バイトありそう
それから俺は、即座に平謝りの姿勢に移行した。
「失礼にも、ずけずけと好き勝手なことを言ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。僕のような孤児の話を、親身になって聞いて頂けただけでも感謝するべきなのに、そんなこともわからずに、生意気ばかり言ってしまいました。本当にすみませんでした!」
じいちゃん達が、ポカーンと硬直している。
まあ、それでも俺は頭を下げ続けるのだが。
ほどなくして、三人のじいちゃんが再稼働した。
「なんだよ急に。別に、そんなに謝られることでもねーよ坊主」
「そうじゃぞちびっこいの。どうせこの店は二階の居住スペース込みで、こやつの持ち物なんじゃ。ちびっこが考えてるより、楽に暮らしているはずじゃわい」
「そうだのう、なんだかんだ儂らみたいなじじいが相当な人数、ここへ飯を食いにきとるしのう」
「いえ、それにしたって相手の気持ちをよく考えもせずに、失礼な物言いをしたのは確かですから。重ねてすみませんでした」
「いつまでも煩え坊主だなー。いっそのこと雇っちまうぞ?」
「そうじゃ、試しに働かせてみたらいいのじゃ」
「駄目ならその時にまた、考えるのもありだの。ほほほ」
「いや、ちょ、そんな、なんでそうなるんですか、これ以上ご迷惑はかけたくないですから本当に」
まずい、なんか変な方向に進んでる気がするぞ? じいちゃんトリオ。
ムキになってるのかなんなのか、徐々に彼らの圧力が増しているんだが、気のせいか?
「まあ、坊主が働くってーのなら俺は雇うぜ? もう決めたわ」
「だいたいケイボリック、お主が毎日の酒を二〜三日ヤメたら済むんじゃ。ちびっこの給金程度、簡単に捻出できるじゃろうに」
「そうだのう。毎日銀貨の六〜七枚は酒に消えとるからのう」
「……?」
「ん? 坊主の給料、そんなに必要か?」
「大銀貨が一枚もあれば足りそうじゃが?」
「子供といえ、大人の半分というわけにはいかないの。しっかりした子だしのう」
「いや、ちょと待って下さい! 銀貨が六〜七枚? 大銀貨? いったいなんの話でしょうか? 僕は一日に銀貨を一〜二枚でも稼げたら大満足ですよ? 働く時間も、そんなに、丸々一日みたいには無理ですし」
銀貨一枚は俺の中で千円のイメージだから、じいちゃん達は俺のために五千円〜七千円の報酬を考えていることがわかった(おそらく一日きっちり働いた日給だと思うけど)
しかし、元々俺的には、忙しさがピークになる時間帯だけ働けたらいいと、考えていたんだよなあ。
店側としても、それが無駄のない人件費の〔使い方〕だと思うし。
例えば十一時〜二時までの三時間みたいに働き、子供だから時給を五百円と仮定すれば、三時間の労働で得られる給料は、銀貨一枚半。
そういう働き方で十分目標クリアだったのに……こっちとしては。
「なんだあ? てことは、朝の仕込みから日没の閉店まで働くわけじゃねーのか坊主?」
店主が確認してくるけど、朝は走り込みと素振り、それから孤児院の作業をこなし、夕方は日没までという門限もある。
どうしても現状では、一日フルでは働けない。
そこらへんの認識の違いというか、俺側の内情を伝え、一応は納得してもらえた。
実際に働くかどうかは一度持ち帰り、じっくりと考えた上で、こっちが決めていいそうだ(優しすぎるだろうが!)
「じゃあ、働きたくなったら、いつでも言いに来いよ坊主? それはそうと、なんか食っていくか?」
「いえ、食べたいのは山々なんですけど、僕には恩恵の制約みたいなのがあって、食べれないんですよね」
「なんだと? 俺の飯が食えないっつーのか、ああん?」
「なんじゃそれは? そんなもん、聞いたこともないわい。どういうことじゃ?」
「儂も初耳だのう。恩恵が足を引っ張るとはのう」
「いやいや、本当のことでして。困ったな……」
「どういうことだってんだ?」
面倒だけど、この人達には誠実でいたいからなあ。
スキルのことを、正直に打ち明けてみるか。
どうせここで働くなら、知らせておかないと困ることもあるかも知れないし。
てことで、俺の恩恵を簡単に説明してみた。
「そりゃあ、また珍妙な恩恵じゃなあ」
「そうだのう、稀に伝え聞く変わった恩恵だのう」
「食い物もらえるたあ、最高じゃねーか」
この世界の水準からすれば、最高なのは間違いない。
なんたってお寿司だからな。
日本人が皆、大好きなたけある。
でも、どんなに好きでも、それしか食えないとなると、一気にキツく感じるんだよなあ。
頑張って稼いで鶏を入手し、お世話をして新鮮な卵をゲットしても、お寿司にしないと食べれないんだ。
マヨネーズを作ろうが、プリンや茶碗蒸しを作ろうとも。
この先一生、味わうことはできない。
あらためて確認できて落ち込むわ。
「おい坊主、で、美味いのか? その恩恵でもらえる食いもんは?」
「ああ、いくつか種類はありますけど、基本的には海の魚ですよ、生の」
「なんじゃと!?」
「な、生といったかの!?」
「ほーう。面白くなってきたじゃねーか」




