26歳までを綴る
私は、それから週に一回料理教室に通いながら、アルバイトを淡々と行った。
お店にいるスタッフはほとんど主婦さんで、人生の先輩としても様々なアドバイスをくれて充実していた。
太郎さんの誕生日の用意には、太郎さんの友達にサプライズでケーキを出すことくらいしか言わず、
あとは自分で考えた。
ハロウィンが近かったので、女の子用のかわいいワンピースを買った。それを太郎さんに着せようとしていた。いじられキャラの太郎さんから着てくれて盛り上げてくれると思った。
そして、クラッカーと顔面ケーキも買った。
そして太郎さんのタバコにメッセージを書いて、
プレゼントは乾燥肌の太郎さん用にハンドクリームを買った。
当日、また太郎さんはのうのうと遅刻をしてきたが、まあ15分遅れなら良しとしようと思った。
サプライズパーティーはまあまあ盛り上がり、太郎さんをいじって楽しんだ。
その時、サプライズの協力をしてくれたのは、太郎さんの友達の一平さんだった。
一平さんは一番早く居酒屋に着ていて、お店の予約をしてくれた。
そして、サプライズがうまくいくように、私に様々な協力をしてくれた。
パーティーが終わると太郎さんは友人の車に乗り、お礼も言わずさっさと帰って行った。
この時はもう、太郎さんの性格は分かっていたし、私の中でも恋心は全くなかった。
だから、不満もいだかなかった。
私と一平さんは家が近かったので、二人で代行を待ちながらたくさんの話をした。
一平さんはとても優しくほがらかな性格で私を癒やしてくれた。
そして、ほろ酔いの私たちのテンションはおかしくなりその後二人でカラオケに行き大いに盛り上がった。
帰り道、一平さんは楽しかったー!ありがとー!と私の頭を撫でてくれた。
私は、一平さんのことを好きになろう!と決意した。
でも、それからは一平さんからの連絡はほとんどなくなった。
私は、好きになりたかったので、あれやこれやと努力をしたものの上手くはいかなかった。
そもそも無理をして好きになろうって考え自体が間違っているのに、その時の私は、何に関しても全力討究だった。
そして、その後高校時代の同級生でどうしても仲良くなりたいと思っていた女の子、彩花ちゃんと連絡先を交換して会う約束をした。
彩花ちゃんは偶然、私が前に働いていたお店のフリーターの克也さんと同じ職場で働いていたので、久々の再会にと三人で飲みに行くことになった。
克也さんは相変わらず優しくて、私をたくさん誉めてくれて私は、有頂天だった。
彩花ちゃんとは、本格的に初めて話したが私が思った通りのほのぼのキャラで、さらに仲良くなりたいって思った。
私は、その時勇気を出して、彩花ちゃんに男の子を紹介してほしいと言った。
彩花ちゃんは、すぐいいよー!と言い携帯を触りだした。
次の日、紹介された男の子。名前はひろくん。
私と同じ25歳だった。
彩花ちゃんは平日休みの私に合わせて、介護士の仕事をしている踊るを紹介してくれた。
彩花ちゃんからは弟タイプの背の低い子だと聞いていた。
私は、弟タイプの男性ってことは甘えん坊さんなのかなあとか、ワクワクしながらラインを送った。
ひろくんからのお返事はいつも短くて、なかなか返すのが大変で、ひろくんはあまり私に興味がないのかなあと不安に思ったりもした。
けれど、ラインを続けているうちに、ひろくんはいい人そうだなあと思うようになった。
介護士の仕事をしているからか、ラインの口調は柔らかくそして返事はいつも返してくれていたから。
ひろくんはスノーボードが好きで、コーヒーが好きなことが分かったり、どんどんひろくんを知っていくうちに会ってみたいなあと思うようになった。
だけど、不安もあった。お互いに顔を知らないから会ったら嫌われちゃうんじゃないか。
それと、バツイチの私は恋愛してはいけないんじゃないか。
と後ろ向きな考えになったりもした。
ある日のラインで、ひろくんが銭湯が好きだと言っていた。私も銭湯が大好きなので、話はとても盛り上がった。
ひろくんが、私に足湯に行こうよ!と誘ってくれた。
そして足湯デートをすることになった。
11月某日。その日はとても寒かったので、かなり厚着をして、なおかつ足湯に入りやすい格好をした。
待ち合わせ場所にはかなり早く着いてしまったので、喫煙所で時間をつぶした。
その隣に男の子が座っていた。
彼は凄い寒い日にも関わらず、パーカーにパンツとかなり薄着だった。
私が、ラインをひろくんに送ると、隣にいる彼の携帯電話が鳴った。
この薄着の男の子がひろくんだ!!!
と笑いを堪えきれなかった。
見た目も優しそうな雰囲気が漂っていた。
ひろくんですか?と話しかけると、かなり挙動不審気味に彼はハイ!と言った。
そこからはひろくんの車に乗り込んで、昼食を食べに行った。
その車内、ひろくんはひたすらに喋りまくっていた。自分の職場の人の話、自分の小さな頃の話など止まらないマシンガントークだった。
私は、相づちを打つだけで一苦労だったのを覚えている。
そして昼食に行こうと私が決めたオシャレなパスタ屋さんに入ると、ひろくんはいきなり震えだした。
コーヒーカップを持つ手は震えすぎて今にもコーヒーがこぼれそうだったので、大丈夫?と聞いた。
ひろくんは昔から緊張すると手とか震える。と答えた。
その後、足湯に行った。ひろくんは終始震えていた。パーカー一枚だけじゃ寒くて当然だ。
かなり厚着をしていた私でさえ寒かった。
ひろくんは手を貸してくれる?
と言ったので私の手でひろくんの冷たい手を包むようにして温めた。
ひろくんに触るのは不思議と嫌ではなかった。
ひろくんの少し女性っぽい仕草が私を安心させたのだと思う。
帰りの車内でも、とにかくひろくんはマシンガントークを続けた。
私は、少しウンザリした。
正直第一印象は、友だちならいいけどお付き合いは考えられないな。と思った。
綾香ちゃんに、どうだった?と聞かれて、私はお喋りな男の子はちょっと…と正直に話した。
綾香ちゃんも、友だちになってくれたらいいなと思って紹介しただけだから、気にしないでね。
と言ってくれたので、友だちとしてラインは続けた。
その頃、突然いたるから電話があった。
私は、番号を消していたのではじめは誰だか分からず電話を取ることはなかった。
しかし何度も鳴るので、恐る恐る出てみることにした。
いたるからの要件は、俺のバンドのボーカルが入院することになったから次のライブで歌ってくれというものだった。
普通は自分をレイプした相手がそんな誘いをしてきたら断るのだと思う。
でも、私はそのバンドの音楽がとても好きだったのでひとまずバンドメンバーも加えて話し合うことになった。
その時にスタジオで私の歌声をおひろめすることになったので、私は何度も何度も貰ったCDと歌詞を書いた紙を使いながら猛特訓をした。
その時、私はすごく興奮していて、ひろくんにもバンドのボーカルになるかもしれないからライブ来てね。とウキウキで言っていた。
ひろくんも、凄いね!行きたいよ!と言ってくれた。
そして、おひろめの日。まずは、スタジオで顔合わせをした。昔とメンバーが大きく変わっていた。
私は、緊張が止まらずたどたどしく挨拶をした。
いたるは私を元カノで歌うまい子と紹介した。
私は、面倒で否定をしなかった。
いたるは付き合っている女の子がいて、結婚はしていないが、認知している子供がいるそうだった。
そしてドキドキのまま曲合わせが始まり
、楽器に合わせて歌った。
昔大好きだったあの歌を。
歌っている時はとても楽しくてノリノリだった。
一通り歌い終わり、私は外にでて、他のメンバーの話し合いがはじまった。
私は、それをドキドキしながら待っていた。
少し経って呼び出された。
皆の感想はとても辛口で、癖がありすぎるやらゴスペルっぽい歌声が鼻につくなど言われた。
誘ってくれたいたるまで、頭を抱えて昔はもっとうまかったよね。と言い出す始末。
私は、泣きそうになるのを堪えて皆の感想を聞いた。
しかし、結局ボーカルは私にお願いしたいとみんなは言った。
私は、考えさせてほしい。と答えすぐアパートに帰った。
帰り道、涙が止まらなかった。
ひろくんからどうだった?とラインが来ていたので、私下手くそだからダメだった。と答えた。
ひろくんは、凹んでる様子の私が心配だったらしく、今から行くよ!と電話をくれた。
でも、仕事があったので、断った。
バンドメンバーにおひろめする二週間程前、私はともくんとカラオケに行った。
二度目に会うひろくんは前に会った時と同じ服装をしていた。
でも、前みたいにマシンガントークをすることはなく私にも質問を振ってくれたりするようになった。
カラオケでバンドの歌をアカペラで歌った。
ひろくんはとても上手だよ!かっこいい!と誉めてくれ、私の特訓に付き合ってくれていた。
そしてカラオケから帰る際、ひろくんはクリスマスお互いに仕事で会えなかったからとクリスマスプレゼントをくれた。
私の吸っているタバコを自分で包装紙とリボンで包んだものだった。
私は、ビックリしたけれど嬉しかったのでありがとうと何度も言った。
結局、ボーカルの話は断った。何度も引き止めるいたるに何度も謝った。
それからいたるから連絡が来ることはなかったので、私は、連絡先を消さずそのままにしておいた。
1月。私とひろくんは三回目のデートをした。
私が行きたいと言っていたオシャレなカフェレストランに行くことになった。
お店に着いて、車から降りるとひろくんが私の腕に腕を絡めた。そしてそのまま手を繋いできた。
私は、久しぶりに男性から手を繋がれたことで、顔が真っ赤になってしまい。平常心を保つので必死だった。
お店の扉の前まできてやっと、恥ずかしいから手離そうね。と言って手を離した。
腕を組んで手を繋いでいたので腕は変な角度にクロスしていてかなり痛かったのを覚えている。
ひろくんはまた同じ服装をしてきていたが、店内の温度は暑かったのでパーカーを脱ぐように勧めるとひろくんは大丈夫だよ。と答えた。
その内、汗が止まらなくなったひろくんはパーカーを脱いだ。中に着ていたのはユニクロの毛玉だらけのニットだった。
とても恥ずかしそうにモジモジしているひろくんが面白かった。
二人でとても楽しく話していたが、私は不安もあった。手を繋がれたということは今日それ以上のことがあるのでは?と不安になっていた。
この時の私は、全く男性に慣れてなくて自分がどうしたらいいのかが分からなかった。
そして、出会って三回目で付き合っているわけでもないのにそういうことをする人なのかと少し軽蔑した。
私は、食事中ひろくんが席を外した時に綾香ちゃんにラインを送った。
どうしたらいいかな?と綾香ちゃんにラインしたが、既読が付かなくて見てないようだった。
私は、お店をでるのが怖かったので少しでも長くお店にいれるようにゆっくりオムライスを食べた。
しかし、時間はあっという間に過ぎていった。
お店を出て、私はすぐさま腕を組んで鞄を持った。
そうすれば手も繋がれないし腕も組まれないと思ったからだ。
車に乗ると、私は今まで聞かなかったひろくんの恋愛事情について聞いてみた。
すると、ひろくんは中々渋って言ってくれなかったのでとにかく問い詰めた。
困った様子のひろくんは言いにくそうに話してくれた。
ひろくんは今まで付き合った人数は一人。それも、一回デートしただけで振られてしまったそう。
そして、女性経験は二人。
元カノとその前に出会った年上の女性だと言っていた。
年上の女性にも出会ってすぐに性行為をして、告白すると振られてしまったらしい。
ひろくんはとても恥ずかしそうに話していた。
私のことは聞かれなかったので特に何も言わなかった。
話しているうちに、イルミネーションが綺麗なところへ着いた。
ひろくんはとにかく綺麗な景色が好きで、イルミネーションも凄く綺麗だね!と興奮している様子だった。
そのままのテンションでひろくんはいきなり私を抱きしめた。私は、呼吸困難になりそうなくらい緊張してしまい振りほどくことができなかった。
ひろくんは好きです。付き合ってください。
と私に告白した。
私は、ひろくんにどうして?私のどこがいいの?と聞いた。
ひろくんは優しくて、みんなに思いやりのあるところが好きと言った。
私は、ひろくんは不器用だけど純粋な人だと思った。
色んなことを隠している私が付き合う資格はないと思ったし、まだ三回しか会ってないのに心の準備が整わないとも思った。
そして、ひろくんに返事考えさせてもらえるかな?
と恐る恐る聞いた。
ひろくんは分かったよ。と言ってくれた。
それからもひろくんとはデートを重ねた。
でも、私は返事を言うことはできなかった。
紗耶香に相談すると、早く答えてあげるのが相手のためだよ。待っている方は辛いと思う。
と言われた。
デートを重ねていくうちに、ひろくんは私にキスをせまるようになっていた。
私が、拒否をするたびにひろくんは付き合ってないのにごめんなさい。と反省している様子だった。
私は、恋愛ベタだけど、一生懸命で素直なひろくんに惹かれていった。
でも、私の過去を言うべきかとても悩んだ。
結局言うことにしたのだが、勇気がなくて何度も言おうと試みたができなかった。
ある日二人で県外のイルミネーションを見に行くことになった。初めての遠出デートだった。
ひろくんが道を間違えて一時間程時間をロスしたが、無事イルミネーションスポットへと到着することができた。
その頃には、私はひろくんと普通に手を繋ぐようになっていた。
そして、イルミネーションを見ながら私とひろくんはキスをした。
ひろくんはとても嬉しそうだった。
私は、その時もう包み隠さず過去のことを言おうと決意した。
帰り道、自分がバツイチであることを明かした。
そして、こんな私を受け入れられるのであればよろしくお願いします。と言った。
ひろくんは、私の頭を撫でながら言った。
辛かったね。これからは俺がいるから。
私は、振られると思っていたのでビックリして泣いてしまった。
そうして、私はひろくんとお付き合いすることになった。
それからもたくさんの思い出を作っていき交際は順調だった。
頼りないところもあったが、優しくて思いやりのあるところにどんどん惹かれていった。
それに伴い仕事も順調でとてもうつの調子が良くなってきていた。
だが、この後私に人生最大の悲しみと試練が待っているとは思いもしなかった。
続く。




