↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤高の狩人はやがて皆の希望に   作者: 白狐 緋宵
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/48

置いていかない、絶対に




「……みんながいなくなっても、私だけ、ひとりで、生き続ける。

 それが、すごく、こわい。

 みんなを置いていっちゃうの……いや、だよ……っ」



 夕暮れの赤い光が差し込むリビングで、ボロボロと大粒の涙を流す雫。


 その小さな肩は、今まで誰も知らないところで一人きりで抱え込んできた、果てしない未来への恐怖でガタガタと震えていた。


 静まり返る部屋の中で、真っ先に動いたのは澪だった。



「――な~んだ。そんなこと?」



 澪は、涙を流す雫の顔を両手で優しく挟み込むと、無理やり自分の方へと向かせた。

 そして、いたずらが成功した子供のように、ふにゃりと、けれどどこまでも力強く微笑んだ。



「み、お……?」


「雫は本当に、サバイバルの常識は規格外なのに、女の子の気持ちには疎いんだから。

 いい? よく聞いて、雫」



 澪は、自分の琥珀色の瞳を、雫の潤んだ深紅の瞳へと真っ直ぐにぶつける。



「私はね、雫を一人ぼっちになんて、絶対にさせないよ」


「……でも、みおは人間。……いつか、死んじゃう」


「死なないよ。だって――」



 澪は雫の涙を親指で優しく拭うと、自らの長い赤髪を、さらりと手で大きくかき上げた。

 夕日に照らされた白く滑らかな首筋が、雫の目の前に差し出される。



「雫が吸血鬼の始祖なら、私を『眷属(吸血鬼)』にしてよ」


「っ……!?」


「お姉ちゃん……っ!」



 美月が驚きに目を見張る。けれど、澪の覚悟に満ちた瞳は、一点のブレもなかった。



「あの日、絶体絶命の私を救ってくれたのは、弓を捨ててまで始祖の力を受け入れてくれた雫だよ。

 今度は、私が雫の運命を半分もらう番。

 人間をやめることなんて、雫と一緒にいられなくなる恐怖に比べたら、ちっとも怖くない!」



 澪の熱い言葉が、雫の凍りついた心を、激しい『紅蓮の炎』のように包み込んでいく。



「おばあちゃんになるのも、死んじゃうのも、全部お断り!

 私は何十年経っても、何百年経っても、この姿のままで、ずーっと雫の隣で前衛(パートナー)を張ってあげる!

 ……だから、私を置いていかないで。私を、雫の特別な吸血鬼にして?」



 それは、生涯のすべてを捧げるという、これ以上ないほど熱烈な『愛の告白』だった。


 雫は、呼吸をすることすら忘れたように澪を見つめていた。

 口の奥で、吸血鬼の犬歯が、澪の激しい恋心と脈動に呼応して、かつてないほど熱く、ドクドクと疼き狂う。



「……みお。本当に、いいの? もう、戻れない」


「いいよ。むしろ、大歓迎。

 ほら、さっきのクレープより、もっともっと甘くて美味しい私の血、いっぱい吸って?」



 澪は、誘うように小さく吐息を漏らしながら、雫の首に自ら両腕を回した。

 雫はもう、本能を抑えるのをやめた。


 大好きな少女を、永遠の孤独から救ってくれる、世界で一番愛おしい存在を――その腕の中に、壊れ物を抱くようにぎゅっと抱きしめる。



「……うん。みお。……いただきます」



 夕暮れのリビング。

 静かに見守る美月の前で、雫はゆっくりと、澪の赤髪に顔を埋め、その柔らかな首筋へと深く、深く、永遠の契約を刻むように牙を突き立てた――。


最後まで見てくださりありがとうございます

よかったら評価くれると嬉しいです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。