありがたく貰っておくよ。」


 しばらくこのまま鍵に付けておこう。

 話しているうちに食材は全部切り終わったと思う。


 「入れないのか?」


 鍋には出汁が張ってあるだけだ。


 「向こうで作るんじゃ。これ持って行ってくれ。」


 コンロや器なんかを運ぶ。


 「あ、手伝います。」


 菜衣がそういうけど、月子さんが寝ていて動けないだろう。


 「いや、そんなに無いし大丈夫だよ。月子さん寝かしておいてあげな。」


 それに菜衣もなんだかんだで疲れているだろう。

 心も体も。


 「お次ぎはこれじゃ」


 ビール・・・

 まだ飲むのか。アル中狐だな。


 「なんじゃその顔は。月子が寝るように儂の霊力回復じゃ。」


 顔に出ていたらしい。

 まぁ、霊力回復でも何でも良い。


 「俺はとやかく言うことを諦めたよ。」

 「それは重畳。」


 言うだけ無駄だ。


 「やっぱり最後に言っておくよ。」

 「なんじゃ男が二言とは。」

 「飲み過ぎで体壊すなよ。」


 酒は良薬にも毒にもなるからな。


 「む、気をつけよう。それにしても、お主はやはり根は優しいのう。」


 俺は根だけじゃなく優しいつもりだ。

 材料と最後に瑞千穂が鍋を持って来て席に着く。


 「月子。そろそろ飯にするぞ起きろ。」


 瑞千穂の言葉で飛び起きる。


 「う〜ん。気持ちよかった菜衣ちゃんありがとう。」

 「いえ、私の所為でお疲れになったのですし・・」

 「そういうことじゃないの。私が気持ちよかったからありがとうなの。」


 だから気にするなってことなんだろうな。


 「でも。」

 「でもも糞もない。誰かが困っていたらできる範囲で助ける。当たり前のことじゃ。しかし、そんなに気持ちが良いのなら今度は儂も頼むかのう。」


 瑞穂千も月子さんも優しいな。


 「じゃあ俺も。」


 なので話しに乗ってみる。


 「大介は駄目じゃ。」

 「大介君は駄目。」


 別にお前らの膝じゃ無いだろうに。


 「セクハラじゃ。」

 「セクハラだよ。」


 ま、おとなしく引っ込んでおこうと思ったが菜衣はそうでもなかったらしい。


 「あ、あの私の膝でしたらど、どうぞ。」


 優しい子や。


 「やめときなよ〜。」


 月子さん何故そこまで・・。


 「妊娠するぞ。」

 「汚れるよ〜。」

 「ひ、ひどい。泣くぞ。」


 さすがに冗談だとわかったのか菜衣も笑顔を見せてくれる。


 「まぁ、大介が泣くのは放っておいて。」


 放っておかれるのも寂しいですけど。


 「菜衣の無事に乾杯じゃ。」

 「乾杯。」

 「ありがとうございます。」

 「かんぱ〜い。」


 俺もビールを口にする。

 ビールのこの一口目ってなんでこんなに美味いんだろうな。


 出汁を張った鍋に鶏肉だけを入れる。


 「いじるなよ。」


 触ると汁が濁るらしい。

 煮えたらまず鶏だけを食う。


 「出汁で茹でるだけでこんなに美味いんだな。」

 「鶏にも十分美味さがあるし出汁もたっぷり取ったからのう。」


 鶏が無くなりかけるとそこにうどんを入れる。

 鶏でビールが開いてしまった。


 「焼酎貰っても良いか?」


 お湯割りを飲みたくなった。

 そう思ったら瑞千穂の後ろにもう用意してあった。


 「ほれ。お湯ならそこじゃ。」


 火鉢の上にヤカンが乗っている。


 「あと梅干しもあるぞ。」


 さすがです。

 瑞千穂さん。


 「おうどんもおいしい。」


 月子さんがばくばく食っている。

 術を使うと腹も減るのかもな。


 「はい。大介さんもどうぞ。」


 菜衣が気を効かせて取ってくれる。


 「月子さん凄い勢いで食べますね。今日は飲まないのですか。」

 「後で飲むつもり。今はお腹が減っちゃって。」


 術を使うと腹も減るのか。

 うどんを平らげると、次は野菜や蒲鉾なんかを入れていくそれに鶏肉も追加。


 「こうして食うと鶏肉からも出汁がでるし汁が濁らないので飲みやすな。」

 「じゃろ。出汁も多めに作ってあるから足せるしのう。」


 俺の今までやっていた。全部ぶっ込んで作る鍋とは段違いに美味い。

 鍋とお湯割りで血行が良くなったのか右手の痛みが増してくる。


 「どうした。大介。」


 手を握ったり開いたりしていたら瑞千穂が聞いてきた。


 「殴った手がちょっと痛むんだよな。」

 「人は意外と固いからのう。殴り慣れてないと炒めたりするもんじゃ。」


 その言い方だと瑞千穂は殴り慣れているのか?とか思っちゃうが強いので聞かないでおく。

 まぁこれ以上痛くはなりそうもないので大丈夫だろう。


 「多分酒飲んだから血行が良くなったからじゃないかな。大丈夫だよ。」


 そう言ってこの話はもう終わり。



 そのうち月子さんも飲み始め結局、また泊めてもらうことにした。


 というより炬燵で勝手に寝てしまったみたいだ。



 まぁ菜衣もこんな日は一人で寝るより皆といた方が良いでしょう。

 

 

 

 それでは再びおやすみなさいzzz…

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