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バイトゲット


じいちゃん達にちらし寿司を奢った俺だったが、くれぐれも他言無用だと念を押して、お願いしておいた。


口に合う合わないはあるかも知れないが、僅かな魔力で召喚できて、しかも調理をする必要のないそのまま食べることのできる安全な食事。


場所を問わず召喚できちゃう自動ドアならぬ自動ご飯。

攫ってでも奪おうとする者がいても全然不思議じゃないわけで。


例えば山中を拠点にする盗賊達。

山を下りて食料を調達する必要がなくなるため、そういう訳ありの者達には魅力的に映るだろう。


傷んでいることもなく、出してすぐなら間違いなく新鮮だし、バリエーションも豊富だ。

魔力の効率が良いちらし寿司なら、ちょっとした集団なんて楽に賄えそうだし。

永遠にご飯くれるマンになるつもりはないから、用心に越したことはない。



で俺はというと、ここで働くことに決めた。

希望の時間(お昼絡みの三時間)で働けるし、店主も気のいいじいちゃんだし。

日曜だけは店も休むそうなんで、週に六日のバイトになりそうだ。

三時間の労働で給金は銀貨二枚を約束してもらえた。



◇



「こんにちわ〜」

「ダリルちゃんこんにちは。二人分をお願いね。水割りも」

「はい、かしこまりました」

「まあ、いつも礼儀正しくて偉いわね」


働き始めて数日が経った。

客達はやはり年配者が多く、今入ってきたのもばあちゃんの二人連れ。

〔いらっしゃいませ〕は通用しないため、普通に日中に交わす挨拶になる。


おしながきという意味でのメニューはなくて、今のように暗黙の了解で〔昼食〕が出される。

とんな内容かというと、薄切りのパンが必ず二枚つき、それにスープもしくは水炒めをして煮詰めたような〔おかず〕が付く。


仕入れによる違いはあるが、ボロネーゼのソースを煮詰めたようなもの、といえば伝わるだろうか? シャバシャバしてない感じの。


とにかく小さく切った肉に刻んだ野菜を加えて炒め、さらに煮詰めて味を付けたものが食事内容になっている。

スープの場合は塩で味をつけた普通のスープで。

そこに別料金の飲み物(殆どワインの水割り一択だが)を付けるのがデフォルトみたいな感じだ。


ステーキやサラダを注文したい場合は、店主に出せるかどうかを聞いてからの個別注文になるそうだ(そういう注文をする客をまだ見ていない)


俺の仕事は昼食を配膳すること、その際に代金を頂くこと。

多少のコミニケーションを混じえながら、飲み物やスプーンも持っていき、客が帰れば器をさげてテーブルを拭いて綺麗にする。

必要があれば、パンを切ったり。


あとは食器洗い。

食器といっても木製のサラダボウルみたいのだから、割れはしないし気は楽だ。

スプーンやフォークにしても木製だし、ナイフの類は客の自前だから洗い物は少ない。

金属のカトラリーなんて盗まれそうだしなあ。



客の多くは十一時から十三時にはやってきて昼食を食べて帰っていく。

一部の常連がだらだらど居座るけど、別に問題ない。

席も殆どが空いているし。



そして、この店の半分を埋めるようなガラクタ? の数々は、代金の足りない者や、そもそも金を持たない者達から代金の代わりに受けったり、押し付けられたり、奪い取ったりした成果物というか結果なんだそうだ。

やっぱりお人好しかと納得するけど。


その中から白に近い生成り色のチュニックを譲り受けて、俺の制服代わりにしている。

シスターの協力でサイズを手直しした上で。


洗い物の際に飛び散る水しぶきが気なるから、次はエプロンが欲しいところだ。

靴も欲しいところだが、成長する子供の間は勿体ないが勝つ。


手の空いた時間はなるべく客の視界に入らない位置で立って待機し、その間にも入店や客の動向を気にかける。

スプーンを落としたり、飲み物の入ったコップを倒してしまうこともあるから。


そうやって働く俺の姿は、この世界の人達にとても真面目に見えるらしい。

たぶん子供や孫を見るような、甘い採点基準のせいもある。


そうした評判もあって、結構チップが貰える。

銅粒とかのささやかなものだけど、何年か続いたら塵も積もりそうで非常に助かる。



飲食店とあって、ついやってしまいそうな噛むのが楽で食べやすいハンバーグを作るとか、マヨネーズを作るみたいなことは自重してすごしていた。

どうせ自分で食べることはできないし。



(仮に巨大なハンバーグを作って恩恵で出したハンバーグの寿司とハンバーグだけを入れ替えたら、ハンバーグの寿司として巨大なハンバーグを食うことができるのか? 謎だ)


(いつか試さないとな。それが可能ならステーキとか唐揚げだっていけそうだし。確かにお寿司しか食えなくなったけど、自分で作った寿司は駄目みたいな縛りはないはずだからな)


(自分じゃ口に入れられないんだから、逆にいえば口に入れられたら食えるっていうか、食っても良いみたいになればいいけど……いつか実験するしかないか)


(ああ、カレー食いてぇー)



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