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バイトなし


軒並み断られること十数件。

心が折れる寸前の、モチベや集中力も吹っ飛んだ状態。

ふらふらと彷徨うように、街の中心部から次第と足が離れていく。


四方にある城壁の門へと続く、東西南北の大通り。

それぞれの大通りを進み、城門を抜けた先には各地へと繋がる街道が伸びる。

すっかり意気消沈してしまい、我ながらとぼとぼと俺は、南の大通りを歩いていた。


二十万をこえる人口に相応しく、人の往来はかなりのもので、油断してると他人にぶつかりそうな人の数ではある。

まあ、日本の大都市やイベントの場に比べたらスカスカのスカなんだが。


そんな感じで日本と比べ、なんとなく勝ったような気持ちでいたら、いつの間にか大通りを外れた裏小路に迷い込んでいた。


そしてそこで、角地に佇む風変わりな店を発見した。

大きく開け広げられた、両開きのドアが数カ所。

明かり取りの窓と相まって店内は明るく、じっくりと観察できた。


まず、店内に客席が少ない。

空間の半分くらいにしかテーブルと椅子は置かれておらず、残りの空間には色々な物が乱雑に置かれ、または壁にかけられたり棚に積まれたりして小山を作っている。


時間的な違和感もある。

宛もなく彷徨うように、ぶらぶらと歩いていたため、時刻は十四時をとっくに過ぎているはずだ。

街中の、ほとんどの飲食店は、中休み(中休憩)をとる。

その内情は昼の片付けだったり、夕方の営業に備えての仕込みだったりで、本当の意味で休んでいるわけじゃないと思うけど。


店内にはカウンターに一人、テーブル席の一つに二人の客。

全員が年老いた、おじいちゃん達。



「こんにちは〜」


他とは異なる店内の様子に、わくわくしながら自然と出てしまった挨拶の言葉。

復活したらしい俺のモチベ。


「なんじゃ? これまたちっこいのが入ってきたもんじゃな」

「ふむ。飯を食いにきたのとは、ちと様子が違うようだのう」


位置が近かったからなのか、テーブルの二人組が俺に意識を向けた。


「ちびっこいの。残念じゃが、ここの店主はそりゃあもうケチで有名でな? 施しなんぞありゃあせんから、他をあたった方がよいぞ? 鬼のような店主なんじゃ」

「そうだのう。儂らも食い終わってるからのう。分けてやれるもんも、なんもないからのう」

「ああ、いえ、施しが欲しくて入ってきたわけではないのですよ先輩方。僕は仕事が欲しくて、働き口を探しているんです」

「なんじゃ仕事がしたいのか? 確かに儂らはうーんと先輩じゃがな。なかなか面白い言い回しじゃて」

「確かにこれくらいで働き始める子らもおるけどのう……」

「お給料も僅かでいいんです! まずは働かせてもらって、駄目なら首でも構いませんし、賄いも必要ありません」

「ちびっこの割に殊勝なことじゃ。じゃが果たして? 初めは皆、良いことばかり宣(のたま)う」

「誰だって自分の悪いところを、わざわざ自分からは教えないのう。当たり前のことやも知れんがのう」

「なんなら初めはお給料なしで、試しに僕の働きを見てもらうだけでも構いませんが? それでも必要ないでしょうか?」

「そこまで言うなら聞いてみるしかあるまい。どケチで鬼のような店主じゃが、人を見る目だけは、なかなかのもんじゃぞ」

「ケイボリック、どうするのかのう?」


ニヤついた二人がカウンターの人物に問う。

他に店の人らしき人物が見当たらないから予測の範囲たけど、あっちが店主かーい。

どっちみち聞こえてただろうから、特に不都合はない。


小柄な二人とは違い、振り向いたカウンターの爺さんは身長が高く、ガタイだけはとても若々しく見えた。

木製のカップを揺らしながら、爺さんが口を開く。


「それなりに口は回るみたいだがな坊主。どうして働こうなんて思ってるんだ? 身なりを見りゃあわかるが、給料がいらないなんてことはないよな? 何を考えてやがる?」


(おお、この人はチビの俺に対しても子供扱いは軽い感じだな。こういう接し方の方が、こっちも色々とやりやすい)


それから俺は自分の生い立ちと境遇、比較的近い将来の目標と、そのために必要な準備等、働く理由を順序立てて話していった。


「迷宮に夢見た若い奴らが帰ってこねーのは、ここいらじゃ珍しくもなんともねー日常茶番時だからな。坊主のいう準備とやらも、間違っちゃいねーよ。ただなあ……」

「ケイボリックよお。今のお前でも小間使いの一人や二人、抱える甲斐性はあるはずじゃろ?」

「なじみの年寄りしかこないからのう、この店……」


(あれ? 結構同情的、というか俺を雇うことじたいには、反対意見がなさそう?)


「えーと、どうすれば働かせてもらえますか? 何か問題があるのなら、教えていただきたいのですが? 僕に出来ることなら協力したいのです」


ぐいぐい押してく俺に対して、店主が渋々と答える。

店の現状、古くから付き合いのある顔見知り以外に、この店を訪れる客はほとんどなく、売上げから仕入れまで、それはもう決まりきっていて、収支もバッチリ安定しているのだそうだ。

超低空飛行で。


いくら子供といっても、働かせるからには給料はそれなりに支払いたい、大人より少なくて済むとしても。

でも、正直それでもキツい。

毎月プラマイゼロみたいな経営状況なのだからと。


(あああ、失敗した。言いづらいことを言わせてしまった……子供相手でもこんなこと、言いたくなかっただろうに。これは俺が悪いわ)


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