恩恵ゲット
「この水晶に手を乗せるがよい」
冷たい声で司祭が言った。
全ての人は十歳になると、祝福の儀式を経て神からの恩恵を授かるらしい。
最低でもステータスを貰うことができて、稀にだけど強い剣技や魔法を授かる人もいるのだとか。
俺に関しては既に貰える恩恵が決まっているから過度な期待もないし、無駄に不安にもならないんだが……。
白い空間で神と名乗る存在に会い、理不尽ともいえる? 二択を強要されて、転生は成された。
歳を重ねる度に少しづつ、前世の記憶が蘇っていく方法で。
とはいえ、必要な情報がまだまだ不足しているのも確かで、前世の人生は中途半端にしか思い出せない。
自分の名前と年齢、死因も不明。
結婚していたのか、子供を授かっていたのかも、わからないままだ。
恋人の有無なんかも。
仕事を含め生きてきた様々な経験の大部分は自分の中に蓄積されている(と思っている)けど、何故かしっくりこない、みたいな感覚がずっとある。
だからこそ、今日の儀式によって足りないものが補完されることを、願ってはいた。
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氏名 ダリル
性別 男
年齢 十歳
職業 なし
生命力 二十三
魔力 十六
技能なし/魔法なし
〘恩恵〙お寿司
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水晶に手を乗せて少し待つと、文字が記載された半透明なスクリーンが、宙空に現れた。
どれどれ、色々とよく見てみるか。
「儀式は終わりだ。速やかに退去せよ」
と思ったら司祭に早く帰れと怒られた。
感じ悪いなこいつぅ。
そりゃあ今は小汚い身なりをしているけど、子供には優しく接しろよハゲがっ(ハゲてない)
まあ、通常ならそれなりの喜捨が必要な儀式を、身元が孤児院所属だという理由で無料でしてもらったんだから、表立っての苦情は言うまい。
さっさと帰ろう、来た時と同じ一人ぼっちで。
俺が転生してきたこの世界はペルシウラという名称(惑星の名か?)で、暮らしているのはパーメンタース王国の地方都市。
国内で二番目に人口の多い街だという、ガリライゾの街。
南北にある孤児院の北側にあたる施設が俺の戸籍がある(戸籍はない)、実家ともいえる場所になる。
ものごころついた時には孤児院に拾われていて、両親共に安否不明、家柄も不明。
記憶の中にも親に関するものは一切ないため、清々しい程の天涯孤独な出自で以て、俺の新たな生はスタートした。
もっとも前世の親姉弟については明確に憶えているから、むしろ好都合なのかも知れないけど。
あ、思い出した!
そういえば、ぼんやりとしか神とのやりとりを憶えていなかったのに、詳細に記憶が蘇ってきたぞ今!
カレーライスかお寿司、どっちかを選べと半ば強制的に二択を迫られ、今生のメニューを一種類に決められてしまったと記憶していたけど、詳細はこうだった。
☆カレーライスを選んだ場合☆
※地球に存在する全てのカレーライスを召喚できる。
※食べたことがあるものに限り、カレーと名のつく食べ物ならば、全てを召喚できる。
※任意で無段階に辛さと量の調節ができる。
※一食分で魔力を一消費する(量や品数で消費魔力の増加あり)
☆お寿司を選んだ場合☆
※食べたことがあるものに限り、お寿司を召喚できる。
※任意で薬味と調味料を選択できる。
※お寿司一貫につき魔力を一消費する。
そうだった。
細やかな内容を確認して、その際めちゃくちゃ悩んだんだ俺……。
パッと見でもう、カレーライスを選んだ場合の自由度が高すぎる! この条件なら〔おかず〕もだいたいカバーできるじゃねーか! 卑怯だろこれ! ハンバーグカレーを召喚して白飯の部分とハンバーグでハンバーグ定食じゃんインチキ野郎がっ!
しかも揚げ物なんか殆ど全品をチョイスできるよなこれ! 天ぷらとかは無理だけど。
いや、揚げ物だけじゃなくて、不足しがちな野菜の類も全部だわ。
生ものと果物系がないだけで(怒)
それにひきかえ、お寿司の自由度のなさよ……。
しかし俺は寿司を選んだ、選んでしまった。
やっぱり失敗したのかな?
なんにせよ今日この瞬間から俺は、お寿司以外の食べ物を食べることができなくなったのだ。
間食やデザートも含めて。




