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ひよこゲット


順調に金が貯まり、現在進行形で増え続けてもいる。

ということで鶏を買いにいった。


専門で鶏肉と卵を扱う畜産業者があって、俺達子供からすれば鶏屋さん。

城壁の外にあるから門を護る門兵に事情を話して歩いて向かう。

無駄に誰かを心配させるのも気が引けるし。



「こんにちは〜」

「はいはい、どなた?」


柵に囲まれた広い土地で、放し飼いにされている鶏達。

背を向けて作業をしていた女性に話しかけると、振り向いて誰何された。

丁度、俺の母親世代かな?


「すみません作業中に。僕は孤児院から来たダリルと申します」


俺の返事を聞いて、あからさまに暗い表情になる女性。

おそらく物乞いかなにかと思われているんだろう。

あまり意識せずに要件を伝える。


「鶏を譲ってもらいたくて。お金なら持ってますから」

「……」


疑っているのか俺のことをジーと見ている。



「どうして鶏が必要なんだい?」

「ああ、はい、番いで育てて少しづつ増やしていって、卵が採れるようになれば、孤児院の食料にできるかと思いまして」

「生き物だから餌も食えば水だって飲む。あんたお世話できるのかい? 餌だって毎日用意しなくちゃならないんだよ」

「はい、餌のあてはありますから。孤児は人数も多くいて、世話をする人手に事欠かないですし」

「ふうん……少し待っときな」


そう言うと女性は奥の小屋からひよこを何匹か籠に入れて戻ってきた。


「雌だけ五羽入ってる。鶏を入れる小屋は用意できるのかい?」

「はい、近いうちに用意できます」

「じゃあ取り敢えずこれで育ててみな。育てることができて、もっと鶏が必要になったらまたおいで」

「はい、ありがとうございます!」

「わからないことがあったら聞きにくるんだよ」

「はい、ありがとうございます。それでいくらお支払いすれば?」

「今日はいらない。次からは取る。憶えておきな」

「は、はい! ありがとうございました!」


ひよこの入った籠を抱え、ホクホクとして帰った。

元はこのために始めたバイトだったが、タダで譲ってもらえるとは有難いことだ。

しかし無駄とは言わない。

じいちゃん達も大切な存在だからね。


この日から俺は度々鶏屋さんに足を運び、育て方やコツのようなことを教わった。

この縁は後に孤児院を出てからも続く、長いものになる。


ひよこを持ち帰ると案の定、孤児達は喜んだ。

餌やりを巡って自分がやると競い、一緒に寝たいと駄々をこねる子も。

院長にはタダで譲ってもらえたことを説明し、なんとか孤児院で所有し飼育することの許可を得た。


餌はバイト先で野菜くず(外側の傷んだ部分や硬い芯)が手に入るし、肉だって傷んだものや脂、ぶっちゃけ残飯でもいいかも知れない。

畑のミミズや昆虫などもあてにできそうだし、なんとかなるだろう。



鶏を育てる上で問題も出てきた。

生き物だから、どうしても食べるもん食べたら出てしまう、運が。

そのまま畑にばら撒くのはまずいらしく困っていたら、喜んで引き取ってくれる業者があった。


彼らは鶏に限らず色々とそういう(・・・・)モノを集めては肥料に変えて、農業の方に回すらしい。

なので穴を掘り、量が集まるまで貯めてから引き取ってもらえることに。

蓋をして匂いを防ぐが、完全にとはいかなかった。


・

・

・


ひよこの成長は早く、半年も経つと産卵する個体が出始めた。

雌だけの無精卵だから、ありがたくスープの具材になってもらう。


飼育環境が城壁内で鶏を襲う獣がおらず、院の畑で伸び伸びと運動する鶏達。

雌だけだから酷く鳴くようなこともなく、僅かにコッコッと鳴くだけだ。

飼いやすく、孤児院で飼育するのにぴったりだった。


次のグループを購入して、さらに卵を増やしていこうか。



「早いもんだねえ。もう半年以上かい」

「あっという間でしたね。卵を生むまで」

「次も五羽でいいのかい?」

「はい。餌の都合もありますし、様子を見ながら増やせればと、思っていますので」

「じゃあ悪いけど銀貨一枚、今回は貰うよ」

「はい、勿論です。お受け取り下さい。そして今までありがとうございました」

「なんだい改まって。有り難くもらっておくよ」

「はい!」


今までは生まれた卵は全て自家消費、孤児院で食べている。

孤児の人数が三十を越えるため、スープの形でだったが(ゆで卵なんかは数が足りない)


今回鶏を増やすことによって、また半年後には得られる卵が増える(予定)けど、それは売ってしまって、他の塩だとか胡椒(正確には胡椒ではなく迷宮に棲息する魔物の角)なんかに変えてほしいと考えている。


まあ、使い道は運営側が考えればいいと思うけど。

バイト先を始め、買ってくれそうな店はいくつか心当たりがある。



◇



暇を潰すことを目的にして思い立った飼育だったけど、世話は孤児達に奪われて、卵の収穫も孤児の日課になってしまった。

また何かを見つけなければ。


オセロや五目並べ?

個人的に楽しむとしても、すぐに露見して模倣もされて、誰かが売り出す未来が見える。


孤児院で最初から最後まで自力で生産して、独占するみたいなやり方も無理かなあ。

資金が必要だし、人員的に孤児院にそこまでの能力は期待できない。


幼い子が多く、作業を任せられる者なんて一握りだ。

中途半端は誰かにパクられて、見知らぬ誰かを大儲けさせてしまう。

それは悔しいだろう。

どうしたものか。


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