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繰り返し確認する


夜明け前には起床して、ベッドに寝転がったままステータスを表示。

昨日消費した魔力は満タンまで回復していた。


(よし。昨日の召喚で消費した十の魔力は、ちゃんと全回復してるな!)


孤児院とはいえ出入りの商人や、いくつかの理由でこの施設を訪れる者はそれなりに存在し、院長とシスター以外の大人にも、俺達が接する機会はそれなりにある。


そういう大人の中から、なんとなく子供が好きそうな者を捕まえて、世の中のことを聞いていた時期があった。

魔物のことだとか、魔法のことだとか、とにかく孤児院の中だけでは知る機会のない、そうした情報に飢えていたんだと思う。


シスター達はこっちを完全に子供扱いしてくるため情報は勝手に選別されて、望むような内容を与えてはくれない。

俺達を慮(おもんばか)ってのことなのだが。


なんにせよ、いつぞやの大人が教えてくれた、魔力の回復数値が正しかったのだと、確認できそうだ。

曰く、魔力の回復値は寝ている状態で時間あたり一割半〜二割、起きて身体が活動している時なら、時間あたり一割前後と聞いていた。

個人差もあるようなので、確認作業は毎日続けるつもり。


この後、教会の鐘が聞こえればすぐに太陽が顔を出し、それを以て皆が起床する合図になる。

朝食を摂る習慣は、この施設に限ってはないけど(他の家庭は知らない)、せっかく魔力も満タンなんだし、四貫くらい食べておこう。

布団代わりの麻の布を被って、ひっそりと。



さて、起床したら今日からは、先輩孤児に加わっての、本格的な手伝いに参加しなければならない。

内容は隣接する畑での農作業、院内の清掃と修繕、井戸を往復しての水汲み、根菜の皮むき等の食事の下ごしらえといった複数がある。


十歳から十三歳になるまでの三年間、シスター達に教えを請いながら、社会に出ていくための練習を兼ねて、手伝いという名の労働に勤しむわけだ。


十三歳で各種ギルドに登録ができるようになるため、十三歳〜十五歳までの孤児は素養(適性)次第でそれらに登録し、孤児院の外で働き始める。

ともあれ今日の俺の役割は、農作業に決まった。



◇



午前中の手伝いを終え、待ちわびていた昼食の時間になった。

この世界の労働スケジュールは前世と少し違いがあって、正午前の十一時から昼食を摂り始めて、午後一時までゆっくりと休む。

そして、前世にはあった午前と午後の小休憩はなし。


夜が明けるのと殆ど同時に社会が活動を始める文化だから、帳尻は合っているのだろう。

昼から夕食までの時間も短めだし、これはこれで俺には好ましい。


起床時に減った寿司四貫ぶんの魔力は、しっかりと回復されている。

定位置の二段式ベッド上で、自分の昼食を始めよう。


この昼食では握り寿司以外のものを召喚してみる予定で、農作業をしながら悶々と考えていた。

転生を機に信仰心が爆上げしたわけじゃないけど、祈るように掌を組み合わせて、恩恵をイメージした。

そして現れる、丸い皿に乗った手巻き寿司。


(あー見覚えというか自覚あるなあ、この下手くそな手巻き寿司……)


実家暮らしの学生時代、年に数回の頻度で夕食時に用意された、手巻き寿司を作るための、各種具材一式。

それらを思い出す。


下手くそというか欲張りな俺は、だいたい海苔に色々と盛りすぎて、巻くのが困難になるまでがデフォルトになっていた。

ちゃんと巻かれてないから食べ難く、でも食いでがあるから家族に指摘されても、ずっとこのスタイルを貫いていた。

デブっとしたフォルムも懐かしい。


(忘れてた、肝心な魔力消費は……おお?)


減った魔力は一のみで、握り寿司一貫と同じだった。

一目でその質量の大きさを察知できてしまうデカさなのに、なんとも経済的な魔力消費量で助かるが……。


(バグかなにかかな? 簡単に大量カロリー摂取できるぞこれ。握り寿司換算で四貫くらいあるだろ)


食べたことがあるものに限り、お寿司を召喚できるという、恩恵の説明が真に正確なことを実感する。

どう見ても、目の前にある内包量マシマシな手巻き寿司は、過去に俺が作った(巻いた)ものだ。

心当たりがある。


実家以外で手巻き寿司を食べた経験はないから、これしか選択する候補がなくて、そのまま召喚されているんだろう。


ポイントは、カレーライスを選んだ場合に存在したであろう〔召喚した量や品数で消費魔力の増加あり〕の設定が、お寿司側では無視というか、適用されていない点だ。


(恵方巻きとか、ど、どうなるんだ?)


前世での生まれ故郷、実家のある地域には、これといって恵方巻きを食べる文化はなかったものの、就職や転勤で滞在した、幾つかの地域では少なからずあった。


ある時期、趣味にしていた山歩きで知り合いになった女性から懇願されて、付き合いで購入したのが経緯。

それが唯一の、恵方巻きを食べる機会になったけど、それが無駄にならずに今、世界を跨いで役に立ちそうだ。


結果、消費魔力一ポッキリで、やたら豪華な恵方巻きが召喚された。

ちなみに件の女性とは、全くなにも、素敵なイベントは発生しなかったことと、勤め先が某デパートだったことを思い出した。


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